微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸

文字の大きさ
上 下
28 / 54

【第28話:馬車の中の緊張】

しおりを挟む
 依頼を受けたその日のうちに旅の準備を済ませると、オレの故郷の村『デルナーク』へと向けて旅立った。
 普段から依頼である程度の遠出はしていたので、準備はすぐに済ませる事が出来たのが幸いだった。

 今回の正式な依頼の内容は、サラマンダーの討伐ではなく、新しく出来たダンジョンの調査とダンジョンから溢れ出してきた魔物の掃討という事になっている。
 ただ、ダンジョンの調査と言っても中に入って探索するのではなく、周辺状況の確認といった内容で、しかも今回は衛兵が全滅したということもあって、実際にはサラマンダーの討伐さえ達成すれば、依頼達成とみなすという事になっていた。

 これは衛兵隊長の一人であるオックスさんの口添えで、条件を緩和して貰った形だ。
 本当にオックスさんには頭が上がらないな。

「フォーレストさん、馬車を出して貰えて良かったですね」

 デルナークの村までは王都から乗合馬車が出ているのだが、一日に数えるほどしか出ておらず、今日の便に乗車するのは難しかったはずだ。
 それを見越したオックスさんが、せめてこれぐらいは援助させてくれと言って、自分の隊が所持している馬車を貸してくれたのだ。

「オックスさんには後でお礼にいかないとだな」

「そうね。私、なんとなくあの人好きじゃなかったんだけど、馬車については感謝しないとね」

「え? どうしてだ?」

「ん~、だって、自分の隊が出せないのはわかるけど、だからって衛兵の一部隊が失敗したような危険な依頼を、フォーレストなら絶対に受けるってわかってて故郷の村の話とかしたわけでしょ?」

 まぁ確かに、オレが絶対に断らないのはわかってて言った節があるが、もしあの場で断って後で知る事になっていれば、きっと一生後悔する事になっていたはずだ。
 そう考えれば、感謝こそすれ、責める理由にはならない。

 その辺りをフィアに話すと「わかってはいるんだけどね」と言って、しぶしぶ納得したようだった。

「それにしてもフォーレストさんって、馬車の操縦上手いですね」

 今回、さすがに御者までは用意して貰っていないので、馬車はオレが運転している。

「将来冒険者になったら必要だろうと思ってな。村にいた頃に、馬の扱いと馬車の操縦の仕方を、近所に住む行商を行っているおじさんに教えてもらったんだ」

「へぇ~。それで運転できるのね。私は馬には乗れるけど、馬車は運転したことがないわ」

「わ、私は馬にも乗れない、です……」

 ロロアは馬に乗れないのが恥ずかしいのか、ちょっと下を向いて頬をほんのりと赤らめていた。

「ははは。そのうちパーティー用の馬車でも買おうか? そうすればロロアが馬に乗れなくても問題ないだろ?」

「駄目よ。そんな簡単に言って……。フォーレストはもう少しお金を大切に扱いなさい」

 うっ……確かに最近大金が入って少し懐がゆるくなっているかもしれないな。
 馬車なんてそんな簡単に買える物じゃないのに、ちょっと意識して金銭感覚を元に戻さないと不味そうだ……。

「そ、そうだな。もっとよく考えるようにするよ……」

「わかればよろしい! それより、今日泊まる街にそろそろ着くはずよ」

 オレの村までは馬車なら一日なのだが、さすがに出発が遅かったので、今日は途中の街に泊まり、明日の朝、日が昇る前に出発する予定だった。

「お。本当だ。見えてきたな」

 その後オレたちは、問題なく街に到着し、宿でぐっすりと眠ったのだった。

 全ては明日の戦いにかかっている……。

 ◆

 翌早朝、宿で簡単な食事をとると、すぐに馬車に乗って街を出た。
 ここからだと恐らく昼前には村に着くので、そこで状況を確認し、場合によってはそのまま討伐に向かうつもりだ。

「フォーレストの村ってどんなところなのか楽しみね~」

「オレの村は、たぶん小さな街って感じだから、そこまで珍しいものではないぞ?」

 村の中には、国にほとんど頼らず、自給自足に近い形で生活して独自の文化を持つところもあると聞くが、うちの村は規模が結構大きいので、街とほとんど変わらないのではないかと思っている。

 国から衛兵も派遣されてきているし、冒険者ギルドの出張所もあり、何名かの冒険者も生活している。

 その辺りは既に説明していたと思うのだが。

「もう、そういう意味じゃないわよ。フォーレストが育った場所なんだから、普通に興味わくじゃない」

「フォーレストさんって、妹さんがいるんですよね? 会ってみたいなぁ♪」

「そういうものか?」

 まぁたしかに、二人の両親や兄にも出来る事ならご挨拶とかしておきたかったな。

 二人の両親は幼い頃に亡くなっていると聞いている。
 三人兄妹だとも聞いているので、フィアとロロアの姉妹を除いて、皆亡くなっているということだ。

 時間があるようなら、父さんと母さんにも紹介しておくか……。

「そういうものよ!」

「ちゃんと紹介してくださいね!」

「なんかあらたまって紹介とか言われると、ちょっと恥ずかしくなってくるな……」

 オレがそう呟くと、フィアとロロアが一瞬目を見開き、急にそっぽを向いた。

「なっ!? ば、ばかっ! フォーレストが馬鹿な事言うから、変に意識しちゃったじゃない!?」

「ぁぅぅ……」

「えっ!? あっ、いや、オレも別にそういうつもりで言ったんじゃ!?」

 もう廃れてきている風習だが、この世界では、付き合い始める前に相手を家に招いて紹介するという風習がある。
 オレもそうだが、恐らく二人ともそれを思い出したのだろう……。

 ただ、こんな会話を続けているのも、これからの戦いに皆緊張しているからだ。

 オレたちは表面上は普段通りの会話を続けながらも、刻一刻と近づくサラマンダーとの戦いを思い、緊張を高めていったのだった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

ゴミスキル【スコップ】が本当はチート級でした~無能だからと生き埋めにされたけど、どんな物でも発掘できる力でカフェを経営しながら敵を撃退する~

名無し
ファンタジー
鉱山で大きな宝石を掘り当てた主人公のセインは、仲間たちから用済みにされた挙句、生き埋めにされてしまう。なんとか脱出したところでモンスターに襲われて死にかけるが、隠居していた司祭様に助けられ、外れだと思われていたスキル【スコップ】にどんな物でも発掘できる効果があると知る。それから様々なものを発掘するうちにカフェを経営することになり、スキルで掘り出した個性的な仲間たちとともに、店を潰そうとしてくる元仲間たちを撃退していく。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

婚約破棄されて追放されたけど、守護竜に愛されてます 〜ドラゴンの花嫁〜

有賀冬馬
恋愛
マイアーレ王女は非常に優秀だが、ちょっとばかり内向的な性格をしている。そして、活発な妹がいるせいで、自己評価がとても低い。 この物語は、彼女が国を追放される所から始まる。 彼女はこの国の守護竜と呼ばれるドラゴンに見初められ、ドラゴンの花嫁として王宮に復帰を遂げる……。

処理中です...