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第5部 新魔王と結婚なんて、お断り!
第31章 アリーシャ、魔王城襲撃に青ざめる
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「それだけって……スカイ、白兵衛と一体、何を話したの?」
洗脳が解けていないということは、スカイの本当の過去に迫るような、核心を衝く話題が出なかったということだろうか?
……白兵衛、自分から言い出したくせに、何やってるんだろう。
「おい、シロベエとは何のことだ?お前たち、一体何の話をしている?」
……しまった。今度はブランに不審がられてしまった。
だが、私があわてて "言い訳" する前に、スカイがさらっと "説明" してくれた。
「白兵衛とは、アリーシャ姫の持っていた犬の人形のことだ。人間がペット代わりに愛玩する人形で、機械仕掛けで動いたり喋ったりする」
……間違ってはいないけど、その説明だと、だいぶイメージが変わってしまうような……。
「フン。要は、からくり人形か。お前が喰い付きそうな代物だな。研究熱心なのは構わんが、姫の私物を壊すなよ」
案の定、ブランは白兵衛を完全無害な "ただのオモチャ" と勘違いしている。
それにしても、どうしよう……。
白兵衛が役に立たないとなると、私がスカイに揺さぶりをかけてみるべきなんだろうか……?
「あの、スカイ、この前、私が話したこと……」
おそるおそる、話を切り出してみる。
だが、話し終わる前に、ブランに察知されて邪魔された。
「姫よ、そろそろ次の場所へ向かうぞ」
「ま、待って……。まだ私、スカイと話が……」
「お前は囚われの身だということを忘れるな。城内で勝手は許さん」
無理矢理引っ張られ、スカイから離される。
……やっぱり、魔王のいる所で洗脳を解くのはムリか。
「分かりましたから!強く引っ張らないでください!痛い!」
ブランは、スカイからだいぶ距離を取ったところで、ようやく手を放してくれた。
「……お前はスカイと面識があるから、奴が洗脳されていることに気づいているのだろうが……それを解くような真似は許さん。奴を洗脳し直すのは、厄介なのだ」
「え?厄介って、何が?」
思わず問い返すと、ブランは口ごもった。
「それはだな……その……」
珍しくしどろもどろになったブランに「どうでもいいから、先に進んでくれないかなー」と思い始めたその時……突如、爆発音のような凄まじい音が、空気を震わせた。
「何事だ!?」
叫ぶブランに、衛兵らしき鎧の魔物が駆け寄る。
「敵襲です、魔王陛下!おそらく敵は、前魔王の一味かと」
その報告に、青ざめる。
……もう、始まっちゃったんだ。
どうしよう、まだ何の覚悟も準備もできていないのに……。
「お前たちは姫を牢へ送り届け、そのまま見張りと護衛の任に就け!」
手枷の鎖を握る魔物たちに、ブランはそう命じる。
「至急、重臣たちを玉座の間へ!衛兵は全力で侵入者どもを排除せよ!」
鎧の魔物にそう指示を下すと、ブランは玉座の間へと急ぎ足で去って行った。
……私は結局、牢へ戻されちゃうのか。
どうしよう。牢の中って、安全なのかな。
……でも、行動を起こそうにも、牢の中じゃ何もできないし、何すればいいのかも分からないしな――なんてことを考えながら、魔物たちに鎖を引かれ、牢へと向かう。
その時、行く手から声を掛けてきた人物がいた。
「姫様の見張り、ご苦労さまです~。後は私共が引き受けますので、退がっていただいて大丈夫ですよ~」
聞き覚えのある声に、ハッと顔を上げると、廊下の先にゴシックなワンピース姿のメイドが二人立っていた。
「ヴィヴィアン……じゃなくて、ヴィヴィアーネさん、プリンちゃん!」
魔物たちは一瞬顔を見合わせたが、すぐに無表情で突っぱねる。
「そういうわけには参らぬ。我々は魔王陛下の命を受け、姫を牢へ入れた後も見張りと護衛の任を続ける」
「……あ~ぁ、融通が利かないのね~。おとなしく退がってくれるなら、見逃してあげようと思ったのに~」
言いながら、ヴィヴィアンヌはメイド服を脱ぎ捨てる。
脱ぎ捨てた……のに、アレ?下は、前に魔女の村で見たゴスロリワンピースだ。
しかも、一瞬のうちに、メイクと髪型まで、本来のものに戻っている。
「え?早着替え?どういう仕組み?」
「気にするのはソコなのニャ?変身魔法は魔女っ娘の十八番なのニャ!」
いつの間にか音も無く、プリンが私のすぐそばまで来ていた。
プリンはそのまま、素早く爪を動かす。
直後、じゃらりと音がして、気づけば私を縛めていた鎖が、断ち切られて床に落ちていた。
「さ、アリーシャちゃん、逃げるのよ!」
ヴィヴィアンヌが叫ぶ。
「は!? え?逃がしてくれるつもりは無かったんじゃ……」
「まぁ、当初そのつもりは無かったんだけどね~。あなた、面白いコだし~。アシュブラッドちゃんも、あなたにラブみたいだし~。ついでに助けてあげてもイイかな~って気になったのよ」
「アシュブラッドたんの花嫁候補なら、あたちは放っておけないニャ!このまま人質として利用されでもしたら、アシュブラッドたんが困るのニャ!」
メイド二人はそう言ってくれるが……魔物たちは、私を逃がしてくれる気は無さそうだ。
「貴様ら、裏切る気か!? ならば、メイドと言えど容赦はせぬぞ!」
「えぇ。どうぞ~、かかっていらっしゃ~い。私は、千里眼の魔女ヴィヴィアンヌ・モーヴネン。その辺の雑魚が相手にできる女じゃなくってよ~」
洗脳が解けていないということは、スカイの本当の過去に迫るような、核心を衝く話題が出なかったということだろうか?
……白兵衛、自分から言い出したくせに、何やってるんだろう。
「おい、シロベエとは何のことだ?お前たち、一体何の話をしている?」
……しまった。今度はブランに不審がられてしまった。
だが、私があわてて "言い訳" する前に、スカイがさらっと "説明" してくれた。
「白兵衛とは、アリーシャ姫の持っていた犬の人形のことだ。人間がペット代わりに愛玩する人形で、機械仕掛けで動いたり喋ったりする」
……間違ってはいないけど、その説明だと、だいぶイメージが変わってしまうような……。
「フン。要は、からくり人形か。お前が喰い付きそうな代物だな。研究熱心なのは構わんが、姫の私物を壊すなよ」
案の定、ブランは白兵衛を完全無害な "ただのオモチャ" と勘違いしている。
それにしても、どうしよう……。
白兵衛が役に立たないとなると、私がスカイに揺さぶりをかけてみるべきなんだろうか……?
「あの、スカイ、この前、私が話したこと……」
おそるおそる、話を切り出してみる。
だが、話し終わる前に、ブランに察知されて邪魔された。
「姫よ、そろそろ次の場所へ向かうぞ」
「ま、待って……。まだ私、スカイと話が……」
「お前は囚われの身だということを忘れるな。城内で勝手は許さん」
無理矢理引っ張られ、スカイから離される。
……やっぱり、魔王のいる所で洗脳を解くのはムリか。
「分かりましたから!強く引っ張らないでください!痛い!」
ブランは、スカイからだいぶ距離を取ったところで、ようやく手を放してくれた。
「……お前はスカイと面識があるから、奴が洗脳されていることに気づいているのだろうが……それを解くような真似は許さん。奴を洗脳し直すのは、厄介なのだ」
「え?厄介って、何が?」
思わず問い返すと、ブランは口ごもった。
「それはだな……その……」
珍しくしどろもどろになったブランに「どうでもいいから、先に進んでくれないかなー」と思い始めたその時……突如、爆発音のような凄まじい音が、空気を震わせた。
「何事だ!?」
叫ぶブランに、衛兵らしき鎧の魔物が駆け寄る。
「敵襲です、魔王陛下!おそらく敵は、前魔王の一味かと」
その報告に、青ざめる。
……もう、始まっちゃったんだ。
どうしよう、まだ何の覚悟も準備もできていないのに……。
「お前たちは姫を牢へ送り届け、そのまま見張りと護衛の任に就け!」
手枷の鎖を握る魔物たちに、ブランはそう命じる。
「至急、重臣たちを玉座の間へ!衛兵は全力で侵入者どもを排除せよ!」
鎧の魔物にそう指示を下すと、ブランは玉座の間へと急ぎ足で去って行った。
……私は結局、牢へ戻されちゃうのか。
どうしよう。牢の中って、安全なのかな。
……でも、行動を起こそうにも、牢の中じゃ何もできないし、何すればいいのかも分からないしな――なんてことを考えながら、魔物たちに鎖を引かれ、牢へと向かう。
その時、行く手から声を掛けてきた人物がいた。
「姫様の見張り、ご苦労さまです~。後は私共が引き受けますので、退がっていただいて大丈夫ですよ~」
聞き覚えのある声に、ハッと顔を上げると、廊下の先にゴシックなワンピース姿のメイドが二人立っていた。
「ヴィヴィアン……じゃなくて、ヴィヴィアーネさん、プリンちゃん!」
魔物たちは一瞬顔を見合わせたが、すぐに無表情で突っぱねる。
「そういうわけには参らぬ。我々は魔王陛下の命を受け、姫を牢へ入れた後も見張りと護衛の任を続ける」
「……あ~ぁ、融通が利かないのね~。おとなしく退がってくれるなら、見逃してあげようと思ったのに~」
言いながら、ヴィヴィアンヌはメイド服を脱ぎ捨てる。
脱ぎ捨てた……のに、アレ?下は、前に魔女の村で見たゴスロリワンピースだ。
しかも、一瞬のうちに、メイクと髪型まで、本来のものに戻っている。
「え?早着替え?どういう仕組み?」
「気にするのはソコなのニャ?変身魔法は魔女っ娘の十八番なのニャ!」
いつの間にか音も無く、プリンが私のすぐそばまで来ていた。
プリンはそのまま、素早く爪を動かす。
直後、じゃらりと音がして、気づけば私を縛めていた鎖が、断ち切られて床に落ちていた。
「さ、アリーシャちゃん、逃げるのよ!」
ヴィヴィアンヌが叫ぶ。
「は!? え?逃がしてくれるつもりは無かったんじゃ……」
「まぁ、当初そのつもりは無かったんだけどね~。あなた、面白いコだし~。アシュブラッドちゃんも、あなたにラブみたいだし~。ついでに助けてあげてもイイかな~って気になったのよ」
「アシュブラッドたんの花嫁候補なら、あたちは放っておけないニャ!このまま人質として利用されでもしたら、アシュブラッドたんが困るのニャ!」
メイド二人はそう言ってくれるが……魔物たちは、私を逃がしてくれる気は無さそうだ。
「貴様ら、裏切る気か!? ならば、メイドと言えど容赦はせぬぞ!」
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