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第三章 星渕特抜生VS魔強士族!
恋仇対決!?花凛VSリド(中編)
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高瀬花凛の口からこの名が迸った瞬間、白い魔強具に身を固めたリド=シェザードの全身がピクリと震えた。
「ほう…なるほどな、おまえはあの男に恋しておる訳か…!
となると、彼奴と共にする今夏の遠征はさぞや楽しみであったのだろうが──ふふふ、残念であったな、おそらく二度と地上はおろかペトゥルナワスにおいてすら再会する機会はないであろう…!!」
陰険な含み笑いを交えつつ放たれたこのセリフは花凛にとって死刑宣告にも等しいものであり、当然ながら断じて容認できぬ彼女は猛然と食ってかかった。
「なあんですって…!?
このあたしが総代と二度と逢えないだなんて…アンタ、本気で吐かしてるのッ!?
全くいい度胸してるわねえ、この高瀬花凛が心の奥でいちばん大切にしてる宝物を盗み取ろうとしてるんだからッ!
言っとくけどあたしゃあねえ、今回の遠征を決してアンタのスッカスカのクソ悪い頭が決めつけたみたいに“四元先輩との夏のバカンス”だなんて甘っちょろく考えちゃいないんだからねッ!!
むしろ遠征隊全メンバーとの一蓮托生の死出の旅と心得てるんだッ!
つまり、それだからこそ総代と一緒じゃなきゃ、ぜーったいに出発する気にゃなれないんだよッッ!!!」
「そうか…ならば、この私をみごと倒してみよッ!
それを成し遂げぬ限り、おまえの生は四元どころか既に“異世界転移”した同志たちにすら見えることなくこの薄汚れた一室であえなく終了ということになるぞッ!!」
「だッ、だッ、誰がキサマなんかに後れを取るかってんだッ!
み、見てろよッ、今回の遠征用に密かに開発したとっておきの新戦法──その名も《花凛流超念術・薔薇吹雪》ッ!!」
胸の前で交差させた両腕を花凛が絶叫と共に天空に思い切り掲げた刹那、その両掌に真紅の薔薇の花弁が出現し、たちまち数百いや数千枚へと増殖したそれは渦動する花の奔流となって白い魔強士に殺到する!
「──ぬっ!?
こ、これはッ…!?」
意表を突く物質の出現にさしものリドも咄嗟に対応できず、術者の手から無限に溢れ出す薔薇の花弁は見る間に標的を覆い尽くしてゆく!
「ほほほほほッ!
こないだの冬遠征で、ヌーロス戦師からヒントをもらって編み出した〈超絶秘技〉のお味はいかが!?
もちろん窒息させるには相手が素っ裸なのが理想的だけど、アンタのようにカブト虫みたく全身を鎧ってる臆病者に対してもすっごく有効なんだわさ──何故かって?
うっふふふふ…それはね、表面はもとより、あらゆる隙間に詰まった花びらはたちまち恋太郎の牙並みに硬くなって二度とヨロイを脱げなくさせるからさッッ!!!」
確信に満ちた断言を裏付けるかのごとく、一ミリの隙間も無く全身を真紅の花弁て覆い尽くされたリドは仁王立ちのまま硬直し、あたかも放課後の部活動で制作された奇怪なオブジェといった趣である…。
「まーこのまま放っといても罠にかかったゴキブリみたいに自然にくたばるだろうけど、コイツがさっきから口走った数々の気に障る物言いを鑑みるととてもそんな安楽死は赦せないわッ!
ここは一つ、花凛女王様の逆鱗に触れた奴がどんな末路を辿るか、骨の髄から味わってもらわないとね…!!」
この悽愴な告知が終えられた時、花凛の右手には長さ二十センチ近い、直径十五ミリほどの緑色の柄が握られており、それは全長三メートルほどの凶々しいまでに鋭く光る薔薇の棘をびっしりと植え込んだ柄と同色の鞭と繋がれていた…。
「さて、と──!」
視界すら奪われているであろう魔強士を威嚇するかのように勢いよく鞭を振り下ろして床に鋭い衝突音を立てたグレーのチェック柄スカート姿のうら若き女王様は、厳かにお仕置きの開始を宣言する。
「ま、アンタにゃ全く見えちゃいないだろうけど神匠さんに創ってもらったこの鞭はとんてもないスグレモノでね、何と超強力な火・氷・雷・毒の四属性を発揮して敵を跡形もなく抹殺しちゃうんだけど、このケースに最適なのはどう考えても雷…つまり感電ってことよねえッ!!」
誇張抜きに夜叉そのものの形相となった花凛が柄を大きく振りかぶった時には既に棘鞭全体が青白く帯電しており、それが“薔薇人形”と化したリド=シェザードの左の首筋を直撃した瞬間、それは轟雷のごとき大音響で秘密資料室全体を震わせた!
「うぐわああああッッ!!!」
魔強具内部の肉体を高圧電流に直撃されたか、犠牲者の口からは先程までの傲岸なそれとは別人のごとき無残な悲鳴が迸るが、これが真性ドSを自認する高瀬花凛の嗜虐心に一気に火を点けたのだった!
かくて緑色の魔鞭を再度唸らせつつ女王も叫ぶ!!
「オッホホホホホッ!
やっと面白くなってきたわねッ!!
さあ、もっともっと叫びなさいよッ!!
しまいにゃあご褒美に自慢の装甲ごと黒焦げにしてあげるからさッッ!!!」
「ほう…なるほどな、おまえはあの男に恋しておる訳か…!
となると、彼奴と共にする今夏の遠征はさぞや楽しみであったのだろうが──ふふふ、残念であったな、おそらく二度と地上はおろかペトゥルナワスにおいてすら再会する機会はないであろう…!!」
陰険な含み笑いを交えつつ放たれたこのセリフは花凛にとって死刑宣告にも等しいものであり、当然ながら断じて容認できぬ彼女は猛然と食ってかかった。
「なあんですって…!?
このあたしが総代と二度と逢えないだなんて…アンタ、本気で吐かしてるのッ!?
全くいい度胸してるわねえ、この高瀬花凛が心の奥でいちばん大切にしてる宝物を盗み取ろうとしてるんだからッ!
言っとくけどあたしゃあねえ、今回の遠征を決してアンタのスッカスカのクソ悪い頭が決めつけたみたいに“四元先輩との夏のバカンス”だなんて甘っちょろく考えちゃいないんだからねッ!!
むしろ遠征隊全メンバーとの一蓮托生の死出の旅と心得てるんだッ!
つまり、それだからこそ総代と一緒じゃなきゃ、ぜーったいに出発する気にゃなれないんだよッッ!!!」
「そうか…ならば、この私をみごと倒してみよッ!
それを成し遂げぬ限り、おまえの生は四元どころか既に“異世界転移”した同志たちにすら見えることなくこの薄汚れた一室であえなく終了ということになるぞッ!!」
「だッ、だッ、誰がキサマなんかに後れを取るかってんだッ!
み、見てろよッ、今回の遠征用に密かに開発したとっておきの新戦法──その名も《花凛流超念術・薔薇吹雪》ッ!!」
胸の前で交差させた両腕を花凛が絶叫と共に天空に思い切り掲げた刹那、その両掌に真紅の薔薇の花弁が出現し、たちまち数百いや数千枚へと増殖したそれは渦動する花の奔流となって白い魔強士に殺到する!
「──ぬっ!?
こ、これはッ…!?」
意表を突く物質の出現にさしものリドも咄嗟に対応できず、術者の手から無限に溢れ出す薔薇の花弁は見る間に標的を覆い尽くしてゆく!
「ほほほほほッ!
こないだの冬遠征で、ヌーロス戦師からヒントをもらって編み出した〈超絶秘技〉のお味はいかが!?
もちろん窒息させるには相手が素っ裸なのが理想的だけど、アンタのようにカブト虫みたく全身を鎧ってる臆病者に対してもすっごく有効なんだわさ──何故かって?
うっふふふふ…それはね、表面はもとより、あらゆる隙間に詰まった花びらはたちまち恋太郎の牙並みに硬くなって二度とヨロイを脱げなくさせるからさッッ!!!」
確信に満ちた断言を裏付けるかのごとく、一ミリの隙間も無く全身を真紅の花弁て覆い尽くされたリドは仁王立ちのまま硬直し、あたかも放課後の部活動で制作された奇怪なオブジェといった趣である…。
「まーこのまま放っといても罠にかかったゴキブリみたいに自然にくたばるだろうけど、コイツがさっきから口走った数々の気に障る物言いを鑑みるととてもそんな安楽死は赦せないわッ!
ここは一つ、花凛女王様の逆鱗に触れた奴がどんな末路を辿るか、骨の髄から味わってもらわないとね…!!」
この悽愴な告知が終えられた時、花凛の右手には長さ二十センチ近い、直径十五ミリほどの緑色の柄が握られており、それは全長三メートルほどの凶々しいまでに鋭く光る薔薇の棘をびっしりと植え込んだ柄と同色の鞭と繋がれていた…。
「さて、と──!」
視界すら奪われているであろう魔強士を威嚇するかのように勢いよく鞭を振り下ろして床に鋭い衝突音を立てたグレーのチェック柄スカート姿のうら若き女王様は、厳かにお仕置きの開始を宣言する。
「ま、アンタにゃ全く見えちゃいないだろうけど神匠さんに創ってもらったこの鞭はとんてもないスグレモノでね、何と超強力な火・氷・雷・毒の四属性を発揮して敵を跡形もなく抹殺しちゃうんだけど、このケースに最適なのはどう考えても雷…つまり感電ってことよねえッ!!」
誇張抜きに夜叉そのものの形相となった花凛が柄を大きく振りかぶった時には既に棘鞭全体が青白く帯電しており、それが“薔薇人形”と化したリド=シェザードの左の首筋を直撃した瞬間、それは轟雷のごとき大音響で秘密資料室全体を震わせた!
「うぐわああああッッ!!!」
魔強具内部の肉体を高圧電流に直撃されたか、犠牲者の口からは先程までの傲岸なそれとは別人のごとき無残な悲鳴が迸るが、これが真性ドSを自認する高瀬花凛の嗜虐心に一気に火を点けたのだった!
かくて緑色の魔鞭を再度唸らせつつ女王も叫ぶ!!
「オッホホホホホッ!
やっと面白くなってきたわねッ!!
さあ、もっともっと叫びなさいよッ!!
しまいにゃあご褒美に自慢の装甲ごと黒焦げにしてあげるからさッッ!!!」
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