ボクらは魔界闘暴者!

幾橋テツミ

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第四章 【覇闘】直前狂騒曲

錬装者煉獄篇⑤前代未聞の緊急事態──そして窮余の一策!

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 心の準備を整えて獣居房に向った二人の錬装者であったが、想像以上に酸鼻を極めた小型絆獣たちの末路に衝撃を禁じ得なかった。

 一匹は頭蓋骨を潰されて脳漿を撒き散らし、もう一頭は頸骨を砕かれて首を180度ねじ回され、さらなる一体は腹部を踏み破られて肛門から腸をはみ出させられ…黝い血の海に浮かび上がる死に様は各種各様であったが、とにかく屠殺者の一撃一撃には発見者の背筋を凍らせ嘔吐を催させる凄まじいばかりの怨念と殺意が根深く刻印されていた…。

「うぐっ…」

 この非人間的な悪念に打ちのめされ、鋼の掌で白い牙が煌めく口元を押さえた後輩を気遣い、宗 星愁はその背に軽く右手を添える。

「恭作、もういい、ムリするな…。

 調…。

 オレはもう少し観察していくから、地上うえで思い切り吐いてこいよ…」

 この親身な助言に、“十年に一人の逸材”は力なく頷く。

「すみません…オレ、こういうのどうしてもダメで…」

「気にすんな…むしろこの地獄絵図の前で平気の平左な方が仲間としてゾッとすらあ…」

 退避を促しつつ、これらの“人外の悪童たち”を目の敵にしてきた黎輔がこの光景を目の当たりにしたら如何なる反応を示すだろうかと兄貴分はふと思った。

 ──だが当然ながら、中国支部は感傷に浸っていられる状況にはない。

『…いくら任務とはいえ、“の刺客”がこれほどまでに残虐な殺し方をするものか?

 尤も、オレたちを竦み上がらせる意図があったのなら納得できんこともないが、それにしてもコイツらのむくろからは抜き差しならぬドロドロした怨念を感じずにはいられない…。

 ──待てよ、もしかしたら…、

 …首督を恨むことにかけちゃあ実の息子にも勝るとも劣らん彼がやったのか!?

 しかも…いやそうに決まっているが、使以上、当然そこには“本部の意思”というものが介在しているはずだ…何しろ、聖団員の資格を暫定的とはいえ喪失したその瞬間から錬装は不可能になるのだから…!』

 無意識の内に凶魔の生贄とされてしまった犠牲者たちに合掌しつつ、中国支部最強錬装者はギリギリと奥歯を噛み締めていた。

『許せねえ…テメエらの勝手な都合で血の通った生ける存在を、まるで飽きたオモチャをブッ壊すみてえに無惨に殺しやがって…!

 しかも、あの恒典オヤジのネジけ切った人間性が問題を更にややこしくさせてやがる…。

 日頃の投げやりな態度からして絆獣聖団という組織に対してはもはや些かも忠誠心を抱いている様子はないが、小型絆獣への思い入れだけはあったはずだ…するとよほどに脅しつけられたのか?

 結局、震え上がって本部の命令を全面的に受け容れた奴は我々に嘘をついて覇闘札カードを持ち出し、そのまま行方をくらました…となると、端から聖団は救護車自体を出動させちゃいない可能性が高いな…!

 かくて〈最重要アイテム〉を喪った我が中国支部は覇闘そのものの実行が不可能となり、やがて存在そのものを抹消される…。

 ──だが肝心なのは下される処罰の中身だ…ひょっとすると、それは想像を絶するほどに苛烈なものなのかもしれん…いや、多分そうなるだろう…だとしたら、座して死を待つ訳にはいかん…!』

 十数分後、一房に集めた絆獣たちに有り合わせの毛布を被せて簡素な弔いとした星愁は地上に出たが、円型入口のすぐ傍の、日陰となった合宿所の庇の下で錬装を解き、白いスマホを手に蹲っている那崎恭作に歩み寄る。

「どうだ、具合は?

 …少しはスッキリしたか?」

 苦笑いしながら見上げてくるその表情はやや蒼白いが、人一倍の常識人である彼の周囲に吐瀉物は見当たらなかった…。

「ご心配おかけしました…幸い、外に出て新鮮な森の空気を吸ったらすぐに持ち直しましたよ…」

 その間に鋼の毒蛇は銀色の光の卵に包まれ、生身の姿で現れた星愁は大きく息を吐いてから後輩の傍らにしゃがみ込む。

「そりゃ良かった…まあそこら辺を考えて消化のいいうどんをチョイスしてるつもりなんだけどな…。

 ところで覇闘札がないとなっちゃ強敵を前にして我々は大恥をかくことになるが、手元にないものはしょうがない…。

 絆獣たちの亡骸を並べながら磁甲の通信機能を使ってツネさんに連絡を取ってみたが、どうやら電源を切っちまってるようだな…まあ予想されたことだが。

 ──それと一つ不可解なのは彼にとって最愛の…そして黎輔にとっては天敵のハンゾウの遺体が見当たらないことだが、おまえがさっき見かけたという頭陀袋、どうやらそれに詰めて持ち出したとしか思えんな…もちろん理由はあのヒトにしか分からんことだがね…」

 淡々たる先輩の口調に、恭作も憤懣遣る方ないといわんばかりに顔を歪める。

「…そうですか…ボクもコレでかけてみたんですけどムダでした…」

 功夫シューズの踵で柔らかな腐食土を抉りつつ、星愁はと頷く。

「フツーならここで本部に救いを求めるところだが、番号を知ってるのはあのオヤジだけときてる…しかしまあ万一掛けてみたところで繋がるとはとても思えんがね…。

 尤も広報の神田口の番号なら辛うじて分かるが、当然アイツもグルだろうから軽々しくでもすりゃ藪蛇になりかねん…。

 ──下手したらこの一件を逆手に取って、くらいの悪企みは平然とやってのける女だからな…!
 
 ──だが不幸中の幸いというべきか或いは運命の悪戯というべきか、我々は本日の対戦相手に覇闘札カード2枚分の貸しがある…。

 何しろ昨夕、御大将自ら恥を忍んで【BBバインドブラッド】を申し込み、進んでハンデを背負い込みやがったんだ、今さらそれを無下にははさせん…!

 しかし首督によると明け方になって助っ人を従えて出るはずだった副将の光城威紅也はやはり欠場となって黎輔の相手は妖仙獣一匹となり、突っぱねりゃあいいものを光城家むこうの口車に乗せられて息子が負けた場合にゃ1枚返上しなきゃならなくなったらしい…全く大バカ野郎だぜ…!

 だがまあ、…。

 何が何でも黎輔に勝ってもらって2枚分を死守せにゃならんのはもちろんだが、最悪アイツが負けても残った1枚を文字通りの〈命札〉として対玄矢戦に拠出すりゃいいんだからなッ!!」

 





 


 

 

 

 

 

 
 
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