微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸

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【第27話:信頼】

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 オレの故郷の村は『デルナーク』という何の変哲もない村だ。

 ただ、村にしてはそれなりの規模を持っており、農業だけでなく、他の商売もそれなりに盛んで訪れる人の数も多く、たくさんの人が住んでいる。そんな村だ。

 オレは冒険者になるために王都にやって来るまでは、ずっと村で育った。
 一緒に王都に来たローリエとは残念なことになってしまったが、他の多くの友人や知人は、今もデルナークの村で穏やかな暮らしを続けているはずだ。

 もちろんオレの両親や妹も……。

 その村の近くに、衛兵の一部隊が全滅するような恐ろしいBランクの魔物が現れたというのか……。

「ふぉ、フォーレスト……」

「フォーレストさん……」

 二人がオレを気遣って声を掛けて来てくれたのはわかっていたが、オレはうまく反応することが出来なかった。

 するとそこへ、オックスさんが話しかけてきた。

「こういう話の持って行き方をして、すまなかったね。ただ、フォーレストくんなら、自分の力で何とかしたいと思うんじゃないかと思って、差し出がましい真似をさせて貰った」

「オックスさん……そう、ですね。オレなら勝てるかもしれない……村の皆を救えるかもしれない……」

「フォーレストさん!? ダメです! ちゃんと冷静に考えて決めて下さい!」

 受付嬢のシリアがオレにこの依頼を勧めたくなかったのは、オレの故郷の村の近くで起こったことだったからか。
 冷静な判断が出来なくなり、考えなしで依頼を受けてしまうと思ったのかもしれないな。

 でも……その通りかもしれない……。

「シリア……それでもこれは、受けないわけにはいかない。村のみんなが危険にさらされているんだ」

「で、ですけど、フォーレストさん! フィアやロロアちゃんはどうするのですか!?」

 それは……さすがにこんな危険な依頼に、二人を付き合わせるわけにはいかない。

「悪いが二人には王都で待っ……」

「勝手に決めないで! 私も一緒に行くわよ!」

「わ、私も行きます!」

 オレの言葉を遮って一緒に行くと言い出した二人に驚いたが、すぐにそれはダメだと断った。

「ダメだ。これはオレの個人的な問題だ。二人は王都で待っていてくれ」

 もしこれが他の街や村の近くで起こった事なら、確実に断っていたような割に合わない依頼だ。
 危険だとわかっているのに、二人に受けさせるわけにはいかない。

 だけど、二人は納得してくれなかった。

「いやよ」

「ダメです」

「どうしてだ。これはオレが私情で受けようとしている依頼なんだ」

 なんとか説得してと思ったのだが、次の言葉に反論できなくなってしまった。

「もう、後悔したくないのよ……」

「後悔?」

「フォーレスト、私たちの兄さんはね。次の依頼は危険だからと、私たちに街で待っているように言って……そのまま帰ってこなかったの」

「それでもお姉ちゃんは絶対についていくって言い張ったんだけど、模擬戦で勝てばついて来て良いって言われて、その、それで負けちゃって……」

 前に模擬戦した時に、あんなに勝ちにこだわっていたのは、もしかしてそのせいなのか。

 しかし、どうしたものか……。
 今のオレにとって、彼女たちは家族と同じぐらい大切に思っている。

「フォーレストくん。彼女の腕は信用できないのかい? 妹さんの方も回復魔法の使い手だろ? 二人を連れて行った方が勝率はぐっとあがるんじゃないかな?」

 確かにオックスさんの言う通りなのだが、出来れば巻き込みたくない。

「そ、それは……フィアの槍の腕も、ロロアの回復魔法も信頼していますが、そういうことでは……」

「あら? それなら問題ないわよね?」

「シリアさん、そもそもその依頼って個人で受けれるものなのですか」

 はっ!? 確かに、この手の依頼はパーティーでしか受けられない事が多い!?

「……はぁ~、ロロアちゃんの言う通りですね。この依頼は個人で受ける場合はゴールドランク以上となります」

「そんな……」

「フォーレストくん。村に被害が及ぶことを防ぐためにも、ここはパーティーで受けた方が良いのじゃないかな?」

 もちろん二人がいてくれた方が切れる手札は多くなるし、勝つ可能性もあがるのだが、やはりようやく出来た大事な仲間を、危険な依頼に巻き込みたくなかった。

 だけど、そんなオレの気持ちは、二人の次の言葉で吹き飛ばされた。

「もう! 私たち仲間じゃないの!? す、少なくとも私はフォーレストの事を信頼できる仲間だと思っているし、困った事があったら遠慮せずに頼るわ!」

「お姉ちゃんの言う通りです! だから、フォーレストさんも私たちを頼ってください! その……私はちょっと頼りないかもしれないけど、でも……でも、頑張りますから!」

「二人とも……本当に、本当にいいのか? ロックオーガ以上に危険かもしれないんだぞ?」

 ロックオーガは、その驚異的な防御力から倒す事が出来ないという理由でBランクに認定された魔物だ。
 それに対してサラマンダーは、炎を纏い強固な鱗を持つ防御力もさることながら、その炎を用いた攻撃力と攻撃範囲の広さなどからBランク認定された魔物だったはずだ。

 オレたちが戦う場合、明らかにサラマンダーの方が危険度は上だろう。

「だからなに? それでもフォーレストは戦うんでしょ?」

「フォーレストさんの攻撃が決まれば絶対に勝てます! それに、怪我なら私の回復魔法で治してみせますから!」

 冒険者になって、最悪なことが立て続けに起こっていたのに……今は本当に二人との出会いに感謝しかないな。

「二人とも……本当に良いのか?」

 オレは笑顔で頷く二人に「ありがとう」と伝え、その依頼をパーティーとして受ける事に決めたのだった。
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