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第一章
第56話 作戦
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手短に一通りの映像を見せたあと、オレの方で把握している情報を伝えた。
魔物の全体の数は多すぎて把握できていないが、クオータービューでカウントできた数だけでも数千に達しており、森の奥にカウントできた数以上の魔物が遠目に見えていることから、その数は少なくとも一万を超すのは確実だろう。
魔物の種類は獣タイプのものが多いが、普通の魔物の氾濫と違い、多種多様な魔物が確認できている。
このことから自然に起こったものではないのではないかと推測出来た。
「こりゃぁ、思ってた数倍はやばい事態だな」
「たしかに……リナシーさんからの報告を受けて予想していた最悪の事態の数倍はいそうですね。それに人為的な何かを感じます」
魔物の大群の説明時にはビアゾには触れていないのに、リセントもやはり自然のものではないと感じているようだ。
「そうだな。オレもタイミングから見て、この魔物は魔神信仰ビアゾの奴らが関係しているんじゃないかと思っている」
「はぁ? そんなことが可能なのか?」
「私も古い文献でしかみたことはありませんが、ビアゾが儀式によって呼び出すという魔神の眷属なら可能かもしれません」
魔神の眷属か……。
これが単なるプレイヤーならそれは難しいのではないかと思うのだが、なにかMPKに関するチート、つまりモンスターを使ったプレイヤー殺しに特化した何かの能力を持っていれば可能かもしれない。
そう考えたオレは、チートという言葉を使わないようにしつつ、二人にそのことを説明してみた。
「なるほど……たしかにそのようなチートを持っている眷属が召喚されたとすると、魔物を操って街を襲わせるようなことも……」
「リセント。原因を探る事も重要だがよ。今はまず目の前に迫っている脅威、馬鹿げた数の魔物をどうするか考えるのが先決じゃねぇか?」
「あぁ、そうですね。私としたことが……」
そうだな。いくら一瞬で北の大森林まで飛べるとは言え、悠長に原因を考えている場合ではないな。
「それでガンズはどうするべきだと考えているんだ? よくわからないが、国の存亡がかかるような戦いに関する事を冒険者ギルドが決めていいのか?」
このベルジール王国での大規模戦闘の指揮や決定権を持つのが誰なのかわからないが、たとえギルドマスターとは言え、勝手に決めていいのかと思い尋ねてみたのだが……。
「は? いいに決まってるだろ? レスカは冒険者なんだからよぉ」
「そ、そうか。そういうものなのか」
たしかにもともとのゲームでも、国の存亡を左右するような大規模な戦闘に傭兵団が勝手に参加して、実質ほぼその優劣で戦況を決めていた。
それを考えるとそれほどおかしなことではないのか……。
「それにレスカさんには私の方から国として正式に依頼を出しますので、尚のこと問題ありません」
この国を実際に現場で切り盛りしている宰相のリセントが言うのだから、まぁ問題ないのだろうと納得することにした。
「では、まずは北の大森林に先行してもらい……」
それから三〇分ほどで作戦を練り、オレは北の大森林へと向かったのだった。
◆
魔物の大群が確認できた場所から十分な距離をとった場所にピクシーバードを移動させてから、まずはオレ一人でユニット交換を使って移動した。
それからその場ですぐにピクシーバードを召喚し、あらためてキューレをユニット交換で呼び寄せた。
こちらでキューレを召喚しなおせば早いのだが、まだキューレがオレが召喚したユニットだということは知られたくないので、念のためにこのような回りくどい事をすることにした。
「来たな。じゃぁまずは……」
キューレが来たのでさっそく行動を開始しようとしたのだが、そこでキューレから声を掛けられた。
「主さま。その前にご報告を」
「ん? どうした?」
「はい。先ほど私がユニット交換でこちらに飛ぶ前にギルドに知らせが届きまして、魔神信仰ビアゾのアジトの確保が完了したと」
「お。そうか。報告ありがとう」
ジェスチャー操作で牢の前に残しておいたアダマンタイトナイトのユニットビューを表示すると、困ったような顔の衛兵たちが映しだされた。
「あぁ……そりゃぁアダマンタイトナイトが3体も並んで通路を塞いでいたら、信者どもを捕える事もできないよな」
オレはアダマンタイトナイトたちに敬礼のような動きをさせたあと、不測の事態のために一体を残し、残りの二体を送還して召喚を解除した。
その後、手で通っていいぞとアダマンタイトナイトに身振り手振りで衛兵に伝えさせてあとは衛兵たちに任せることにした。
「先に作戦に必要なユニットだけを残して召喚を解除しておくか」
作戦の最後にはユニット枠をギリギリまで使用する予定なので、ギルドに残した退避用のピクシーバード五羽と王都周辺の監視用の五羽、ビアゾの地下牢前に残してあるアダマンタイトナイト一体、それからこの北の大森林周辺に展開させてあるピクシーバード一〇羽を残して、他の通常ユニットはすべて召喚を解除した。
これで使用ユニット枠は五枠のみ。
これによりオレの空きユニット枠は二〇枠となった。
もちろんキューレは解除していないからな。
「さて……難しい作戦だが動き出すとするか」
魔物の全体の数は多すぎて把握できていないが、クオータービューでカウントできた数だけでも数千に達しており、森の奥にカウントできた数以上の魔物が遠目に見えていることから、その数は少なくとも一万を超すのは確実だろう。
魔物の種類は獣タイプのものが多いが、普通の魔物の氾濫と違い、多種多様な魔物が確認できている。
このことから自然に起こったものではないのではないかと推測出来た。
「こりゃぁ、思ってた数倍はやばい事態だな」
「たしかに……リナシーさんからの報告を受けて予想していた最悪の事態の数倍はいそうですね。それに人為的な何かを感じます」
魔物の大群の説明時にはビアゾには触れていないのに、リセントもやはり自然のものではないと感じているようだ。
「そうだな。オレもタイミングから見て、この魔物は魔神信仰ビアゾの奴らが関係しているんじゃないかと思っている」
「はぁ? そんなことが可能なのか?」
「私も古い文献でしかみたことはありませんが、ビアゾが儀式によって呼び出すという魔神の眷属なら可能かもしれません」
魔神の眷属か……。
これが単なるプレイヤーならそれは難しいのではないかと思うのだが、なにかMPKに関するチート、つまりモンスターを使ったプレイヤー殺しに特化した何かの能力を持っていれば可能かもしれない。
そう考えたオレは、チートという言葉を使わないようにしつつ、二人にそのことを説明してみた。
「なるほど……たしかにそのようなチートを持っている眷属が召喚されたとすると、魔物を操って街を襲わせるようなことも……」
「リセント。原因を探る事も重要だがよ。今はまず目の前に迫っている脅威、馬鹿げた数の魔物をどうするか考えるのが先決じゃねぇか?」
「あぁ、そうですね。私としたことが……」
そうだな。いくら一瞬で北の大森林まで飛べるとは言え、悠長に原因を考えている場合ではないな。
「それでガンズはどうするべきだと考えているんだ? よくわからないが、国の存亡がかかるような戦いに関する事を冒険者ギルドが決めていいのか?」
このベルジール王国での大規模戦闘の指揮や決定権を持つのが誰なのかわからないが、たとえギルドマスターとは言え、勝手に決めていいのかと思い尋ねてみたのだが……。
「は? いいに決まってるだろ? レスカは冒険者なんだからよぉ」
「そ、そうか。そういうものなのか」
たしかにもともとのゲームでも、国の存亡を左右するような大規模な戦闘に傭兵団が勝手に参加して、実質ほぼその優劣で戦況を決めていた。
それを考えるとそれほどおかしなことではないのか……。
「それにレスカさんには私の方から国として正式に依頼を出しますので、尚のこと問題ありません」
この国を実際に現場で切り盛りしている宰相のリセントが言うのだから、まぁ問題ないのだろうと納得することにした。
「では、まずは北の大森林に先行してもらい……」
それから三〇分ほどで作戦を練り、オレは北の大森林へと向かったのだった。
◆
魔物の大群が確認できた場所から十分な距離をとった場所にピクシーバードを移動させてから、まずはオレ一人でユニット交換を使って移動した。
それからその場ですぐにピクシーバードを召喚し、あらためてキューレをユニット交換で呼び寄せた。
こちらでキューレを召喚しなおせば早いのだが、まだキューレがオレが召喚したユニットだということは知られたくないので、念のためにこのような回りくどい事をすることにした。
「来たな。じゃぁまずは……」
キューレが来たのでさっそく行動を開始しようとしたのだが、そこでキューレから声を掛けられた。
「主さま。その前にご報告を」
「ん? どうした?」
「はい。先ほど私がユニット交換でこちらに飛ぶ前にギルドに知らせが届きまして、魔神信仰ビアゾのアジトの確保が完了したと」
「お。そうか。報告ありがとう」
ジェスチャー操作で牢の前に残しておいたアダマンタイトナイトのユニットビューを表示すると、困ったような顔の衛兵たちが映しだされた。
「あぁ……そりゃぁアダマンタイトナイトが3体も並んで通路を塞いでいたら、信者どもを捕える事もできないよな」
オレはアダマンタイトナイトたちに敬礼のような動きをさせたあと、不測の事態のために一体を残し、残りの二体を送還して召喚を解除した。
その後、手で通っていいぞとアダマンタイトナイトに身振り手振りで衛兵に伝えさせてあとは衛兵たちに任せることにした。
「先に作戦に必要なユニットだけを残して召喚を解除しておくか」
作戦の最後にはユニット枠をギリギリまで使用する予定なので、ギルドに残した退避用のピクシーバード五羽と王都周辺の監視用の五羽、ビアゾの地下牢前に残してあるアダマンタイトナイト一体、それからこの北の大森林周辺に展開させてあるピクシーバード一〇羽を残して、他の通常ユニットはすべて召喚を解除した。
これで使用ユニット枠は五枠のみ。
これによりオレの空きユニット枠は二〇枠となった。
もちろんキューレは解除していないからな。
「さて……難しい作戦だが動き出すとするか」
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