93 / 99
第93話 しっかり巻き込まれるわけです
しおりを挟む
『基本的に他人の恋路に首を突っ込むと、ろくなことがないような気がするね。まぁ、だけれども、空き缶には突っ込む首もないので、その辺りは関係なく突っ込んで良いと思うよ。知らんけど』
「知らんのカァアァン! 絶対に酷いことになる予感しか、今の所しないカァアン!?」
カンの叫び声は、ゲス勇者に向かって降りてきた美少女魔王ヤン=ディレの、更に大きな叫び声にかき消されたのだった。
「タロウちゃん、みぃつけたぁぁあああ! タロウちゃんの魔王ヤン=ディレが、お迎えにきたよぉおおぉおお!」
「ヤン……デレ? 名前からして、もうあかん系カァン。それに、タロウって誰カァン?」
魔王の名前に身体を震わせるカンだったが、それとともに魔王が口にした〝タロウ〟という名に反応した。
「魔王ヤン=ディレ! まだ、期限は来てないはずだぞ!」
「真剣な顔しておるところ悪いが、タロウって誰ぞ? おぬしの名前は確か、天翔……」
「やめろぉおおお!? 僕の黒歴史を口にするなぁあぁああ!?」
『ゲス勇者の本名は、カミペディア調べでは〝太郎丸太郎〟と言い、異世界デビューする際に〝天翔龍 光〟と名乗っていたみたいだね。ずっと内緒にしていたみたいだけど、魔王ヤン=ディレの【強制契約】を受けたことで、情報が魔王に筒抜けになったとさ。結果、ゲス勇者の本名が魔王にバレてしまったと。魔王に、本名バレるとか術的にも色々やだよねぇ』
「山本山みたいで、分かりにくいカァン。名は『タロウ』なのカァン? それとも『マルタロウ』なのカァン?」
「マルタロウだよ! って、何故僕の本名を!?」
まさか、空き缶が自身の本名を口にするとは思わず、素直に驚く勇者マルタロウ。
「小さい事は気にするでない、ゲスタロウよ」
「勝手に改名するなぁああ! げふか!?」
「カァン!? 空気読まずに会話途中に突然、ゲスタロウボディが、ヤンデレ魔王の体当たり的な抱きつきでくの字にぃいなったカァアァン!?」
勇者マルタロウは、カンにツッコミを入れる隙を突かれ、美少女魔王ヤン=ディレからダイビング抱きつきアタックをくらってしまった。
その結果、魔王と勇者の二人は錐揉み回転で吹っ飛んでいった。
「何コレ。本気で帰りたいカァン……我、本気で関係無いし、さっさとくっついちゃえば良いカァン」
全くと言って良いほど、魔王と勇者のいざこざを他人事のように眺めるカン。
『そっとしておきたいことでも、無理やり巻き込まれる事もあるから気をつけないと。むしろ、カンの持つ巻き込まれ体質としては、身体が疼くのでは? 巻き込まれたくて』
「そんな訳あるカァアァン!」
『カンは、身体をくの字にしながら飛んでいったゲス勇者マルタロウと美少女魔王ヤン=ディレを見ながら、自分も身体をくの字にして貰いたいと考えていたりするんでしょ? M持ちだし』
「一ミリたりとも思っておらぬカァアァン!」
カンが、イチカと騒いでいると、魔王と勇者の状況は進み続ける。
「タロウちゃん、貴方に私以外の人が好きになる訳ないでしょ。ハーレムなんて、〝魅了〟なんて卑怯な真似しなければ、男としてどうしようもく、強い以外の魅力を感じないタロウちゃんにできないよ。だから、ね? もう諦めて、一緒に私達の城に戻りましょ?」
「ま……まだ、約束の日までは、一週間ある!」
「無理よ、ゲスでクズでどうしようもない沢山いる勇者の一人に過ぎず、見た目もボロボロで、すでに自分に自信もありもせず、ただ逃げているだけのタロウちゃんは……私がいないとダメな子なの」
「……酷い言われようカァン」
「うぅ……でも、まだ僕には最後の切り札が……そうだろ! 空き缶! 僕の周りの魔力の風を止めてくれ!」
「……」
急に勇者マルタロウに話しかけれたカンは、咄嗟に身の危険を感じ、無言になり、只の空き缶の振りをした。
「タロウちゃん? なに言っているの? 空き缶が、さも喋るような感じで話しかけているけど。あ、そうか。もう、色々疲れちゃったんだね。もう、色々諦めてお家へ帰りましょう」
「ちょ!? 空き缶! 散々喋ってたろ!」
「……」
カンは、美少女魔王ヤン=ディレの眼を見て確信していた。〝ガチ勢〟だと。
その為、必死に気配を消して黙り、ただのゴミの空き缶に擬態していた。そもそも、喋らなければゴミの空き缶である為、擬態は完璧だった。
「…………」
『心の中で言うくらいなら、声に出しなよ』
あくまでゴミの空き缶に擬態するカンは、心の中で勇者に別れの言葉を告げた。
「さぁ、行くよ。お家で……永遠の時を一緒に過ごしましょう」
「ぎゃあ! ちくしょぉおお! こうなったら空き缶も巻き添えだぁああ!」
「……カァン!? 何故こっちに来るでカァアァアアン!? 我を掴むでないカァアァン! 離せカァアアァアン! な!? 我をどこに入れるきカァアァアァァァ……」
ゲス勇者マルタロウは、往生際悪くカンのところに駆け寄り手に掴んだ。
そして、カンを自分のマジックバックに収納したところで、美少女魔王ヤン=ディレに捕獲され空高くへ拉致られていったのだった。
「知らんのカァアァン! 絶対に酷いことになる予感しか、今の所しないカァアン!?」
カンの叫び声は、ゲス勇者に向かって降りてきた美少女魔王ヤン=ディレの、更に大きな叫び声にかき消されたのだった。
「タロウちゃん、みぃつけたぁぁあああ! タロウちゃんの魔王ヤン=ディレが、お迎えにきたよぉおおぉおお!」
「ヤン……デレ? 名前からして、もうあかん系カァン。それに、タロウって誰カァン?」
魔王の名前に身体を震わせるカンだったが、それとともに魔王が口にした〝タロウ〟という名に反応した。
「魔王ヤン=ディレ! まだ、期限は来てないはずだぞ!」
「真剣な顔しておるところ悪いが、タロウって誰ぞ? おぬしの名前は確か、天翔……」
「やめろぉおおお!? 僕の黒歴史を口にするなぁあぁああ!?」
『ゲス勇者の本名は、カミペディア調べでは〝太郎丸太郎〟と言い、異世界デビューする際に〝天翔龍 光〟と名乗っていたみたいだね。ずっと内緒にしていたみたいだけど、魔王ヤン=ディレの【強制契約】を受けたことで、情報が魔王に筒抜けになったとさ。結果、ゲス勇者の本名が魔王にバレてしまったと。魔王に、本名バレるとか術的にも色々やだよねぇ』
「山本山みたいで、分かりにくいカァン。名は『タロウ』なのカァン? それとも『マルタロウ』なのカァン?」
「マルタロウだよ! って、何故僕の本名を!?」
まさか、空き缶が自身の本名を口にするとは思わず、素直に驚く勇者マルタロウ。
「小さい事は気にするでない、ゲスタロウよ」
「勝手に改名するなぁああ! げふか!?」
「カァン!? 空気読まずに会話途中に突然、ゲスタロウボディが、ヤンデレ魔王の体当たり的な抱きつきでくの字にぃいなったカァアァン!?」
勇者マルタロウは、カンにツッコミを入れる隙を突かれ、美少女魔王ヤン=ディレからダイビング抱きつきアタックをくらってしまった。
その結果、魔王と勇者の二人は錐揉み回転で吹っ飛んでいった。
「何コレ。本気で帰りたいカァン……我、本気で関係無いし、さっさとくっついちゃえば良いカァン」
全くと言って良いほど、魔王と勇者のいざこざを他人事のように眺めるカン。
『そっとしておきたいことでも、無理やり巻き込まれる事もあるから気をつけないと。むしろ、カンの持つ巻き込まれ体質としては、身体が疼くのでは? 巻き込まれたくて』
「そんな訳あるカァアァン!」
『カンは、身体をくの字にしながら飛んでいったゲス勇者マルタロウと美少女魔王ヤン=ディレを見ながら、自分も身体をくの字にして貰いたいと考えていたりするんでしょ? M持ちだし』
「一ミリたりとも思っておらぬカァアァン!」
カンが、イチカと騒いでいると、魔王と勇者の状況は進み続ける。
「タロウちゃん、貴方に私以外の人が好きになる訳ないでしょ。ハーレムなんて、〝魅了〟なんて卑怯な真似しなければ、男としてどうしようもく、強い以外の魅力を感じないタロウちゃんにできないよ。だから、ね? もう諦めて、一緒に私達の城に戻りましょ?」
「ま……まだ、約束の日までは、一週間ある!」
「無理よ、ゲスでクズでどうしようもない沢山いる勇者の一人に過ぎず、見た目もボロボロで、すでに自分に自信もありもせず、ただ逃げているだけのタロウちゃんは……私がいないとダメな子なの」
「……酷い言われようカァン」
「うぅ……でも、まだ僕には最後の切り札が……そうだろ! 空き缶! 僕の周りの魔力の風を止めてくれ!」
「……」
急に勇者マルタロウに話しかけれたカンは、咄嗟に身の危険を感じ、無言になり、只の空き缶の振りをした。
「タロウちゃん? なに言っているの? 空き缶が、さも喋るような感じで話しかけているけど。あ、そうか。もう、色々疲れちゃったんだね。もう、色々諦めてお家へ帰りましょう」
「ちょ!? 空き缶! 散々喋ってたろ!」
「……」
カンは、美少女魔王ヤン=ディレの眼を見て確信していた。〝ガチ勢〟だと。
その為、必死に気配を消して黙り、ただのゴミの空き缶に擬態していた。そもそも、喋らなければゴミの空き缶である為、擬態は完璧だった。
「…………」
『心の中で言うくらいなら、声に出しなよ』
あくまでゴミの空き缶に擬態するカンは、心の中で勇者に別れの言葉を告げた。
「さぁ、行くよ。お家で……永遠の時を一緒に過ごしましょう」
「ぎゃあ! ちくしょぉおお! こうなったら空き缶も巻き添えだぁああ!」
「……カァン!? 何故こっちに来るでカァアァアアン!? 我を掴むでないカァアァン! 離せカァアアァアン! な!? 我をどこに入れるきカァアァアァァァ……」
ゲス勇者マルタロウは、往生際悪くカンのところに駆け寄り手に掴んだ。
そして、カンを自分のマジックバックに収納したところで、美少女魔王ヤン=ディレに捕獲され空高くへ拉致られていったのだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
召喚魔法の正しいつかいかた
一片
ファンタジー
「世界を救って頂きたいのです」
そんな言葉から始まった上代薦の異世界転移。
世界最高の才能を一つ与えると言われたものの……何故かろくでもない状況ばかりが積み重ねられていく中、薦は使い勝手が非常に悪く役に立たないと言われている召喚魔法に全てを賭ける。
召喚魔法……何かを使役したり、とんでもない攻撃力を持つ魔法……ではない。ただ呼び出し、そして送り返すだけ。それ以外の効果を一切持たない魔法だが、薦はこれこそが自分がこの理不尽な世界で生き延びるために必要な魔法だと考えた。
状況を打破するために必要なのはとりあえず動くこと、ではない!とにかく考えて考えて考えつくすことだ!
八方ふさがりならば空を飛ぶか地面を掘れ!四面楚歌ならば別の歌を歌え!
これは世界最弱のまま、世界を救わなければならず……世界最弱のまま英雄と呼ばれるようになる世界最高の召喚魔法使いの物語。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる