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偽装婚約?
しおりを挟む話がまとまったところで、兄が紅茶を持って戻って来たので、今決めたことを伝える。
本当に婚約するのではなく、身を守るための方便だときちんと伝えて。
「…………………………………話はわかった。
確かに虫除けに婚約者がいると言うのは役に立つだろう」
長い沈黙の後、渋々と言った感じで、兄が頷く。
「たが!虫除けの偽装だとわかっていても!
キャシーに婚約者ができるのは………ツライ……」
「アル……お前がどれだけキャスティーヌのことを愛おしく思っていても、そう言った意味での愛おしさではないだろう?
いずれは誰かに嫁がなければいけないのだから」」
そんなことわかっている!とリズヴァーンを睨みつける兄。
「だが、例え婚約しようとも、将来結婚しようとも、お前がキャスティーヌの兄であることは変わりないだろ」
うん、まあね、親兄弟の縁は切れないもんね。
普通に生きていくなら。
兄は無言で何かを考えて、考えて、考えて、はっ!と顔を上げた。
「そうか、変な奴にキャシーを取られると、遠くに連れて行かれて毎日会えなくなったり、下手するとなかなか会えなくなったりするかもしれない。
でも相手がリズなら、毎日だって会うことができる!
なんなら僕も一緒に暮らすこともできるか」
……いやいやいやいや、お兄さん!
婚約話は偽装だし。
それにゆくゆく誰かと結婚したとして、その相手が誰であっても、嫁に行った妹と毎日会うなんて無いから。
しかも一緒に暮らす?
ありえるわけないから!!
「………いいかもな、それ」
???なんですと?
リズヴァーンさんあなた今なんておっしゃいました?
もしかして、俺と婚約したらもれなく兄がついてくるから、間違えて結婚しても大丈夫とか思っていないか?
お前の中では【キャスティーヌとの婚約】じゃなくて【アルバートと一緒にいる手段】なんじゃないのか?
え?このままではややこしいことになるんじゃないの?
この偽装婚約受けない方がよくないか?
あ、ダメだ、気分が悪くなって来た。
「お兄様、私少しばかり気分が悪くなって来ましたから、休みたいのですが」
「大丈夫かい、キャシー。
僕のことは気にせず休みなさい。
眠るまで頭を撫でてあげよう」
いらんわ!
「いえ、一人にしていただきたいです。
それに今の話をお父様やお母様に上手く伝えて欲しいのですけど」
「そうだね、キャシーが辛い目にあったことは伏せて、身の安全のためにと言うことを伝えないといけないね。
そちらは任せてくれ。
キャシーはゆっくりお休み」
「ありがとう、お兄様。
リズヴァーンもありがとう」
二人に礼を告げる。
もう、頭が痛くなるし面倒だしで、二人に丸投げすることにする。
頭のいい二人だから、上手いことやってくれるだろう。
もう、マジに頭痛いから。
兄が部屋を出て両親の元へ向かう。
リズヴァーンも部屋を出ようと入り口まで行き、そこで立ち止まると、振り返って告げてきた。
「俺は偽装でなくてもいいんだけどね」
…………リズヴァーンさんや、それは一体どう言う意味なのですかな?
俺の頭はショート寸前なのです。
本日の営業は終了しました。
今の言葉は聞かなかったことにさせていただきます。
おやすみなさい。
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