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第6話 称号持ち
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"称号『最強最凶最高の魔王を夢見る空き缶』を獲得しました"
「ん? 称号? 何やらまた、世界の声的なものが聞こえたが、何なのだ?」
「流石、僕が見込んだ空き缶だ。早くも"称号"持ちになったね」
突如聞こえた"世界の声"から知らされた"称号"獲得の知らせに、カンは訳が分からないといった様子なのに対し、イチカは感心した様子だった。
「"称号"とは、一体何なのだ。何やら、心熱くなる響きではあるが」
"称号"の意味が分かっていないカンであったが、"称号"という言葉の響きに格好良さを感じ、既にテンションが上がっていた。
「得られた"称号"によっては、能力の増減が起きる場合があるんだよ。称号を得る方法としては、様々だから一概にどうすれば得られるという事は言えないし、世界の理に称号を得るに相応しいと認められなくてはならないから、そもそも"称号持ち"になる事自体が難しいんだけどさ」
「ほほう……流石、我と言った所だな。では、例えば、どんな"称号"で能力の増減が起きるのだ? 我が得た『最強最凶最高の魔王を夢見る空き缶』は、一体どれほど能力が上がる称号なのだ?」
「有名どころで言えば、"竜殺し"や"神殺し"や"剣聖"なんかかな。それら称号持ちは、特定の相手や武器を持った場合に、能力が上がるよ」
「ほほう。では、我の称号は"魔王"が付くぐらいだ、さぞかし能力が上がっている事だろうな。ふっふっふ」
期待を膨らませながら、カンはイチカの言葉を待っていた。しかし、カンにとっては予想外の返答が、イチカから返ってきたのだった。
「"夢見る"だけじゃ何も変わらない」
「現実は厳しい!?」
「何をそんなに驚いているんだよ。この世界に生まれてすぐに"称号持ち"になるだけでも十分なのに、一体何を期待してたんだか」
実際、"称号"は容易に得られるものではなかった。
今回、カンがすぐに"称号"を得られたのは空き缶でありながらも"神核の欠片を持つ存在"であり、この世界において唯一無二の存在である筈の"創造者"と同じ属性を持つという存在だったからだった。
その為、空き缶ではあるが、カンはこの世界の理から称号を得やすい立場にあったのだ。
「てっきり"最強最凶最高の魔王"という称号の力により、いきなり世界最強的な力を覚醒をするのかと思ったのだが……」
「"最強最凶最高の魔王"ではなく、"最強最凶最高の魔王を夢見る空き缶"だからね? こんな中二的な"称号"得た所で、何も変わるわけないでしょ。ボディも空っぽなら、頭も空っぽかな? あぁ、空き缶だから頭もないのか」
「"称号"を得た事を褒めたと思えば、いきなりの手のひら返しとは、お主の手首が心配になるほどだな。少しくらい期待しても良いではないか、空き缶に転生したのだぞ? ちょっとは、その分くらい優遇されても良いであろう」
「ほほう……甘いな……甘い! いつからカンは、おしるこの空き缶程に甘くなったんだ! 両手でクラッシュ!」
「ぺキャラ!? 潰れるぅうう」
自分に甘く、世の中を舐めきっているカンに対して、イチカは心を鬼にしてボディを両手でクシャクシャ丸めたのだった。
「よし」
「……某爆弾する岩の様にボディが丸くなっているが、これは空き缶と言えるのだろうか?」
「カンは、どんな姿になっても空き缶だよ」
「空き缶の定義ぇええぇ」
イチカの自信に満ちた宣言にカンは、何を持って空き缶と言うのか、空き缶とは何かと哲学的な思考へと陥りそうになっていた。
それほどまでに、身体を無理やりグシャグシャに丸められるのは衝撃的な体験であった。
もし人の姿であったならば、見るも無残な状態であるが、空き缶であるが故にここまで潰されたのにもかかわらず、絶命する事なかった。
「思ってた通りデタラメな生き物だね……ただ、コロコロと転がられても目障りだから、元の缶の形に戻そうか」
「己が潰しておいて、デタラメとか言うでないわ……おぉ! せめて元の空き缶形態に!」
イチカはおもむろに丸く潰れているカンを摘み上げると、くるくると回しながら、缶の蓋材と底材の部分を探し当て、両手でその部分を持つと、深呼吸をした。そして、一気に指先に力を集中したのだった。
「ふん! ぬぉおおおああああああ! 引伸ばすぅううおおお!」
「力ずくなのかぁああ!? ぴぎゃらぴかぐげぶかぶっ!?」
イチカは一気に丸く潰れているカンを、力任せに引き伸ばした。そして、書斎にはカンの絶叫が響き渡った。
カンのボディは、ベコベコになっており非常に弱い状態であり、その為に力任せに伸ばす行為は、一つ間違えればそのまま真っ二つに裂けかねない状況だった。
しかし、伸ばしきった瞬間に絶妙なタイミングで、イチカは見事に力を抜いたのだった。
「はぁ……はぁ……まだ力は衰えていなかったみたいだね。上手くいって良かった……」
「おい、今のボソっとなんか言ったであろう……はっ!? 身体が転がらない!? まさか本当に……これは!?」
「アートっぽくなったな」
「まるで某チューハイ缶のミウラ折りの模様ではないかぁああ」
無理やり伸ばしたカンのボディは、これでもかという程に無数に折り目が付いていた。
はたから見たら、確実にゴミと思われ廃棄されるに違いなかった。しかし、あくまでイチカは前向きに芸術品のようだと励ましていた。
その励ましの言葉は、カンは無意識に受け入れ、何とかミウラ折りだと自己暗示をかけようとしていた。
そして、興奮するあまり何故自分がミウラ折り等の知識を得ているのかに、疑問に持つことはなかった。
「実際は、無理やり丸まったアルミ缶を無理やり引き伸ばしただけだから、所々穴とか空いちゃってるけどね」
「折り目の耐久性が限界ぁあああぁあ水漏れちゃうぅうう」
「空き缶だから、穴空いてても問題ないでしょ」
「ボディの劣化が加速するカァアアアアン!?」
結局、書斎にはカンの悲鳴が響くことになるのであった。
「ん? 称号? 何やらまた、世界の声的なものが聞こえたが、何なのだ?」
「流石、僕が見込んだ空き缶だ。早くも"称号"持ちになったね」
突如聞こえた"世界の声"から知らされた"称号"獲得の知らせに、カンは訳が分からないといった様子なのに対し、イチカは感心した様子だった。
「"称号"とは、一体何なのだ。何やら、心熱くなる響きではあるが」
"称号"の意味が分かっていないカンであったが、"称号"という言葉の響きに格好良さを感じ、既にテンションが上がっていた。
「得られた"称号"によっては、能力の増減が起きる場合があるんだよ。称号を得る方法としては、様々だから一概にどうすれば得られるという事は言えないし、世界の理に称号を得るに相応しいと認められなくてはならないから、そもそも"称号持ち"になる事自体が難しいんだけどさ」
「ほほう……流石、我と言った所だな。では、例えば、どんな"称号"で能力の増減が起きるのだ? 我が得た『最強最凶最高の魔王を夢見る空き缶』は、一体どれほど能力が上がる称号なのだ?」
「有名どころで言えば、"竜殺し"や"神殺し"や"剣聖"なんかかな。それら称号持ちは、特定の相手や武器を持った場合に、能力が上がるよ」
「ほほう。では、我の称号は"魔王"が付くぐらいだ、さぞかし能力が上がっている事だろうな。ふっふっふ」
期待を膨らませながら、カンはイチカの言葉を待っていた。しかし、カンにとっては予想外の返答が、イチカから返ってきたのだった。
「"夢見る"だけじゃ何も変わらない」
「現実は厳しい!?」
「何をそんなに驚いているんだよ。この世界に生まれてすぐに"称号持ち"になるだけでも十分なのに、一体何を期待してたんだか」
実際、"称号"は容易に得られるものではなかった。
今回、カンがすぐに"称号"を得られたのは空き缶でありながらも"神核の欠片を持つ存在"であり、この世界において唯一無二の存在である筈の"創造者"と同じ属性を持つという存在だったからだった。
その為、空き缶ではあるが、カンはこの世界の理から称号を得やすい立場にあったのだ。
「てっきり"最強最凶最高の魔王"という称号の力により、いきなり世界最強的な力を覚醒をするのかと思ったのだが……」
「"最強最凶最高の魔王"ではなく、"最強最凶最高の魔王を夢見る空き缶"だからね? こんな中二的な"称号"得た所で、何も変わるわけないでしょ。ボディも空っぽなら、頭も空っぽかな? あぁ、空き缶だから頭もないのか」
「"称号"を得た事を褒めたと思えば、いきなりの手のひら返しとは、お主の手首が心配になるほどだな。少しくらい期待しても良いではないか、空き缶に転生したのだぞ? ちょっとは、その分くらい優遇されても良いであろう」
「ほほう……甘いな……甘い! いつからカンは、おしるこの空き缶程に甘くなったんだ! 両手でクラッシュ!」
「ぺキャラ!? 潰れるぅうう」
自分に甘く、世の中を舐めきっているカンに対して、イチカは心を鬼にしてボディを両手でクシャクシャ丸めたのだった。
「よし」
「……某爆弾する岩の様にボディが丸くなっているが、これは空き缶と言えるのだろうか?」
「カンは、どんな姿になっても空き缶だよ」
「空き缶の定義ぇええぇ」
イチカの自信に満ちた宣言にカンは、何を持って空き缶と言うのか、空き缶とは何かと哲学的な思考へと陥りそうになっていた。
それほどまでに、身体を無理やりグシャグシャに丸められるのは衝撃的な体験であった。
もし人の姿であったならば、見るも無残な状態であるが、空き缶であるが故にここまで潰されたのにもかかわらず、絶命する事なかった。
「思ってた通りデタラメな生き物だね……ただ、コロコロと転がられても目障りだから、元の缶の形に戻そうか」
「己が潰しておいて、デタラメとか言うでないわ……おぉ! せめて元の空き缶形態に!」
イチカはおもむろに丸く潰れているカンを摘み上げると、くるくると回しながら、缶の蓋材と底材の部分を探し当て、両手でその部分を持つと、深呼吸をした。そして、一気に指先に力を集中したのだった。
「ふん! ぬぉおおおああああああ! 引伸ばすぅううおおお!」
「力ずくなのかぁああ!? ぴぎゃらぴかぐげぶかぶっ!?」
イチカは一気に丸く潰れているカンを、力任せに引き伸ばした。そして、書斎にはカンの絶叫が響き渡った。
カンのボディは、ベコベコになっており非常に弱い状態であり、その為に力任せに伸ばす行為は、一つ間違えればそのまま真っ二つに裂けかねない状況だった。
しかし、伸ばしきった瞬間に絶妙なタイミングで、イチカは見事に力を抜いたのだった。
「はぁ……はぁ……まだ力は衰えていなかったみたいだね。上手くいって良かった……」
「おい、今のボソっとなんか言ったであろう……はっ!? 身体が転がらない!? まさか本当に……これは!?」
「アートっぽくなったな」
「まるで某チューハイ缶のミウラ折りの模様ではないかぁああ」
無理やり伸ばしたカンのボディは、これでもかという程に無数に折り目が付いていた。
はたから見たら、確実にゴミと思われ廃棄されるに違いなかった。しかし、あくまでイチカは前向きに芸術品のようだと励ましていた。
その励ましの言葉は、カンは無意識に受け入れ、何とかミウラ折りだと自己暗示をかけようとしていた。
そして、興奮するあまり何故自分がミウラ折り等の知識を得ているのかに、疑問に持つことはなかった。
「実際は、無理やり丸まったアルミ缶を無理やり引き伸ばしただけだから、所々穴とか空いちゃってるけどね」
「折り目の耐久性が限界ぁあああぁあ水漏れちゃうぅうう」
「空き缶だから、穴空いてても問題ないでしょ」
「ボディの劣化が加速するカァアアアアン!?」
結局、書斎にはカンの悲鳴が響くことになるのであった。
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