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日常編
26 魔王城のNo.2〜後編〜
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「おそらく、このビルだ」
高くそびえ立つ建物を見上げながらヒビキは言った。
ヒビキはゾラーの魔力を探知して、必死に足どりを調べていた。
目の前の建物はまだ建築中らしく、鉄骨が一部剥き出しになっていて、屋上にはクレーンのような物が設置されていた。
ヒビキは建築現場の仮囲いの中へ消えていった。
中には足場が組まれていた。その簡易階段を慎重に登っていった。
ヒビキは上階を目指した。
今のところ、罠はまだ巡らされていないようだ。
ヒビキは敏感に周囲の様子をうかがう。
「愛するミライに仇なす者は誰だろうと許さんッ!」
一方、階段を上って行くヒビキを上空から冷ややかに見つめるものがあった。
それはゾラーの使い魔の漆黒の大鴉だった。
「ドゥフフフフ。まんまとおびき出されて来たでござる。さっそく、ゾラー様に報告ですぞ」
大きく中天を滑空すると、つい~と屋上へ降りていった。
ヒビキはついに建築現場の上までのぼってきた。
風は強く逆巻いて、ヒビキの髪を弄んだ。
屋上は広くて、荷物運搬用の巨大なクレーンが馬鹿でっかく鎮座していた。
「やっときたようだなぁ。お前が我々の監視魔法に気づいていたのは知っていたぞ。あえて近くの工事現場で貴様を待ち伏せしていたというわけだ!」
そこには僕を人質にしたゾラーが待ち構えていた。
漆黒の翼を大きく開いて、レザーの衣装を身に纏ったしなやかな身体つきでヒビキを威嚇する。
「ミライ……いつの間に捕まっていたんだ⁉︎」
「ごめんね、ヒビキ。さっき、敵の使い魔の鴉にクチバシで咥えられて捕まっちゃったんだ……」
ゾラーに引きすえられるようにして、僕は立っていた。
「安心しろ、ミライ。すぐに助けてやるからなッ!」
「おやおや、仲がよろしいことで。だがね、私の目的はミライ君の方なんだ。正直お前のことなど、どうでもいいんだがなぁ」
暗黒の唇を開いて、舌なめずりをするようにゾラーが言う。
「お前はさっきザンと一緒に魔王城にいたヤツだなぁ。さっさと立ち去るなら命だけは奪わないでおいてやる。悪い話じゃ、ねえだろう?」
「おや? 何故、私が貴様ごときに命乞いをする必要がある? さっき戦ったミントとかいう魔導師と同じようにボコボコにしてくれるわッ!」
「何だとッ⁉︎ お前、ミントに何をした⁉︎」
「あぁ、妖精族特有の神々しい羽を生きたまま毟り取り、手足を引きちぎった後、ヴァギナより杭を打ち込み、口まで貫く串刺し刑にしてやったわぁ~♡ 今すぐ、貴様もミントの所へ連れて行ってやろうwww」
ゾラーは中空から雷をひと掻きすると、放心状態のヒビキめがけて叩きつける。
びしッ。雷を真っ向から受けて、ヒビキは吹き飛ばされた。
「ヒビキ~、落ち着いて! ミントがこんな三下に負けるわけないじゃない! はったり言って、ヒビキを動揺させる作戦に違いないよ~ッ!」
僕の言葉を聞いたヒビキの目にはめらめらと紅蓮の炎が宿り、歯を食いしばって身体を起こした。
「あぁ~、その目はなんだッ⁉︎ ちょっとでも動いてみろ! お前のだ~いすきな坊やの命はないぞ!!!」
僕の喉元にゾラーが鉤爪をつきたてる。
「――そういうコトなら、こっちも本気出させてもらうぜ!」
ヒビキの口から重々しい雄叫びがほとばしった。全身の筋肉が大きく膨張し、服の下の身体が見る間に禍々しい悪魔のような漆黒の闇へと変わり、艶やかな黒髪はさらさらのロングヘアーとなり、目は緋色へと変化し、にょきにょきと背中から黒光りする翼が生えだした。
玲瓏と輝く月光に映えるおどろおどろしい雰囲気を漂わせつつも、神々しい美しさを秘めたシルエット――それは悪魔そのものだ。夜空に響き渡る咆哮は不屈の闘志を表していた。
悪魔化したヒビキのパワーとスピードは、ともに通常を大きく上まわり、爪は鋼鉄をも引き裂く刃だ。固い闇の皮膚は剣撃など軽く弾きかえす鎧だ。長い牙を剥き出しにした口からもれる重い唸り声が、夜気を震わせる。
獰猛な闘志を秘めた目が赤光を放ち、猛々しい魔力が巨体を包み込んだ。
「ほほう、これが魔王様と互角に渡り合った力か! 何という魔力だッ⁉︎」
闘志を剥き出したヒビキの雄叫びに対し、ゾラーの声は明らかに弱気になっていた。
ゾラーとヒビキが同時に挑んだ。
すさまじい勢いで放たれたヒビキの拳をゾラーはかわすこともできず、勢いで地面にめり込んでしまう。
ヒビキの超絶的なパンチは周囲を震撼させた。
ヒビキが繰り出す一撃一撃から放射される膨大な魔力が空気を砕き、地面を斬り裂く。
衝撃波が疾り、ヒビキの魔力が奔流となって渦巻いた。
「――がァッ!」
骨まで軋む激痛とともに、ゾラーの身体が吹き飛び、何度も地面に叩きつけられた。
衝撃で建築中の建物が崩れ、重い地響きをあげてゾラーの体を呑み込んでしまう。
ドッとあがった土煙が周囲を包み込んだ。
すさまじい魔力の衝撃波が大地をえぐっていた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ~……」
荒れ狂うヒビキの攻撃をまともに受け、ゾラーは悲鳴とともに吹き飛ばされた。
すべてが鎮まった後、目の前には破壊しつくされた建物の姿が現れていた。
見守るのは、天空の月ばかり。
その清らかな輝きは地上の闘いとは無縁に美しく、静かだった。
土煙の中、2つの影が浮かびあがる。片方は倒れ、片方は屹然と地面を踏みしめて。
前者はゾラーだった。ゾラーのレザーの衣装はズタズタに裂け、素肌がのぞいていた。意識もなく、血の気のない麗貌をさらしている。
「お前の敗因は『俺』を敵にまわしたことだ」
ヒビキのつぶやきは緩やかな夜風にちぎれた。
高くそびえ立つ建物を見上げながらヒビキは言った。
ヒビキはゾラーの魔力を探知して、必死に足どりを調べていた。
目の前の建物はまだ建築中らしく、鉄骨が一部剥き出しになっていて、屋上にはクレーンのような物が設置されていた。
ヒビキは建築現場の仮囲いの中へ消えていった。
中には足場が組まれていた。その簡易階段を慎重に登っていった。
ヒビキは上階を目指した。
今のところ、罠はまだ巡らされていないようだ。
ヒビキは敏感に周囲の様子をうかがう。
「愛するミライに仇なす者は誰だろうと許さんッ!」
一方、階段を上って行くヒビキを上空から冷ややかに見つめるものがあった。
それはゾラーの使い魔の漆黒の大鴉だった。
「ドゥフフフフ。まんまとおびき出されて来たでござる。さっそく、ゾラー様に報告ですぞ」
大きく中天を滑空すると、つい~と屋上へ降りていった。
ヒビキはついに建築現場の上までのぼってきた。
風は強く逆巻いて、ヒビキの髪を弄んだ。
屋上は広くて、荷物運搬用の巨大なクレーンが馬鹿でっかく鎮座していた。
「やっときたようだなぁ。お前が我々の監視魔法に気づいていたのは知っていたぞ。あえて近くの工事現場で貴様を待ち伏せしていたというわけだ!」
そこには僕を人質にしたゾラーが待ち構えていた。
漆黒の翼を大きく開いて、レザーの衣装を身に纏ったしなやかな身体つきでヒビキを威嚇する。
「ミライ……いつの間に捕まっていたんだ⁉︎」
「ごめんね、ヒビキ。さっき、敵の使い魔の鴉にクチバシで咥えられて捕まっちゃったんだ……」
ゾラーに引きすえられるようにして、僕は立っていた。
「安心しろ、ミライ。すぐに助けてやるからなッ!」
「おやおや、仲がよろしいことで。だがね、私の目的はミライ君の方なんだ。正直お前のことなど、どうでもいいんだがなぁ」
暗黒の唇を開いて、舌なめずりをするようにゾラーが言う。
「お前はさっきザンと一緒に魔王城にいたヤツだなぁ。さっさと立ち去るなら命だけは奪わないでおいてやる。悪い話じゃ、ねえだろう?」
「おや? 何故、私が貴様ごときに命乞いをする必要がある? さっき戦ったミントとかいう魔導師と同じようにボコボコにしてくれるわッ!」
「何だとッ⁉︎ お前、ミントに何をした⁉︎」
「あぁ、妖精族特有の神々しい羽を生きたまま毟り取り、手足を引きちぎった後、ヴァギナより杭を打ち込み、口まで貫く串刺し刑にしてやったわぁ~♡ 今すぐ、貴様もミントの所へ連れて行ってやろうwww」
ゾラーは中空から雷をひと掻きすると、放心状態のヒビキめがけて叩きつける。
びしッ。雷を真っ向から受けて、ヒビキは吹き飛ばされた。
「ヒビキ~、落ち着いて! ミントがこんな三下に負けるわけないじゃない! はったり言って、ヒビキを動揺させる作戦に違いないよ~ッ!」
僕の言葉を聞いたヒビキの目にはめらめらと紅蓮の炎が宿り、歯を食いしばって身体を起こした。
「あぁ~、その目はなんだッ⁉︎ ちょっとでも動いてみろ! お前のだ~いすきな坊やの命はないぞ!!!」
僕の喉元にゾラーが鉤爪をつきたてる。
「――そういうコトなら、こっちも本気出させてもらうぜ!」
ヒビキの口から重々しい雄叫びがほとばしった。全身の筋肉が大きく膨張し、服の下の身体が見る間に禍々しい悪魔のような漆黒の闇へと変わり、艶やかな黒髪はさらさらのロングヘアーとなり、目は緋色へと変化し、にょきにょきと背中から黒光りする翼が生えだした。
玲瓏と輝く月光に映えるおどろおどろしい雰囲気を漂わせつつも、神々しい美しさを秘めたシルエット――それは悪魔そのものだ。夜空に響き渡る咆哮は不屈の闘志を表していた。
悪魔化したヒビキのパワーとスピードは、ともに通常を大きく上まわり、爪は鋼鉄をも引き裂く刃だ。固い闇の皮膚は剣撃など軽く弾きかえす鎧だ。長い牙を剥き出しにした口からもれる重い唸り声が、夜気を震わせる。
獰猛な闘志を秘めた目が赤光を放ち、猛々しい魔力が巨体を包み込んだ。
「ほほう、これが魔王様と互角に渡り合った力か! 何という魔力だッ⁉︎」
闘志を剥き出したヒビキの雄叫びに対し、ゾラーの声は明らかに弱気になっていた。
ゾラーとヒビキが同時に挑んだ。
すさまじい勢いで放たれたヒビキの拳をゾラーはかわすこともできず、勢いで地面にめり込んでしまう。
ヒビキの超絶的なパンチは周囲を震撼させた。
ヒビキが繰り出す一撃一撃から放射される膨大な魔力が空気を砕き、地面を斬り裂く。
衝撃波が疾り、ヒビキの魔力が奔流となって渦巻いた。
「――がァッ!」
骨まで軋む激痛とともに、ゾラーの身体が吹き飛び、何度も地面に叩きつけられた。
衝撃で建築中の建物が崩れ、重い地響きをあげてゾラーの体を呑み込んでしまう。
ドッとあがった土煙が周囲を包み込んだ。
すさまじい魔力の衝撃波が大地をえぐっていた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ~……」
荒れ狂うヒビキの攻撃をまともに受け、ゾラーは悲鳴とともに吹き飛ばされた。
すべてが鎮まった後、目の前には破壊しつくされた建物の姿が現れていた。
見守るのは、天空の月ばかり。
その清らかな輝きは地上の闘いとは無縁に美しく、静かだった。
土煙の中、2つの影が浮かびあがる。片方は倒れ、片方は屹然と地面を踏みしめて。
前者はゾラーだった。ゾラーのレザーの衣装はズタズタに裂け、素肌がのぞいていた。意識もなく、血の気のない麗貌をさらしている。
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ヒビキのつぶやきは緩やかな夜風にちぎれた。
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