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第四章 【覇闘】直前狂騒曲
錬装者煉獄篇④絆獣聖団〈中国支部〉終了す…。
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二人の錬装者が淡いブルーのLSDライトが24時間点灯されているはずの地下研究所に降り立った時、そこは薄闇に閉ざされていた。
つまり明かりは階段につながる円型入口から射し込む日光のみであったが、磁甲の機眼越しの視界は白昼同然の鮮明さである。
当然ながら、彼らがまず足を止めたのは監視室の破壊されたドアの前であった。
「!?
一体、ここで何があったんだ!?
まさか、どこかの錬装者がここを襲撃したのかッ!?」
コブラというモチーフを極限まで華麗に意匠化した宗 星愁の錬装磁甲の鋭利な爪を備えた右手が殆どくの字に撓んだ鉄扉の表面をなぞるが、その感触によって得た情報から彼は侵入者が妖帝星軍ではないと判断していた。
「…どうやら光城や紫羽が、ましてや連中の妖仙獣が犯人という訳じゃなさそうだ…。
第一、妖帝星軍の【極術身装】は恐るべきパワーと強度を備えているとはいえ錬装者のような〈金属素材〉で創られたものじゃないからな…。
だがこのドアをヘシ曲げた奴は起重機のような凄まじい機械力の持ち主だ…おそらくここまでの馬鹿力は“打撃破壊力特化型”の奴らにはないだろう…。
仮に連中にその剛力が備わっていたとしても、たかだか小型絆獣の巣窟を壊滅させるためにわざわざリスクを冒してまで侵入してくるとは思えない…もし証拠映像ても撮られたりしたらそれこそ命取りになるからな…」
「でも…もしですよ、錬装者が研究所を襲ったんなら、その目的は一体何なんですか!?それも、聖団のメンツを賭けた覇闘の当日に!?
ボクには味方がやったとはとても信じられませんッ!
それに、そこに居合わせていたはずのオヤジさんはどうしてこの異変を我々に伝えようともせず、まるで逃げ出すかのように飛び出してしまったのか?
仮に救護車の故障が事実だとしても、まず首督として状況説明を果たしてからじゃないと話にならないじゃないですかッ!?
──全く不条理極まる奇怪事としか言いようがありませんよッ!!」
十数秒ほどの沈黙の後、虚空を睨んでいた銀色のコブラ戦士は緑色に光る機眼を鋼の白虎拳士の金色の瞳に向けた。
「今ざっとスキャンしてみたんだが、獣居房を除く所内に仕掛けられた9個の監視カメラは全て破壊されている。
尤も五つある房内のモノも同様だろうが…実際、ここの監視スクリーンは全部叩き割られてるしな…。
…これは考えたくもない最悪の推測だが、やはり侵入者…いや襲撃者は聖団の息がかかった者だと思う。
以前から有力氏族の月中らに目を付けられていた我々“弱小支部”だが、さっき嶽が話していた神田口との経緯を聞くにつけても、あえて今回の覇闘に合わせて意図的に起こされたアクションとしか思えない…。
──おそらく襲撃者はツネさんに何らかの〈本部の意向〉を脅迫的な態度で伝え、それに持ち前の癇癖から猛反発したか或いは恐れをなした彼は、錬装者が引き上げると同時に救護車でこちらに向かっているヒラ幹部に直接抗議もしくは状況確認しようとしたんじゃないのかな…」
「そんな…聖団本部が子飼いの支部を実力行使で取り潰そうとするなんて…!?」
「たしかににわかには信じ難い話だ…。
だがな恭作、オレがそれを確信したのは、他ならぬ中国支部のかけがえのない希望だったおまえたち兄妹に〈召喚〉がかかったことなんだよ…。
百歩譲って、操獣師である妹さんはそもそも異世界に赴かなければ参戦すら叶わない訳だが、支部を強化する気が僅かでも指導層にあるなら、少なくとも当面おまえだけは残留させるはずなんだ…。
しかも覇闘前日に出征を命じるなんて…!
さらに加えて、あろうことか当日に実行されたこのテロにも等しい狼藉…。
絆獣たちの声が聴こえないのも当然だ…おそらく、三匹どころじゃない、ハンゾウを含め二十頭全てが廃棄処分されてしまってるんだろう…断言してもいいが、房内には彼らの無惨な屍が折り重なっていることだろうぜ…。
──もう間違いない、本部はウチを潰そうとしている…いや、ひょっとすると既に宣戦が布告されてしまってるのかも知れん…!」
「…そ、そんな…どうして仲間に対してそんなひどいことを…!?
あっ、それにオヤジさんが覇闘札を持ち出しちゃったから、もうすぐ敵が到着するというのに、このままじゃ覇闘が行えないじゃありませんかッ!?
…ああ、このままじゃホントに中国支部は終わっちゃいますよ…!!」
つまり明かりは階段につながる円型入口から射し込む日光のみであったが、磁甲の機眼越しの視界は白昼同然の鮮明さである。
当然ながら、彼らがまず足を止めたのは監視室の破壊されたドアの前であった。
「!?
一体、ここで何があったんだ!?
まさか、どこかの錬装者がここを襲撃したのかッ!?」
コブラというモチーフを極限まで華麗に意匠化した宗 星愁の錬装磁甲の鋭利な爪を備えた右手が殆どくの字に撓んだ鉄扉の表面をなぞるが、その感触によって得た情報から彼は侵入者が妖帝星軍ではないと判断していた。
「…どうやら光城や紫羽が、ましてや連中の妖仙獣が犯人という訳じゃなさそうだ…。
第一、妖帝星軍の【極術身装】は恐るべきパワーと強度を備えているとはいえ錬装者のような〈金属素材〉で創られたものじゃないからな…。
だがこのドアをヘシ曲げた奴は起重機のような凄まじい機械力の持ち主だ…おそらくここまでの馬鹿力は“打撃破壊力特化型”の奴らにはないだろう…。
仮に連中にその剛力が備わっていたとしても、たかだか小型絆獣の巣窟を壊滅させるためにわざわざリスクを冒してまで侵入してくるとは思えない…もし証拠映像ても撮られたりしたらそれこそ命取りになるからな…」
「でも…もしですよ、錬装者が研究所を襲ったんなら、その目的は一体何なんですか!?それも、聖団のメンツを賭けた覇闘の当日に!?
ボクには味方がやったとはとても信じられませんッ!
それに、そこに居合わせていたはずのオヤジさんはどうしてこの異変を我々に伝えようともせず、まるで逃げ出すかのように飛び出してしまったのか?
仮に救護車の故障が事実だとしても、まず首督として状況説明を果たしてからじゃないと話にならないじゃないですかッ!?
──全く不条理極まる奇怪事としか言いようがありませんよッ!!」
十数秒ほどの沈黙の後、虚空を睨んでいた銀色のコブラ戦士は緑色に光る機眼を鋼の白虎拳士の金色の瞳に向けた。
「今ざっとスキャンしてみたんだが、獣居房を除く所内に仕掛けられた9個の監視カメラは全て破壊されている。
尤も五つある房内のモノも同様だろうが…実際、ここの監視スクリーンは全部叩き割られてるしな…。
…これは考えたくもない最悪の推測だが、やはり侵入者…いや襲撃者は聖団の息がかかった者だと思う。
以前から有力氏族の月中らに目を付けられていた我々“弱小支部”だが、さっき嶽が話していた神田口との経緯を聞くにつけても、あえて今回の覇闘に合わせて意図的に起こされたアクションとしか思えない…。
──おそらく襲撃者はツネさんに何らかの〈本部の意向〉を脅迫的な態度で伝え、それに持ち前の癇癖から猛反発したか或いは恐れをなした彼は、錬装者が引き上げると同時に救護車でこちらに向かっているヒラ幹部に直接抗議もしくは状況確認しようとしたんじゃないのかな…」
「そんな…聖団本部が子飼いの支部を実力行使で取り潰そうとするなんて…!?」
「たしかににわかには信じ難い話だ…。
だがな恭作、オレがそれを確信したのは、他ならぬ中国支部のかけがえのない希望だったおまえたち兄妹に〈召喚〉がかかったことなんだよ…。
百歩譲って、操獣師である妹さんはそもそも異世界に赴かなければ参戦すら叶わない訳だが、支部を強化する気が僅かでも指導層にあるなら、少なくとも当面おまえだけは残留させるはずなんだ…。
しかも覇闘前日に出征を命じるなんて…!
さらに加えて、あろうことか当日に実行されたこのテロにも等しい狼藉…。
絆獣たちの声が聴こえないのも当然だ…おそらく、三匹どころじゃない、ハンゾウを含め二十頭全てが廃棄処分されてしまってるんだろう…断言してもいいが、房内には彼らの無惨な屍が折り重なっていることだろうぜ…。
──もう間違いない、本部はウチを潰そうとしている…いや、ひょっとすると既に宣戦が布告されてしまってるのかも知れん…!」
「…そ、そんな…どうして仲間に対してそんなひどいことを…!?
あっ、それにオヤジさんが覇闘札を持ち出しちゃったから、もうすぐ敵が到着するというのに、このままじゃ覇闘が行えないじゃありませんかッ!?
…ああ、このままじゃホントに中国支部は終わっちゃいますよ…!!」
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