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新婚旅行編
仲直り大作戦、始動!
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ジルは順調に回復し、今では違和感なく肩をぐるぐると回せるまでになった。肩甲骨あたりに傷跡が残ったけれど、それ以外は皮がほんの少し突っ張る程度。
何となく、前回羽を落とした時と比べて治りも早い気もする。きっとミゲルの薬とポルカ達の介助の賜物だろう。
普通なら、飛び跳ねて喜びたいポルカだったが……今は足に鉛でも括り付けられたような気持ちだった。
「ほ、本当にやっちゃうのかい……?」
「勿論ですよ、ルカさん。その為に念入りに計画を練ったんですから!」
サリアが鼻息荒く、小さく折りたたんだ計画書を広げて見せる。『家族仲直り大作戦!』と書かれたその紙には、ミラー家の息子達とジルに仲直りして貰うためにする事が番号を振って細かく書き連ねてある。
――計画はこうだ。
①サリアが手首をひねる。
②それを治す為の薬草を探しに、ミゲルが引率となってジャン、ガルラ、ジル、ポルカを連れて森へ向かう。
➂頃合いを見て、ポルカがはぐれて迷ったことにする。(※ポルカは指定の場所で待機)
➃皆で協力してポルカを探す。
⑤頃合いを見て、ポルカが待機する場所へミゲルが誘導。ポルカを発見すれば、計画は終了。
『仲直り大作戦』なんて御大層な名前をつけてはいるけれど、ようは大変な体験を一緒に体験して、心の距離を近くするのが目的だ。この一回で仲直りする、というよりは、少しでも溝が埋まれば万々歳。
ちなみに、兄や父を丸め込むのは、この中で一番口の上手いミゲルの役目となってしまった。
「ううううう僕がやるのかぁ……っ」
「ルカさんの為でしょ。腹を括りなさい腹を! 始める前から何怖じ気づいてんの」
「だってバレたら兄さん達に半殺しにされるの確定だよ!? 怖いに決まってるだろ!」
「バレなきゃいいのよ、バレなきゃ」
……確かに、嘘をついて振り回したのがバレたら大変だろう。ポルカやサリアもグルとはいえ、恐らく一番鉄槌を食らうのは二人を(というより暴走する嫁サリアを)止められなかったミゲルに違いない。
「大丈夫、半殺しにされたらちゃんと手当してあげるから」
「えええええん無慈悲! 僕の奥さんが無慈悲だよぉ!!」
「あっ、そ、それじゃ、アタシが頑張って三人を言いくるめるから――」
「「それは絶対無理」」
「なんでだい!?」
真顔で末息子とその嫁から止められてしまった。何でも、ポルカの嘘は、ジルには特にバレやすいので駄目らしい。何とも納得できない。
「とにかく! ルカさんは、ミゲルが合図を送ったら茂みに隠れつつそっと逸れるふりするだけでいいから!」
はぐれた理由は『薬草詰みに気を取られた』だ。
そりゃあ一生懸命地面とにらめっこしていたら皆が居なくなったといえば嘘っぽくはないけれど、そんなんで信じてくれるのか。それこそポルカは心配だ。
「そんな上手いこといくかねェ」
「ルカさん、最初から上手く進める事を目的にしちゃ駄目ですよ。重要なのは、あのへそ曲がり共に『同じ体験を共有させること』なんです」
「うーん。でも、アタシがはぐれた所で……みんな焦ったりするもんかい?」
ミゲルもそうだが、ジャンやガルラだってしっかりしてて落ち着いた子達だ。ポルカがいなくなっても、割とサクサク探してサクサク見つけてくるような気がする。
ジルは――今のジルなら、きっと物凄く焦るだろうから、効果は抜群かもしれない。
だけど、ジルだって一時は森で狩人をしていた男だ。ポルカの居場所くらいパパッと見つけてしまうんじゃないだろうか。
そう言って首をひねるポルカを、義娘が生温かい目で見ていたのだが……当のポルカは知る由もなかった。
そうして、ついに決行の朝。
「あぁああだあぁあぁッ!! いだだだだだぁあぁあぁあーーーーーーッ!!!!」
嫁サリアの絶叫が、積み木のお薬屋に響きわたったという訳である。
何となく、前回羽を落とした時と比べて治りも早い気もする。きっとミゲルの薬とポルカ達の介助の賜物だろう。
普通なら、飛び跳ねて喜びたいポルカだったが……今は足に鉛でも括り付けられたような気持ちだった。
「ほ、本当にやっちゃうのかい……?」
「勿論ですよ、ルカさん。その為に念入りに計画を練ったんですから!」
サリアが鼻息荒く、小さく折りたたんだ計画書を広げて見せる。『家族仲直り大作戦!』と書かれたその紙には、ミラー家の息子達とジルに仲直りして貰うためにする事が番号を振って細かく書き連ねてある。
――計画はこうだ。
①サリアが手首をひねる。
②それを治す為の薬草を探しに、ミゲルが引率となってジャン、ガルラ、ジル、ポルカを連れて森へ向かう。
➂頃合いを見て、ポルカがはぐれて迷ったことにする。(※ポルカは指定の場所で待機)
➃皆で協力してポルカを探す。
⑤頃合いを見て、ポルカが待機する場所へミゲルが誘導。ポルカを発見すれば、計画は終了。
『仲直り大作戦』なんて御大層な名前をつけてはいるけれど、ようは大変な体験を一緒に体験して、心の距離を近くするのが目的だ。この一回で仲直りする、というよりは、少しでも溝が埋まれば万々歳。
ちなみに、兄や父を丸め込むのは、この中で一番口の上手いミゲルの役目となってしまった。
「ううううう僕がやるのかぁ……っ」
「ルカさんの為でしょ。腹を括りなさい腹を! 始める前から何怖じ気づいてんの」
「だってバレたら兄さん達に半殺しにされるの確定だよ!? 怖いに決まってるだろ!」
「バレなきゃいいのよ、バレなきゃ」
……確かに、嘘をついて振り回したのがバレたら大変だろう。ポルカやサリアもグルとはいえ、恐らく一番鉄槌を食らうのは二人を(というより暴走する嫁サリアを)止められなかったミゲルに違いない。
「大丈夫、半殺しにされたらちゃんと手当してあげるから」
「えええええん無慈悲! 僕の奥さんが無慈悲だよぉ!!」
「あっ、そ、それじゃ、アタシが頑張って三人を言いくるめるから――」
「「それは絶対無理」」
「なんでだい!?」
真顔で末息子とその嫁から止められてしまった。何でも、ポルカの嘘は、ジルには特にバレやすいので駄目らしい。何とも納得できない。
「とにかく! ルカさんは、ミゲルが合図を送ったら茂みに隠れつつそっと逸れるふりするだけでいいから!」
はぐれた理由は『薬草詰みに気を取られた』だ。
そりゃあ一生懸命地面とにらめっこしていたら皆が居なくなったといえば嘘っぽくはないけれど、そんなんで信じてくれるのか。それこそポルカは心配だ。
「そんな上手いこといくかねェ」
「ルカさん、最初から上手く進める事を目的にしちゃ駄目ですよ。重要なのは、あのへそ曲がり共に『同じ体験を共有させること』なんです」
「うーん。でも、アタシがはぐれた所で……みんな焦ったりするもんかい?」
ミゲルもそうだが、ジャンやガルラだってしっかりしてて落ち着いた子達だ。ポルカがいなくなっても、割とサクサク探してサクサク見つけてくるような気がする。
ジルは――今のジルなら、きっと物凄く焦るだろうから、効果は抜群かもしれない。
だけど、ジルだって一時は森で狩人をしていた男だ。ポルカの居場所くらいパパッと見つけてしまうんじゃないだろうか。
そう言って首をひねるポルカを、義娘が生温かい目で見ていたのだが……当のポルカは知る由もなかった。
そうして、ついに決行の朝。
「あぁああだあぁあぁッ!! いだだだだだぁあぁあぁあーーーーーーッ!!!!」
嫁サリアの絶叫が、積み木のお薬屋に響きわたったという訳である。
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