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第三章 星渕特抜生VS魔強士族!
恋仇対決!?花凛VSリド(前編)
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秘密資料室に突如出現したリド=シェザードとその眷属である十五体の白い【精神体兵士】に対し、彼らに取り囲まれる形となった星渕学園が誇る十一名の特抜生たちはほとんど抵抗できなかったのであるが、その要因はリドの号令の下、軍団の両掌から放射された“謎の魔風”にあった。
それはいわば超強力な催眠ガスであり、吸い込んだ生徒たちは否応もなく瞬間的に意識を失ってバタバタと倒れてしまったのである!
されどこの悪魔的奇襲を卓越した危機感知力と身体能力によってみごとかわしてのけた戦士がたった二人だけ存在していた。
【獣使部】の高瀬花凛と【念術部】の森藤茉穂美である!
別けても、渾身の凝念力によって虎の子の【誅戮閃獣】を発現させた花凛の奮戦ぶりほ凄まじいものがあった…。
「──いいこと恋太郎!
遠慮はいらないから、ソイツら全員食い尽くしておしまいッ!!」
戦闘モードに入った彼女が常に“斬り込み隊長”として用いる、縦一メートル、横幅百五十センチの巨大なハート型ののっぺらぼうの顔面が最大伸長六メートルの直径五十センチ強の蛇腹式ろくろ首によって馬そっくりの胴体と連結された、全身ショッキングピンクの怪物──しかもそいつの口は顔面ではなく三十センチ近い厚みのある側面に位置しており、限界まで開口した際には♡下部の尖った部分が中央付近までめくれ上がることになるのだが、同時に露わとなった上下百本以上の五寸釘のごとき鋭牙が血に染まらずして閉じられることは決してなかった!
即ち閃獣使いの花凛に言わせれば、恋太郎にとっての牙は鞘から抜かれたサムライの刀と同義であったのである。
されど彼女らにとっての悲劇は、眼前に立ち塞がったのが魔強士族屈指の強豪・リド=シェザードであったということであろう。
まずは才能面だけに限れば八重樫龍貴の再来ともいうべき念術部の森藤茉穂美に狙いを定めた彼は渾身の念撃弾集中砲火を全身を覆う魔強具によってあたかも紙礫のように跳ね返しながらゆっくりと歩み寄り、鋼の左人差し指で鳩尾を軽く突いてあっさりと失神させた美少女を手下に託した後、既に三体の精神体兵士を屠っていた誅戮閃獣に「待ていッ!!」と大音声による一喝を浴びせたのであった。
「地上人の《操念》によって駆動される誅戮閃獣──はじめて目にしたがみごとなものだ…だがな、もちろん察してはおろうが只今おまえが毒牙にかけた兵どもも私の念によっていわば同じ原理で使役されておった訳だが、いわゆる〈半霊半物質〉で形成されたヤワなボディは思うがままに食いちぎれようとも、果たしてその手がこのリド=シェザードに対しても通用するかな…!?」
この挑発を受けて生来怖いもの知らずの勇者である高瀬花凛の憤怒は文字通り頂点に達した!
「バカにしないでよッ!!
アンタこそどこの馬の骨か知らないけどねッ、我が恋太郎自慢の【金剛牙】に一回でも噛まれてみりゃあそんな大口二度と叩けなくなることを骨の髄まで思い知らせてあげるわよッ──殺れッッ!!!」
この〈必殺指令〉に「フシュワワアアアアアッッ!!」と金属的な響きの不気味な咆哮で応じた誅戮閃獣は限界まで伸ばした蛇腹状の長首を凄まじい迅さで振りたくりながら白い魔強士を眩惑し、最終的に真上から一呑みする作戦に出たのだが、その攻撃には超高熱の《桃色の溜め息》(花凛命名)が伴っていた!
かくてリドの全身が鮮烈なピンクの炎に包まれた次の瞬間には恋太郎の大顎は上半身をがっちりとホールドしていたのであるが、いかなる理由でか閃獣の動きはそこで急停止し、同時におそるべき速度で膨張を開始した!
「あ…あれッ!?
な、何で恋太郎のカラダがあんなにブサイクなほど膨れ上がっちゃってるの…?」
前代未聞の事態に呆然とする閃獣使いが次なる指令を出しあぐねているわずか十数秒間で三倍以上に体積を増した桃色の怪物の全身百ヵ所以上から一斉に紅色の霊血が噴き上がったのはその直後であった!
「ヤ…ヤバッ!!
も、もしかしてアイツ、内側から恋太郎を風船化させてから斬り刻んだっていうのッ!?」
もとより霊血は純粋な物質ではないため秘密資料室の壁や床をダイレクトに汚すことはなかったものの、ごく幽かな痕跡を薄い影のような染みとして残すことは免れなかった──されど特抜生の資質を有せぬ霊視者がその正体を覚知することは十中八九不可能であったろう…。
かくて不可視の攻撃により、あたかも突如として空気を抜かれた巨大なビニールのオブジェのごとく急速に萎んでゆく誅戮閃獣──そして花凛がハッと気付いた時にはそれは跡形も無く消滅していたのである…!
「ムダな抵抗はよすがいい──遊びは終わったのだ…。
これからの星渕特抜生がペトゥルナワスにおいてなすべきことは決してこれまでのような戦闘の真似事などに非ず、我ら魔強士族に命続く限り奉仕するという獣民の本義に立ち帰った神聖な任務であるのだからな…!」
だがこのような高圧的な領導に、生まれながらの反逆児である高瀬花凛が従うことなど万に一つもあり得なかった。
「チ、チッキショー!
だ、誰が…たとえ死んだって魔強士族なんかに屈するもんかッ!!
いいかい、よーく聞けよこの生っ白い侵略者がッ!
他の根性無しの特抜生はともかくねッ、この“孤高の最強戦士”高瀬花凛さまが跪くのは世界で唯一人…四元蓮馬総代に対してだけなんだよッッ!!!」
それはいわば超強力な催眠ガスであり、吸い込んだ生徒たちは否応もなく瞬間的に意識を失ってバタバタと倒れてしまったのである!
されどこの悪魔的奇襲を卓越した危機感知力と身体能力によってみごとかわしてのけた戦士がたった二人だけ存在していた。
【獣使部】の高瀬花凛と【念術部】の森藤茉穂美である!
別けても、渾身の凝念力によって虎の子の【誅戮閃獣】を発現させた花凛の奮戦ぶりほ凄まじいものがあった…。
「──いいこと恋太郎!
遠慮はいらないから、ソイツら全員食い尽くしておしまいッ!!」
戦闘モードに入った彼女が常に“斬り込み隊長”として用いる、縦一メートル、横幅百五十センチの巨大なハート型ののっぺらぼうの顔面が最大伸長六メートルの直径五十センチ強の蛇腹式ろくろ首によって馬そっくりの胴体と連結された、全身ショッキングピンクの怪物──しかもそいつの口は顔面ではなく三十センチ近い厚みのある側面に位置しており、限界まで開口した際には♡下部の尖った部分が中央付近までめくれ上がることになるのだが、同時に露わとなった上下百本以上の五寸釘のごとき鋭牙が血に染まらずして閉じられることは決してなかった!
即ち閃獣使いの花凛に言わせれば、恋太郎にとっての牙は鞘から抜かれたサムライの刀と同義であったのである。
されど彼女らにとっての悲劇は、眼前に立ち塞がったのが魔強士族屈指の強豪・リド=シェザードであったということであろう。
まずは才能面だけに限れば八重樫龍貴の再来ともいうべき念術部の森藤茉穂美に狙いを定めた彼は渾身の念撃弾集中砲火を全身を覆う魔強具によってあたかも紙礫のように跳ね返しながらゆっくりと歩み寄り、鋼の左人差し指で鳩尾を軽く突いてあっさりと失神させた美少女を手下に託した後、既に三体の精神体兵士を屠っていた誅戮閃獣に「待ていッ!!」と大音声による一喝を浴びせたのであった。
「地上人の《操念》によって駆動される誅戮閃獣──はじめて目にしたがみごとなものだ…だがな、もちろん察してはおろうが只今おまえが毒牙にかけた兵どもも私の念によっていわば同じ原理で使役されておった訳だが、いわゆる〈半霊半物質〉で形成されたヤワなボディは思うがままに食いちぎれようとも、果たしてその手がこのリド=シェザードに対しても通用するかな…!?」
この挑発を受けて生来怖いもの知らずの勇者である高瀬花凛の憤怒は文字通り頂点に達した!
「バカにしないでよッ!!
アンタこそどこの馬の骨か知らないけどねッ、我が恋太郎自慢の【金剛牙】に一回でも噛まれてみりゃあそんな大口二度と叩けなくなることを骨の髄まで思い知らせてあげるわよッ──殺れッッ!!!」
この〈必殺指令〉に「フシュワワアアアアアッッ!!」と金属的な響きの不気味な咆哮で応じた誅戮閃獣は限界まで伸ばした蛇腹状の長首を凄まじい迅さで振りたくりながら白い魔強士を眩惑し、最終的に真上から一呑みする作戦に出たのだが、その攻撃には超高熱の《桃色の溜め息》(花凛命名)が伴っていた!
かくてリドの全身が鮮烈なピンクの炎に包まれた次の瞬間には恋太郎の大顎は上半身をがっちりとホールドしていたのであるが、いかなる理由でか閃獣の動きはそこで急停止し、同時におそるべき速度で膨張を開始した!
「あ…あれッ!?
な、何で恋太郎のカラダがあんなにブサイクなほど膨れ上がっちゃってるの…?」
前代未聞の事態に呆然とする閃獣使いが次なる指令を出しあぐねているわずか十数秒間で三倍以上に体積を増した桃色の怪物の全身百ヵ所以上から一斉に紅色の霊血が噴き上がったのはその直後であった!
「ヤ…ヤバッ!!
も、もしかしてアイツ、内側から恋太郎を風船化させてから斬り刻んだっていうのッ!?」
もとより霊血は純粋な物質ではないため秘密資料室の壁や床をダイレクトに汚すことはなかったものの、ごく幽かな痕跡を薄い影のような染みとして残すことは免れなかった──されど特抜生の資質を有せぬ霊視者がその正体を覚知することは十中八九不可能であったろう…。
かくて不可視の攻撃により、あたかも突如として空気を抜かれた巨大なビニールのオブジェのごとく急速に萎んでゆく誅戮閃獣──そして花凛がハッと気付いた時にはそれは跡形も無く消滅していたのである…!
「ムダな抵抗はよすがいい──遊びは終わったのだ…。
これからの星渕特抜生がペトゥルナワスにおいてなすべきことは決してこれまでのような戦闘の真似事などに非ず、我ら魔強士族に命続く限り奉仕するという獣民の本義に立ち帰った神聖な任務であるのだからな…!」
だがこのような高圧的な領導に、生まれながらの反逆児である高瀬花凛が従うことなど万に一つもあり得なかった。
「チ、チッキショー!
だ、誰が…たとえ死んだって魔強士族なんかに屈するもんかッ!!
いいかい、よーく聞けよこの生っ白い侵略者がッ!
他の根性無しの特抜生はともかくねッ、この“孤高の最強戦士”高瀬花凛さまが跪くのは世界で唯一人…四元蓮馬総代に対してだけなんだよッッ!!!」
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