Six Sisters:親父の知人女性と娘に挨拶してきて、と言われ渋々引き受けたが斜め上の結果をもたらした

鎔ゆう

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見た目に反して純情娘

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 佐世保駅みなと口から横断歩道を渡り海側へ進む。広場に出ると右側にはハーバーテラスSASEBO迎賓館とか言う建物。そして公園のような場所と思ったら、新みなと暫定公園とか言うらしい。
 目の前には港湾があり船も停泊してるようだ。意外にも風光明媚な感じで悪くない。
 海に沿って歩くとすぐに大型の商業施設があるな。
 何があるのか聞こうと思っても我関せずでさっさと歩くたぶん妹。茶髪クソヤンキー決定だな。仲良くなれそうにない。まあ、その分、間違いも無くていいってことか。

 先へ進むと商業施設の名称、たぶんSASEBO五番街なんだろう。一応判明した。スタバもあるのか。どこにでもあるな。入る気無いけど。
 商業施設を通り過ぎると広い通りに出る。やっぱり空は広い。
 横断歩道を渡り立体駐車場の建物を過ぎて、また横断歩道を渡ると右側には大きめのマンション。左側には住宅やアパートもあるようだ。

 それにしても知らん顔で先へ進む、たぶん妹。マジで愛想の欠片もねえよ。一度も振り返ることすら無いんだからな。はぐれてたらどうすんだよ。こっちは知らない土地に来てるってのに。

 道路沿いに飲食店やよく分からん店多数。交差点に差し掛かると横断歩道を渡り、今度は左折して進むが正面遠くに山が見える。
 さらに進むと四階建ての建物があり、そこの角にある店に入ってったよ。
 看板を見ると「佐世保バーガー」とか書いてある。ここか。
 上の階は住居になってるようだ。

 店の外で上を見上げていたら、店の中からたぶん妹が顔を出して「何してんの?」だとさ。
 終始無言で店に入られてもな。なんか取っ付き辛いし、愛想は無いし可愛げも無いし。さすがヤンキーとでも言えばいいのか。親も同じか?
 なんか泊まるの嫌になってきた。どこか近隣にホテルとか無いのか?

「ここなんだけど」

 路上で考え込んでたら催促された。
 仕方ない。気は進まないが挨拶だけして、さっさと撤退しよう。
 店に入ると正面奥にカウンターがあって両側に客席があるようで、少々の客がハンバーガーを食いながら談笑してるようだ。観光客だろうなあ。
 カウンター前に、たぶん妹が居て、カウンターの奥に女性がひとり。他に若い子がふたり。従業員か?
 已む無く奥に進むと女性が挨拶してきた。

「公毅さんの息子さんばいね? はじめまして。酒井浩子と娘ん麻帆たい」
「はじめまして。笹井琢真です」
「遠うからわざわざごめんね。本当なら公毅さんが挨拶してくるるとよかばってん」
「忙しいみたいなので」

 丁度お客さんも切れて、少し時間が取れるってことで、カウンターから出てくる浩子さんだ
 空いてる席に座ってと促され、着席すると「自慢のハンバーガー食べる?」とか言われたが、あいにく腹は減ってない。空港で食ってきたからな。
 丁重にお断りするが手土産があったんだ。バッグから取り出して手渡す。

「あの、これ」
「ああ、気ば使わんでも」
「一応親父から渡してと頼まれたんで」
「ありがとうね」

 やっぱり方言はあるんだな。博多と似たような感じがするけど。
 でだ、たぶん妹の方はカウンターに寄り掛かって、こっち見てるんだよな。

「麻帆。なんばしよっと。こっちに来んね」

 躊躇してる感じだ。別に来なくていい。どう見ても好かれてる感じも無いし、歓迎されてる感じも無い。浩子さんの方は、まあ接客業やってるからか、愛想を欠かさない部分はあるようだ。だが、娘はなあ。あれじゃ接客業は無理だろ。
 それでも母親までヤンキーじゃなくて良かった。まともそうだし。

「もう、照れとーとやけん」
「はい?」

 照れてる? そうは見えんぞ。

「ごめんなさいね。素直やなかけん」

 娘は放置で最近の親父の様子を聞かれた。それなりに元気でやってると。養育費の支払いで昼夜問わず働いているとも。それを聞いた浩子さん、すごい恐縮して「無理に払わんでも」とか「収入は充分あるけん」だとかで。
 それと浩子さんの身の上話も少々。
 なんでも五年後には迎えに来てくれると、期待して待ってるんだとか。同じじゃねえか、小山内さんのところと。これ、暴露したらどうなるんだ? 無事じゃ済まないんだろうなあ。

「今日は泊まっていくんやなあ?」
「あ、それなんですが」

 近所にホテルは無いか尋ねると。

「泊まればよかやなかと」
「いや、なんか悪いんで」

 と言いつつ娘の方に自然に視線が行った。それに気付いたのか。

「娘んことは気にせんでよかけん。ほんなこて照れとーだけやけん」
「だったら余計に悪いですよ。ホテルに泊まるんで」

 ちょっと困惑気味だな。たぶん妹を見ると、こっちも困った感じだし。
 だが、ヤンキーと仲良くなる気は無い。ついでに観光も少し楽しみたいと言ってみた。

「やったら娘と一緒にいけばよかと」
「いや、迷惑そうなんで」
「そがんことなかけん。案内させるけんね」

 譲らん。不愛想なたぶん妹と行動しても俺が楽しめないし、なんかイラつくからひとりがいい。
 暫しのやり取りをすると「頑固ばい」とか言われた。頑固って言うか、ヤンキーはごめん被るってだけだ。
 時間は午後三時を回り仮に一泊するなら、どこかホテルのチェックインも考えないと。なんて思ってたら「麻帆。部屋に案内しちゃって」とか言ってるし。だから、泊まる気無いんだってば。

「こっちだから」

 浩子さんも譲らん。たぶん妹がカウンターから離れて、店の出口に向かって手招きしてる。浩子さん曰く、無駄な金は使わせないから、だそうだ。親父にも頼まれてるとか。いずれ家族になるのだから遠慮しなくていいと。
 ならない。家族には。その際には修羅場が待ち構え、親父はきっと刺されてあの世行き。だから下手に世話にならない方がいいんだが。
 仕方ない。あとでまた交渉するしかない。

 たぶん妹が店の外で待ってるから、仕方なくそっちに向かうと「この上だから」だそうで。
 住居兼店舗ビルなんだな。
 店の隣に住居用の出入り口があって、そこに入って行く、たぶん妹。面倒だ。ヤンキーでいいや。
 階段室になってて上に行くヤンキー。そのあとを付いて行くんだが。

「嫌ってない」
「は?」
「だから、嫌ってない。なんかすごい避けられてる」

 想像してた兄の雰囲気と違い妙にイケメンで緊張したのと、マジで照れてただけだと言ってる。
 母親と娘を置いて東京に帰る程度の親父。だからその息子なんて大したこと無いと思っていたらしい。だが実物を見て面食らったとかで。
 三階に着くと「こっち」とか言ってる。
 手前にひとつ、奥にひとつ玄関があり、奥の方が自分たちの住居だそうだ。

 玄関を開けて「入って」と。
 狭い玄関には靴が何足かあり右側にシューズボックス。廊下の突き当りに扉がひとつ。廊下の左側に扉がみっつ。右側にふたつ。

「右側はあたしの部屋」

 俺が泊まる部屋は左側の居間側になるそうだ。窓が無い和室になるから、あまりいい環境じゃ無いけど、だとか。ただ、居間と繋がっているから、襖を開ければ外光は入るらしい。

「荷物。部屋に置いておけばいい」

 和室に案内され荷物と言っても、背中に背負ったバッグひとつ。とりあえず置くと。

「東京に彼女居るの?」
「は?」
「イケメンだから、居るよね」

 俯いて視線だけをこっちに寄越してる。
 まさか、そう思いたくない自分が居て、でも青森の妹の行動を思い起こす。こいつも血の繋がりはある。だが、まったく接点が無かったから兄妹と言われても意識できない。

「居ると困ることでもあるのか?」
「たぶん、無いと思うけど」

 妹として刷り込まれていない相手。向こうもそれは同じで、兄として刷り込まれていない。つまりは単なる異性。
 兄妹としての関係性も一緒に生活して意識して行くものかもしれん。
 でだ、俺を見据えて。

「居るんだ。彼女」

 居ない。正直にそう言うとヤバそうだ。ここはこれですっ呆けるのがベスト。

「まあ、一応」
「そっか」
「居ない方が良かったのか?」

 そうらしい。
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