78 / 110
第四章その7 ~急転直下!~ 始まりの高千穂研究所編
思い出の終点
しおりを挟む
「…………っ!」
カノンはそこで我に返った。
いつも見慣れた人型重機のコクピット、けれど目の前の座席には、あの愛しい人が座っていた。
昔の鎧をパイロットスーツに着替え、現世でも戦い続けているのだ。いつもどこかの誰かを守って、毎回毎回ボロボロになって……
見ているだけでたまらなくなり、今にも飛びつきたくなるカノンだったが、それだけは必死に我慢する。
そんなこちらの視線を感じ取ったのだろうか。不意に彼が言葉を発した。
「……………………大丈夫か、カノン?」
少し声が変だったのは、やはり緊張しているのだろう。
「……大丈夫、平気よ」
「……………………そっか」
彼は静かに言って、それから前を指差した。
「……多分、ここが終点だ」
「えっ?」
突然の言葉に、カノンは驚いてモニターを見つめた。
機体のライトに照らされる前方には、今までの人工的な壁とは違う光景が浮かび上がっていた。
それは苔むした岩……そう巨岩だ。青い光を帯びた岩肌が、機体の行く手を阻んでいたのだ。
「なんじゃあここは? 図面とまるで違うわい」
音を立てて伸びていく建築物を眺めながら、剛角は困ったように頭をかいた。紫蓮もそれに同意する。
「そりゃ剛角、10年前の図面じゃからのう。それだけ経てば、もう別物じゃろ」
「関係ない、下らないもんに惑わされるな」
刹鬼姫は抜き放った太刀の峰で肩を叩き、部下達に言い放つ。
「狙いは1点、人族の英雄だ。他の何物でもないさ」
刹鬼姫は剛角から見取り図をひったくると、地に落とし、中央研究棟の場所を太刀で突き刺した。
「やつらは必ず中央研究棟に来る。なれば我らも行くだけだ……!」
配下の鬼は、応!と叫んで気合いを入れた。
突き刺した太刀の周囲には、大地から白い光が舞い上がった。
光は蝶の姿に変わったが、刹鬼姫はそれを握りつぶしたのだ。
カノンはそこで我に返った。
いつも見慣れた人型重機のコクピット、けれど目の前の座席には、あの愛しい人が座っていた。
昔の鎧をパイロットスーツに着替え、現世でも戦い続けているのだ。いつもどこかの誰かを守って、毎回毎回ボロボロになって……
見ているだけでたまらなくなり、今にも飛びつきたくなるカノンだったが、それだけは必死に我慢する。
そんなこちらの視線を感じ取ったのだろうか。不意に彼が言葉を発した。
「……………………大丈夫か、カノン?」
少し声が変だったのは、やはり緊張しているのだろう。
「……大丈夫、平気よ」
「……………………そっか」
彼は静かに言って、それから前を指差した。
「……多分、ここが終点だ」
「えっ?」
突然の言葉に、カノンは驚いてモニターを見つめた。
機体のライトに照らされる前方には、今までの人工的な壁とは違う光景が浮かび上がっていた。
それは苔むした岩……そう巨岩だ。青い光を帯びた岩肌が、機体の行く手を阻んでいたのだ。
「なんじゃあここは? 図面とまるで違うわい」
音を立てて伸びていく建築物を眺めながら、剛角は困ったように頭をかいた。紫蓮もそれに同意する。
「そりゃ剛角、10年前の図面じゃからのう。それだけ経てば、もう別物じゃろ」
「関係ない、下らないもんに惑わされるな」
刹鬼姫は抜き放った太刀の峰で肩を叩き、部下達に言い放つ。
「狙いは1点、人族の英雄だ。他の何物でもないさ」
刹鬼姫は剛角から見取り図をひったくると、地に落とし、中央研究棟の場所を太刀で突き刺した。
「やつらは必ず中央研究棟に来る。なれば我らも行くだけだ……!」
配下の鬼は、応!と叫んで気合いを入れた。
突き刺した太刀の周囲には、大地から白い光が舞い上がった。
光は蝶の姿に変わったが、刹鬼姫はそれを握りつぶしたのだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】龍神の生贄
高瀬船
キャラ文芸
何の能力も持たない湖里 緋色(こさと ひいろ)は、まるで存在しない者、里の恥だと言われ過ごして来た。
里に住む者は皆、不思議な力「霊力」を持って生まれる。
緋色は里で唯一霊力を持たない人間。
「名無し」と呼ばれ蔑まれ、嘲りを受ける毎日だった。
だが、ある日帝都から一人の男性が里にやって来る。
その男性はある目的があってやって来たようで……
虐げられる事に慣れてしまった緋色は、里にやって来た男性と出会い少しずつ笑顔を取り戻して行く。
【本編完結致しました。今後は番外編を更新予定です】
白鬼
藤田 秋
キャラ文芸
ホームレスになった少女、千真(ちさな)が野宿場所に選んだのは、とある寂れた神社。しかし、夜の神社には既に危険な先客が居座っていた。化け物に襲われた千真の前に現れたのは、神職の衣装を身に纏った白き鬼だった――。
普通の人間、普通じゃない人間、半分妖怪、生粋の妖怪、神様はみんなお友達?
田舎町の端っこで繰り広げられる、巫女さんと神主さんの(頭の)ユルいグダグダな魑魅魍魎ライフ、開幕!
草食系どころか最早キャベツ野郎×鈍感なアホの子。
少年は正体を隠し、少女を守る。そして、少女は当然のように正体に気付かない。
二人の主人公が織り成す、王道を走りたかったけど横道に逸れるなんちゃってあやかし奇譚。
コメディとシリアスの温度差にご注意を。
他サイト様でも掲載中です。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
後宮見習いパン職人は、新風を起こす〜九十九(つくも)たちと作る未来のパンを〜
櫛田こころ
キャラ文芸
人間であれば、誰もが憑く『九十九(つくも)』が存在していない街の少女・黄恋花(こう れんか)。いつも哀れな扱いをされている彼女は、九十九がいない代わりに『先読み』という特殊な能力を持っていた。夢を通じて、先の未来の……何故か饅頭に似た『麺麭(パン)』を作っている光景を見る。そして起きたら、見様見真似で作れる特技もあった。
両親を病などで失い、同じように九十九のいない祖母と仲良く麺麭を食べる日々が続いてきたが。隻眼の武官が来訪してきたことで、祖母が人間ではないことを見抜かれた。
『お前は恋花の九十九ではないか?』
見抜かれた九十九が本性を現し、恋花に真実を告げたことで……恋花の生活ががらりと変わることとなった。
〜祇園あやかし花嫁語り〜
菰野るり
キャラ文芸
完結しました!番外編はまだ載せますので、ぜひお気に入りに登録お願いいたします。
初山塔子は、祇園甲部の置屋〝初つ山〟の一人娘。15歳の中学3年生。父親はいないけれど、元芸妓のママ〝初春〟と、仕込みちゃんと〝初つ山〟の舞妓ちゃんたちと一緒に暮らしている。ママが皆の〝おかあさん〟なのは当たり前。時折さびしく感じるけれど、私は本物の娘だから大丈夫だと思っていた。
しかし4月の〝都をどり〟の公演舞台裏で偶然ママとは血が繋がっていないことを知ってしまう。ショックを受けた私が迷い込んだ枝垂れ桜咲く歌舞練場の庭で、出会ったのは白銀の髪の美しい九尾の狐でした。
※処女作〝祇園あやかし綺譚〜私、妖の花嫁になります〜〟の全ての文と構成を完全リライトしました!
あやかし狐の身代わり花嫁
シアノ
キャラ文芸
第4回キャラ文芸大賞あやかし賞受賞作。
2024年2月15日書下ろし3巻を刊行しました!
親を亡くしたばかりの小春は、ある日、迷い込んだ黒松の林で美しい狐の嫁入りを目撃する。ところが、人間の小春を見咎めた花嫁が怒りだし、突如破談になってしまった。慌てて逃げ帰った小春だけれど、そこには厄介な親戚と――狐の花婿がいて? 尾崎玄湖と名乗った男は、借金を盾に身売りを迫る親戚から助ける代わりに、三ヶ月だけ小春に玄湖の妻のフリをするよう提案してくるが……!? 妖だらけの不思議な屋敷で、かりそめ夫婦が紡ぎ合う優しくて切ない想いの行方とは――
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる