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子狐

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細かいことは…細かくはないが気にしない事にした俵。
人間生きてりゃ万事うまくいく。
そう思い直して神様から貰った鞄の中身を確認する。
説明書を見ると鞄に手を入れてこれが欲しいと念じるとそれが鞄から出て来ると書いてる。

「アバウトだなぁ…」

そう呟きながらコーラ出ろー。と念じて鞄に手を入れると手にペットボトルを掴む感触があり、手を引き抜くとその手にはペットボトルの某赤いテープの付いたコーラが出てきた。

「おぉ、マジで出たぞ!」

しかもキンキンに冷えてやがる!とか言いながらキャップを外して中身を煽る。
喉を通る炭酸の刺激に感動しながらこれからの事を考える。
食料は大丈夫。何しろ無限に入ってる。
着替えにしても日用品の中に入っている。
後は住なのだが…

目の前には鬱蒼と茂った森。
背後には鬱蒼と茂った森。
横を見ても鬱蒼と茂った森。
何処を見ても森である。

「どうすっかなぁ…ん…?」

ふと、遠くから金属音が聞こえた。
もしかしたら人がいるかも知れない。
俵は音がする方向に足を向けた。










     
















この森は妖精種、エルフ族の縄張りである。
ヒューム族はエルフ族を奴隷にする為にこの森に入り、入り口近くのエルフや珍しい魔獣を攫う為によく出入りしている。

「森に…ヒューム族?」

それを偶々見かけたエルフ族の少女、フィリスはその怪しい男がヒューム族であり、何かを麻袋に詰め込んでいる姿を捉えた。

「そこの貴方!何をしているの!?」

弓を構えて誰何するも、男はフィリスを確認すると、慌てたように麻袋を持ち上げて逃げ出す。

「こら!待ちなさい!!」

紛れもなく怪しい男に怯む事なくフィリスは駆け出す。その際に矢を数本、牽制に放つも男が当たりそうな矢を剣で打ち払う。
中々の腕だ。そう咄嗟に判断してフィリスは木の枝を掴み猿の如く身軽に木の枝を移動し、男を追い掛ける。























「確かこの辺り…」

音が鳴った方向に足を向ける事数分、突如目の前に麻袋を持った男が現れて俵とぶつかる。

「うおっ?!」

「ぎゃぁっ!」

ドン!とぶつかった男は派手に転び、ぶつかられた俵は微動だにしなかった。転んだ拍子に麻袋が地面に転がり、中から子狐が俵の足元に転がってくる。

「すまんすまん、大丈夫か…ん?…狐?」

「ぐるるる…がぅ!」

男の心配をしつつ、俵はひょい、と足元に転がってきた子狐を抱える。
すると子狐は小さく唸りながら俵の手に噛み付く。
ガジガジと噛み付かれながら俵は元気な子狐だなぁと場違いな事を考えていた。
俵は徐ろに鞄に手を入れて念じると手にサラダチキンを持って子狐に差し出す。

「ほれ、腹減ってるなら食うか?」

ニカッ、と笑いながらチキンを差し出す俵に子狐は一瞬虚をつかれた顔をし、釣られてクンクンとチキンの匂いを嗅ぎながら、恐る恐るチキンを頬張る。
それからはまるで取り憑かれた様にガツガツとチキンを貪り食べる子狐に俵は満足気な表情で頷く。
 
そんな彼等の側では漸く立ち上がった男が怒りの表情で俵に斬りかかろうと腰の剣を抜いていた。



















「危ない!」

ヒュ、と空気を裂く音と共に軽い音で矢が男の側頭部に刺さる。
男は即死でそのまま剣を抜いた姿のまま横に倒れる。
フィリスは呑気に子狐に餌を与えている俵を警戒しながら俵に近付く。

「貴方、何者?」

短剣の柄に手を添えながら俵に誰何するフィリス。
俵の立ち振る舞いは何処か浮世離れしており、先程まで唸り噛み付いていた子狐は強請るように甘い鳴き声で俵の手を舐めている。
よく見ると子狐は幻獣種の子供だろう。
幼いながら強力な魔力を感じる。
そしてそれすら霞んで見えるほど大きな魔力をもつ俵にフィリスは知らず喉を鳴らすのであった。






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