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新婚旅行編

朝焼け色の護り石

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 迫りくる森の木々、そして地面!
 思わず最愛の夫の名前を叫んだその時だった。

「……へェッ!?」

 ポルカの首元が眩く輝き始める。
 少し前、ジルから貰った首輪――もとい、朝焼け色の石がついた細身の首飾りだ。朝焼け色の輝きが瞬く間にポルカの体を包み込むと、風に漂うシャボン玉のようにゆっくり、ゆっくりと浮遊しながら森の中へ落ちてゆく。

 ――ああ、これが、ジルの……“魔力”?

 散々ジルに教えてもらっても、ついぞ感じ取れなかった“魔力”。
 朝焼け色の光は、触れるとじんわり温かく、まるでジルの逞しい胸に抱き込まれている時のような安心感があった。

「ジル……」

 朱色の宝石をそっと握り込んだ。すると、ポルカの想いに応えるように、朝焼け色の光は益々輝きポルカを覆い尽くす。
 ポルカは、さっきまでの慌てぶりが嘘のようにゆったりと息をつく。

 ――ああ、もう大丈夫だ。だって、ジルが……ジルの“魔力”が護ってくれているんだもん。

 そうして、ポルカは久しぶりの地上に舞い降りた。
 朝焼け色のシャボン玉は、森の地面にポルカを降ろすと『パシャン!』と光の粒になり、散っていく。

「あ……っ!」

 首飾りは光を失い、いつもと変わらない朱色の石のついた細身の首飾りに戻ってしまった。ポルカを護って魔力を使い果たしたのか、それとも必要がなくなったから光るのを止めただけか……愛おしい朝焼け色の光が消える。
 その途端に、ポルカの心はまた不安と焦りで溢れかえりそうになった。

 ――駄目だ駄目だ! こういう時こそしっかりするんだよ、ポルカ!

 ポルカは自分のほっぺたをバチン! と叩いて気合を入れ直すと、息を吐き出してからゆっくり辺りを見回した。

「ウーン……ここ、どこの森だろう?」

 生憎、下界で生きていた頃は地元から一歩も外へ出たことがなかったポルカである。どこ、と言ったところで、知ってる森は近所の……ジルの羽を十数年隠していた、あの森くらいしかない。

「……うん? あのデッカい木は……」

 ふと、ザラザラした太い幹が目に止まった。ポルカが両の腕を広げても届かない立派な木は、たくさんの枝と葉を茂らせている。そして、その太い幹をくり抜くようにポッカリと空いた虚。

「こ、これ……この木、って、もしかして!!」

 ポルカは一目散に虚へと飛び込んだ。降り積もった枯れ葉を掻き分け、土埃を払い、小枝をどかして出てきたのは――虫食いだらけで薄汚れた灰色の布。そして、獣よけや虫よけの残骸。

 ――何てこった! こりゃたまげた!

 忘れもしない。この布は、ポルカがかつて恋した男の大事なモノを包んでいた物。虫よけや獣よけは、それを護るために置いておいた物。そう、まさしく、此処は、この場所は……

「ここは……アタシの故郷にある森じゃあないか!?」
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