潤 閉ざされた楽園

リリーブルー

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【第二部】第一章

カタツムリ 8

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「んっ、うぅん、んっ」

潤が、かわいそうな泣きそうな顔で、自分の腹の上で捕食されるカタツムリを見ていた。

おじ様が潤の背を支えながら、潤の怯えた顔を、楽しそうに見ていた。

まるで蛇に捕食されるカタツムリは、潤のようだった。

潤の運命のようだった。

潤は、運命を予感するように、実感するように怯えていた。

「怖い……」

潤は、蛇とカタツムリから目を逸らして、おじ様の胸にすがった。

被食者の潤にとっては、捕食者のおじ様に、潤は、すがりついた。

危ないよ潤。

それは間違ってるよ。

でも潤は、出られない。

この支配の迷宮から。

逃れられない。

残るのは、やるせない諦め、年不相応な諦観。

運命と諦めて、受け入れて、支配される。

それが、できない。

できないから、苦しんでいるのに。

潤は、気づかない。

潤の高貴なる魂は、支配されることを望んでいない。

けれど偽りの快感を入れられて、潤はコントロールされていた。

気づかない限り、助けられない。

僕が連れ出してあげたいけど、連れ出せない。

苦しんでいるのに。

本人の潤は苦しんでいるのに。

そして賢い潤は、この支配構造をも認識しているのだろう。

それでもおじ様の巧妙な支配の技は、さらにその上を行っていた。

おじ様は、外には紳士の顔をすることはもちろん、家でも紳士の顔をしながら、残虐とも言える精神的支配を成員に行っていた。


おじ様の支配体制を受け入れているらしい譲は、かわりに弟たちを支配下に置いていた。

次兄の昴は、逃げ出していた。

潤は逃げ遅れていた。

なぜなら一番幼かったから。

それ以上下の、自分より弱いものを支配することで、おじ様の支配体制を受け入れることもできなかった。

なぜなら潤が一番下だから。

家族の階級の中で一番下だったから。

学校でも一見、ちやほやされていたが、異質な存在として、階級の外に置かれていたと考えられるかもしれなかった。
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