18 / 154
〈閑話〉同僚サムの目撃談①
しおりを挟む
街の平和を守る警ら隊。その一員であるサムはある日、物凄く珍しい光景に遭遇した。
「……ジルベルト? こんな店で何してんだよ」
そこは妖精の国でも指折りの宝飾店『虹の宝石箱』。国家予算くらいの首飾りからお手頃価格の指輪まで、幅広い品揃えが自慢のお店である。かく言うサムも、今年交際五年目を迎えた可愛い彼女へ指輪を見繕いにやってきたのだ。
そんな彼が、色とりどりの宝飾品が並ぶきらびやかな場所で――物凄く似合わない男を見かけた。
ジルベルト・ライファン。
この町の警ら隊で、最近とみに頭角を現し始めた妖精だ。大柄で筋肉質な体はそこにいるだけで威圧感が半端ない。魔法と体術、剣術を満遍なくこなせる男で、短く刈った赤毛、眼光鋭い朱色の瞳が目印。
良く言えば精悍、悪く言えば強面なサムの同僚である。
因みに十数年間、外界で行方不明になっていた。やっと戻ってきたと思ったらつい最近、別居中だった奥さんと復縁したらしい。
いつの間に結婚していたのだ、自称親友に報告の一つもないとは何とも薄情な奴である。結婚式に呼んでやらないぞ。
……まぁ、それはさておき。
「ははぁん? ジル、お前さては早速奥さんと喧嘩でもしたか。それでお詫びの品を探しに来たんだろ」
「あ゛ぁ?……そんなんじゃねぇよ」
苦り切った顔で睨みつけてくるのはお約束だ。この強面で誤解されがちだが、こういう顔をする時は大抵……。
――こんな時は、おちょくって遊ぶにかぎる。
サムは、見た目や口調によらず割と純朴な同僚相手にニヤーっと笑った。
「なになに、ほほぅ。チョーカーにネックレスか。石はもう決まってんだな」
「五月蝿えぞサム!! 見んじゃねぇ触んじゃねぇ!!」
ざっと見た所、出された品は割と値が張る物ばかり。それこそ、ちょっとした贈り物というよりは、記念日に奮発して選ぶようなものだ。品揃えからしてジルベルトの心意気が伺える。強面で女の影すら見当たらなかった男が……と思うと何とも感慨深い。
さらに何と言っても目を引くのは、アクセサリーそれぞれに誂えてある石だ。大小様々な石は、どれも鮮やかな朱色ばかり。言わずもがな、ジルベルトの瞳の色である。しかも、よくよく見てみれば……ただの宝石ではない。
サムは思わずジルベルトとアクセサリーを二度見した。
「おいおいおいおい魔石じゃねぇか! 詫びの品にどんだけ金かけるつもりだ?純度からして一番小さい奴でもかなりの金額だぞ」
「だから違うっつってんだろうが!! これは……あー……あいつの、首輪っつーか……」
「はぁああ!!?」
「良いから放っとけや!! さっさとてめぇの買い物しやがれ!!」
魔獣も殺せそうな顔でサムをひと睨みし、ジルベルトは店員のお姉さんと別室へ消えていった。
あんなおっかない顔の男相手でも客は客、店員さんは鉄壁の笑顔で応対している。流石一流の宝飾品店、サムには一生出来そうにない。
……それから十数分後。
別室から出てきたジルベルトと、お買上げされた商品を、サムは再び二度見して硬直した。
「……ジルベルト? こんな店で何してんだよ」
そこは妖精の国でも指折りの宝飾店『虹の宝石箱』。国家予算くらいの首飾りからお手頃価格の指輪まで、幅広い品揃えが自慢のお店である。かく言うサムも、今年交際五年目を迎えた可愛い彼女へ指輪を見繕いにやってきたのだ。
そんな彼が、色とりどりの宝飾品が並ぶきらびやかな場所で――物凄く似合わない男を見かけた。
ジルベルト・ライファン。
この町の警ら隊で、最近とみに頭角を現し始めた妖精だ。大柄で筋肉質な体はそこにいるだけで威圧感が半端ない。魔法と体術、剣術を満遍なくこなせる男で、短く刈った赤毛、眼光鋭い朱色の瞳が目印。
良く言えば精悍、悪く言えば強面なサムの同僚である。
因みに十数年間、外界で行方不明になっていた。やっと戻ってきたと思ったらつい最近、別居中だった奥さんと復縁したらしい。
いつの間に結婚していたのだ、自称親友に報告の一つもないとは何とも薄情な奴である。結婚式に呼んでやらないぞ。
……まぁ、それはさておき。
「ははぁん? ジル、お前さては早速奥さんと喧嘩でもしたか。それでお詫びの品を探しに来たんだろ」
「あ゛ぁ?……そんなんじゃねぇよ」
苦り切った顔で睨みつけてくるのはお約束だ。この強面で誤解されがちだが、こういう顔をする時は大抵……。
――こんな時は、おちょくって遊ぶにかぎる。
サムは、見た目や口調によらず割と純朴な同僚相手にニヤーっと笑った。
「なになに、ほほぅ。チョーカーにネックレスか。石はもう決まってんだな」
「五月蝿えぞサム!! 見んじゃねぇ触んじゃねぇ!!」
ざっと見た所、出された品は割と値が張る物ばかり。それこそ、ちょっとした贈り物というよりは、記念日に奮発して選ぶようなものだ。品揃えからしてジルベルトの心意気が伺える。強面で女の影すら見当たらなかった男が……と思うと何とも感慨深い。
さらに何と言っても目を引くのは、アクセサリーそれぞれに誂えてある石だ。大小様々な石は、どれも鮮やかな朱色ばかり。言わずもがな、ジルベルトの瞳の色である。しかも、よくよく見てみれば……ただの宝石ではない。
サムは思わずジルベルトとアクセサリーを二度見した。
「おいおいおいおい魔石じゃねぇか! 詫びの品にどんだけ金かけるつもりだ?純度からして一番小さい奴でもかなりの金額だぞ」
「だから違うっつってんだろうが!! これは……あー……あいつの、首輪っつーか……」
「はぁああ!!?」
「良いから放っとけや!! さっさとてめぇの買い物しやがれ!!」
魔獣も殺せそうな顔でサムをひと睨みし、ジルベルトは店員のお姉さんと別室へ消えていった。
あんなおっかない顔の男相手でも客は客、店員さんは鉄壁の笑顔で応対している。流石一流の宝飾品店、サムには一生出来そうにない。
……それから十数分後。
別室から出てきたジルベルトと、お買上げされた商品を、サムは再び二度見して硬直した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
35
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる