新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART2 ~鎮西のジャンヌダルク~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

文字の大きさ
53 / 90
第二章その4 ~信じてほしいの!~ ガンコ才女の説得編

鳳の戦い

しおりを挟む
 そこから先は、誠も無我夢中だった。

 鳳が室内に何かを投げ入れると、物凄い光が目を叩いた。

(何だ!? 閃光弾?)

 目をそらす誠をよそに、罵声と轟音が響き渡る。

「行くしかないよな!?」

 歯を食いしばって室内に駆け込むと、鳳があいての背に太刀のつかを振り下ろすところだった。

 崩れ落ちる男をよそに、彼女は次の敵へと向かう。

 走ったと同時に、全身から青い光が溢れ、瞬間的に加速していたのだ。

(慣性制御の電磁式!? 添加機もなしに???)

 人型重機の加速と同じ理屈だが、それを瞬時に、自らの術で行っているのか。

 鳳は相手の懐に飛び込むと、腹に手の平をあてがう。

体の六式たいのろくしき穿うがち……!」

 相手は爆発したように吹っ飛んで、壁に頭をぶつけて動かなくなった。

 ……が、そこで鳳は飛び退いた。

 彼女が今まで居たところに、無数の銃弾が殺到したのだ。

 鳳は壁沿いに走りながら左手をかざす。

 その手には、いつの間にか拳銃ハンドガンが現れていた。

 鳳は床を横滑りしながらハンドガンを連射。

 弾丸は粉塵を切り裂いて飛ぶが、赤い幾何学模様を描いて弾かれた。

 粉塵が裂かれた事で、誠の目にも相手の姿が見えた。

 室内にいる数名の男女……いずれも人間然とした見た目だが、その目は赤く光っている。

全神連ぜんしんれんの犬が!!!」

 一人の叫びを皮切りに、相手が拳銃を連射する。

 鳳も走りながら応戦し、弾丸を発射。

 その弾が、敵の眼前で赤い光に防がれた……と思った刹那せつな、相手が悲鳴を上げてのけぞった。皆、胸や肩口に青く光る刃が刺さっている。

 いつの間にか鳳は銃を消し、左手に複数の小刀を携えていた。

 着弾して光の障壁が弱った瞬間、見えにくい刃物で追撃していたのだ。

「……雷技の二式らいぎのにしき稲魂いなだま

 鳳の言葉と共に、相手は落雷にあったかのように痙攣けいれんし、焦げた匂いを上げて崩れ落ちた。

「……すごいわ」

 誠の隣で、鶴が小さく呟いた。

 珍しく余所見もせず、興味深げに戦いを見つめている。

「才次郎達も片付いたようですね」

 鳳の言う通り、他の2人が奥の部屋から戻ってくる。

 槍を掲げた少年は、物足りなげに呟いた。

「歯ごたえないなあ、つまんない。鎮西ちんぜいの敵はたるんでるんじゃないの?」

「こら才次郎さいじろうっ、調子に乗るんじゃないの。油断して損害出たら、弁償させるからね」

 隣で藤色の髪の少女が怒っている。

 どちらも狐面を付けているので、表情は分からないのだが……そこで突然、鳳が物凄い剣幕で叫んだ。

才次郎さいじろうっ、湖南こなんっ!!!」

 面を付けた2人は、弾けるように床を蹴った。

 次の瞬間、たった今まで彼らがいた場所に、紅蓮ぐれんの炎が渦巻いたのだ。

「……あーらら、避けられた。なかなかやるじゃないの、ボクちゃん達?」

 いつの間に現れたのだろう。

 奥の部屋から繋がる通路に、一人の青年が佇んでいた。

 歳は20代の半ばほどか。

 波打つ金髪、やや垂れ気味の目元。均整の取れた体を、派手な色のスーツに包んでいる。

「始めまして。俺っちはほむら。と言っても真名まなは別にあるんで、コードネームみたいなもんかな?」

 男は片手で髪をかき上げながら言葉を続ける。

 一見チャラついて隙だらけにも見えるが、鳳は油断なく太刀に手をかけた。

「………………姫様も、黒鷹殿もお下がり下さい。かなりの使い手です。恐らく始祖しその血を引く者かと」

「始祖ねえ……ま、御前ごぜん様は俺らの先祖なんだが、昔過ぎてよく分かんないんだわ。俺も千年ぐらいは生きてるけどなあ…………燐火ちゃん?」

 そこで男の目に、不気味な赤い光が宿る。

 瞬間、鶴が叫んだ。

「黒鷹、右よっ!!!」

 鶴の声と共に、誠の右手側から女が現れた。

 女が手をかざした瞬間、誠に火球が殺到する。

 やられる、と思う誠だったが、間一髪かんいっぱつ、槍を持つ狐面の少年が、炎を突き刺し四散させていた。

「ナイスフォロー、才次郎!」

 藤色の髪の少女はそう言って、槍を持つ少年の隣に立つ。

 そんな2人を眺めながら、女は無機質な声で言った。

「……全神連も、余程人手不足みたいね。子供がはしゃぐとケガするわよ?」

 女の言葉と同時に、誠の頬を爆風が叩いた。

 目をやると、鳳が壁際まで飛び退いている。

 素早く体をひるがえし、壁ぞいに駆け抜けるが、赤い火球が次々彼女を襲っていく。

 長い髪が、衣服のはしが、炎で焼けて焦がされていく。

「そらそら、さっきの勢いはどうした!」

 男は加虐かぎゃくを楽しむように言葉をかけるが、鳳は加速しながら呟いた。

「……らいの二、やいば……!」

 鳳は妙に大げさに振りかぶると、数本の小刀を投げつけた。

 さっきと同じ、刺さると電撃を与える術か?

 男が余裕の表情で手をかざすと、赤い幾何学模様が小刀を弾いた。

「ワンパターンだな姉ちゃん。雷の人工精霊しきがみごときで……」

 だが男が軽口を叩きかけた時、いきなり鳳が相手の目前まで迫った。

 鳳の太刀は、強烈な光を放って男を襲う。

「刀技いつ式・流星斬ほしかがり……!!!」

「うおっ!?」

 男は咄嗟に両腕を交差クロスさせ、鳳の斬撃を受け止めた。

 腕と太刀の間に、赤い光が浮かび上がっていたが、完全には防げなかったらしい。

 男の袖は切り裂かれ、青紫の血が床に垂れ落ちた。

「……なるほど、2術を同時に練ってたか。器用な姉ちゃんだぜ」

 男の顔から笑みが消え、2人は同時に動き出す。

 それぞれが魔法で身体能力を増強し、加速。

 男が炎を操り、太刀の届かない間合いから鳳を追い込む。

 だが鳳が壁際にしゃがんだ瞬間、彼女の太刀を巨大な光の刃が覆った。これなら刀身は数倍に達する。

 刀が届かないふりをして、相手を油断させていたのだ。

 光の刃が閃くと、男の肩口から血が飛び散る。

 だが男は飛び退きざまに、刀を振り切った鳳に向けて火球を放つ。

 鳳は咄嗟に手に光を満たし、裏拳で炎を弾き飛ばした……が、完全に炎の威力を殺せなかったのか、手の甲が焼けただれていた。

 2人は更に交錯こうさくする。

 絶え間なく牽制の術を繰り出し、フェイントを織り交ぜ、相手が体勢を崩したら大技を出す。

 前に見せた技の先入観を利用して相手を誘導し、次の技へと追い込んでいく。

 それら全てが、瞬きほどの刹那せつなに繰り広げられるのだ。

「ほんと……すごいな……」

 誠は思わず口に出していた。

 人型重機に乗って巨大な敵と戦うのとは、全く違うベクトルの強さだった。

 いつもは騒がしい鶴も、今は感心したように戦いを見つめている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...