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ポルカと懐かしの鏡⑤
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じわじわ、じわじわとゆっくり涙がせりあがってくる。駄目だ、このままでは泣いてしまう。只でさえ報復相手として嫌われているというのに、引っぱたいた上に泣き出すなんて何と面倒くさい阿婆擦れ女か!
せめて泣いている顔を見せまいとポルカが両目を覆おうとした、その時。
「……ポルカ」
「へ?」
目尻に柔らかなものが当たり、ちゅっと音を立てて涙を吸い取っていった。その一回では終わらず、二度、三度、四度と押し付けては涙を吸い取ってゆく。
時たま間から熱い吐息を漏らす、柔らかなソレ。
「へっ! え、じじじじじジル……!?」
目尻にキスをされている。
その事に気付いて吃驚したあまり、ポルカの涙は引っ込んだ。引っ込んだが、何故だかジルは止まらない。
訳も分からず真っ赤になって硬直したポルカをよそに、彼の唇は目尻から瞼、鼻筋、頬を通って、ついにポルカの唇に辿り着いてしまった。
「ふぁっ………」
柔らかく、柔らかく下唇を食まれる。ふにふにと唇同士が触れ合い、時折『ちゅ』という音をたてて吸い付かれればもうたまらなかった。
元々、ジルに心底惚れまくっているポルカの頭は沸きに沸いた。ついでに言うと腰も震えて砕ける寸前である。
……しかし、それでもジルの猛攻は終わらない。
「ぁっン……んん、ふっぁ……ジル……ッ」
「ん、ちゅ……は、……」
二人分の体重を受け止めたベッドが、ギシリと大きな音をたてる。ジルはひたすら柔らかなキスを繰り返されながら、ポルカはますます蕩けていった。
舌も入れない、普段と比べると柔らかく軽いキスなのに、ポルカの腰はゾクゾクと震え……腹の奥がキュンキュンと疼き始める。
――チクショウ、これが惚れた弱み……!
自分の体の現金っぷりが心底嫌になってきたポルカの耳元で、固くて低い声が響く。
「……悪かった」
「……へぁッ!?」
「お前が、逃げるかと思って。……焦っちまった」
ポルカが目を見開けば、鼻先あたりに相変わらずの顰めっ面。奥歯を食い締めたその顔は何とも苦み走って見える。
……けれど、朝焼け色の瞳は、何故だが不安げに揺れていた。
――不安? 何で?……アタシが、家族の元に帰りたそうに見えたから?
「何言ってんだい。帰るなんてそもそも無理だろ」
他でもないジルが、ポルカにキッパリと言ったではないか。「お前はもう帰れない」「帰る場所もない」と。
まぁそれについては別にいい。今更こんな若返った姿で帰っても居場所がないのはきっと本当だ。
「だ、大体アタシは婆になって老衰で死んだんだよ。言うなりゃ寿命さね。あんなに長生きさせて貰ったのに、生き返るとかバチが当たるよぅ」
せめて泣いている顔を見せまいとポルカが両目を覆おうとした、その時。
「……ポルカ」
「へ?」
目尻に柔らかなものが当たり、ちゅっと音を立てて涙を吸い取っていった。その一回では終わらず、二度、三度、四度と押し付けては涙を吸い取ってゆく。
時たま間から熱い吐息を漏らす、柔らかなソレ。
「へっ! え、じじじじじジル……!?」
目尻にキスをされている。
その事に気付いて吃驚したあまり、ポルカの涙は引っ込んだ。引っ込んだが、何故だかジルは止まらない。
訳も分からず真っ赤になって硬直したポルカをよそに、彼の唇は目尻から瞼、鼻筋、頬を通って、ついにポルカの唇に辿り着いてしまった。
「ふぁっ………」
柔らかく、柔らかく下唇を食まれる。ふにふにと唇同士が触れ合い、時折『ちゅ』という音をたてて吸い付かれればもうたまらなかった。
元々、ジルに心底惚れまくっているポルカの頭は沸きに沸いた。ついでに言うと腰も震えて砕ける寸前である。
……しかし、それでもジルの猛攻は終わらない。
「ぁっン……んん、ふっぁ……ジル……ッ」
「ん、ちゅ……は、……」
二人分の体重を受け止めたベッドが、ギシリと大きな音をたてる。ジルはひたすら柔らかなキスを繰り返されながら、ポルカはますます蕩けていった。
舌も入れない、普段と比べると柔らかく軽いキスなのに、ポルカの腰はゾクゾクと震え……腹の奥がキュンキュンと疼き始める。
――チクショウ、これが惚れた弱み……!
自分の体の現金っぷりが心底嫌になってきたポルカの耳元で、固くて低い声が響く。
「……悪かった」
「……へぁッ!?」
「お前が、逃げるかと思って。……焦っちまった」
ポルカが目を見開けば、鼻先あたりに相変わらずの顰めっ面。奥歯を食い締めたその顔は何とも苦み走って見える。
……けれど、朝焼け色の瞳は、何故だが不安げに揺れていた。
――不安? 何で?……アタシが、家族の元に帰りたそうに見えたから?
「何言ってんだい。帰るなんてそもそも無理だろ」
他でもないジルが、ポルカにキッパリと言ったではないか。「お前はもう帰れない」「帰る場所もない」と。
まぁそれについては別にいい。今更こんな若返った姿で帰っても居場所がないのはきっと本当だ。
「だ、大体アタシは婆になって老衰で死んだんだよ。言うなりゃ寿命さね。あんなに長生きさせて貰ったのに、生き返るとかバチが当たるよぅ」
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