新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART2 ~鎮西のジャンヌダルク~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第二章その4 ~信じてほしいの!~ ガンコ才女の説得編

思い出のとんこつ、いただきます!

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「へえ、よくこれだけのものを手に入れたね」

 紙出力プリントアウトされていく業者一覧を手に取り、宗像さんは感嘆の声を上げた。

 プリンターは他のフロアにあった、事務伝達用のものを拝借しているのである。

「こうして見ると、大体の人の顔は分かるよ」

「さっすがおばちゃん、顔が広いぜ!」

 壮太がはやすと、宗像さんは照れ臭そうに手を振った。

「やめとくれよ、たまたまイベントがらみで会っただけさ。こういう業者はパンフレットに広告を出すから、あちこちよく来てたんだよ」

 鶴は両手をぱんと合わせ、お願いのポーズをとる。

「ねえめぐちゃん、その思い出を見せてくれないかしら」

「そりゃ見せてあげたいけど、どうやって?」

 鶴はそこで小さな黒い映写機を取り出した。

 女神から借りていた心を映す神器であり、コマがジト目でツッコミを入れる。

「うわ鶴、まだ返してなかったの? 後で怒られるよ」

「平気よコマ、手柄を立てればうやむやだわ」

 鶴が映写機を宗像さんの頭に乗せると、たちまち彼女の頭上に、かつてのグルメイベントの様子が映し出された。

 広い会場に沢山の人々が溢れ、九州中のグルメを集めた出店からは、おいしそうな湯気が立ち昇っている。

 来賓席には沢山のお偉いさんもいて、頭上に光の文字で、業者の名前が表示されていた。

「これで私達も、名簿の人の顔が分かるわ」

 鶴は上機嫌で頷くと、あろう事か宙に浮かび、思い出の中に入り込んだ。

「おいヒメ子、何勝手に入ってるんだよっ!?」

 誠は思わずツッコミを入れるが、鶴はあちこち出店を見学し、ちゃっかり白いどんぶり容器を受け取っていた。

「まあ、これが博多ラーメンね! こってりしてておいしいわ!」

 鶴は上機嫌で食べ始めるが、その下では宗像さんが、不安げな顔でうろたえている。

「あ、あれ、思い出の味が、思い出せなくなってきたよ?? ほんとに大丈夫なんだろうね???」

 鶴は気にせずモリモリ完食すると、再び現実こちらに戻ってきた。

「思い出だけでこんなにおいしいんだから、本物はもっと素晴らしいでしょうね。後はこの思い出を、こっちの紙に宿らせて、と」

 やがてプリントアウトされた業者一覧に、青い光が宿った。

 鶴が適当な業者名を指で触ると、紙面にその人の顔が表示された。

「これで成敗しやすくなるわ。それじゃ仕上げに、援軍を呼ぶわね」

「え、援軍? 何か嫌な予感がするけど……」

 誠が引き気味で呟くのをよそに、鶴は上機嫌で何やら念じ始める。

 すると眩い光が現れ、光の楕円となって広がった。

「姫様、お久しぶりやで!」

 光の楕円から飛び出したのは、いつも見慣れたキツネに牛。そしてコマを野生的ワイルドにした感じの、眼帯アイパッチを付けた狛犬である。

「うっ、うわっ、やっぱり来た……!」

 神使達は遠慮なく駆け寄って来ると、キツネと牛がそれぞれ誠の右肩、左肩に飛び乗った。

「また会うたな、とうへんぼく。お前が今日もおまんま食えるのも、稲荷大明神いなりだいみょうじん様のおかげやで!」

「私、牛太郎うしたろう天満宮てんまんぐう様の名に恥じぬよう、モウレツに頑張ります!」

 アイパッチを付けた狛犬……つまりガンパチも、誠の頭に飛び乗った。

「ワシらも来たぞ。九州は元々、八幡神はちまんしん様のお膝元じゃい!」

「お前、八幡神社の狛犬だったのか……って、う、うわあああっ!?」

 誠はそこで悲鳴を上げた。

 光の楕円が、小さな神使を大量に吐き出し始めたからだ。

 子犬サイズのキツネ、牛、そして狛犬が、元気いっぱいに飛び出して来る。

 神使達は呼び出されたのが嬉しいのか、人々の膝や肩に乗っては、楽しげに飛び跳ねていた。

 キャシーは膝に乗ってきた小さなキツネに喜んでいる。

「ワオ、フォックスベビー? 可愛いデスね!」

「外人さんかいな。おおきに!」

 キツネ達はキャシーに挨拶し、傍らではヘンダーソンが狛犬まみれになって、安らかな顔で倒れていた。

 八千穂はせっせと果物をむいて、神使達に食べさせている。

 鶴は嬉しそうな一同を見渡し、腰に手を当てて言った。

「八幡様、お稲荷様、天神様にお願いしたの。西国の分社が多くて、神使の数も凄いから」

 アイパッチを付けた狛犬が鶴の肩に飛び乗り、前足を上げて気合を入れる。

「そうですぜ姫様! ワシら八幡・狛犬連合が来た以上、悪党どもに好き勝手させんのじゃい!」

「くそっ、可愛さだけで取り入りやがって……」

 盛り上がる一同に納得のいかない誠だったが、そこでふと、小さなものが目の前を横切った。

「えっ?」

 見ると、テニスボールぐらいの丸っこいものが懸命に羽ばたき、鶴の前で静止飛行ホバリングし始めたのだ。

 つぶらな瞳、鳥のような羽とくちばし

 下半身は魚のようだが、小鳥ふうの足も生えている。つややかな長髪は人間のそれに似ていた。

 鶴は手を伸ばしてその生き物をとまらせると、不思議そうに相手を見つめる。

「あら、あなたは見ない顔ね。こんな神使いたかしら?」

「だから鶴、その子が何度も言ってるアマビエだってば。こんにちは」

 コマが前足を上げて挨拶すると、アマビエは翼を広げ、キューティクル、とさえずった。

「なになに……鶴の召喚魔法に力があり過ぎて、地元の妖怪も呼んじゃったみたいだね」

 コマはアマビエの言葉が分かるようで、一同に通訳してくれた。

 アマビエは身振りとピヨピヨしたさえずりで、コマと会話を続けている。

「10年前、怪我した人達を治してるうちに、力を使い果たしたんだって。それからずっと眠ってたけど、鶴の魔法で出てきたんだね。この体は何かを借りてるらしいよ」

「まあ、そうだったの。疲れてるところをごめんなさいね」

 鶴が謝ると、アマビエは翼を広げて嬉しそうにさえずった。

「呼んでくれて嬉しいってさ。一緒に行きたいって言ってるよ」

「勿論大歓迎よ。みんなで悪い奴らをこらしめましょう!」

 鶴が燃える瞳で気合を入れるので、誠は慌ててツッコミを入れた。

「待てヒメ子、ここだと他の人もいるだろ。寝てる人もいるし、場所を移した方が良くないか?」

「うーん、それもそうね」

 鶴は腕組みして考えていたが、ぽんと手を打ち鳴らした。

「そうよ、今ならあまちゃんがいいと思うわ」

「いや、なんでよりによってそこなんだよっ!?」

 誠はまたもツッコまざるを得なかった。

「そもそも天草さんに話を聞いて貰うためにこれをやるんだろ。なのに天草さんの部屋を借りるってあべこべじゃないか」

「なんとなくそんな気がするのよ。時が経てば、気が変わってるかもしれないし。この鶴ちゃんの直感が、押すなら今だと叫んでいるわ」

 鶴はそれだけ言って拳を振り上げる。

「さあみんな、今度こそリベンジよ! もう一度もっこすレディーと対決だわ!」

 おお、と叫んで走り出す一同に、誠も仕方なくついていく。

 鶴の肩に乗るアマビエの髪が、サラサラと風になびいていた。

 誠は四国に置いてきた香川の髪を思い出したが、そこでふと違和感に駆られた。

「……おかしいな。アマビエってこんな感じだったっけ……?」

 しばしアマビエを観察する誠だったが、もっと早く走れ、と怒鳴る神使達に急かされ、それどころではなくなってしまった。
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