93 / 95
第93話 ワイバーンによる襲撃
しおりを挟む「しかし、料理は微妙じゃったな。肉や野菜や果物の素材自体は美味しかったんじゃが、すべて焼いて味付けは塩のみじゃからすぐに飽きてしまったのう」
「そうはいっても調味料は珍しいし、値段も高いから普段使いするには難しいだろ。むしろ村では貴重な塩もふんだんに使ってくれたんだから感謝すべきじゃないのか?」
やはり元の世界でも昔は砂糖や胡椒が高額で取引されていたというのは当然といえば当然なのだろう。今は様々な調味料で溢れているが、昔は塩以外の調味料など嗜好品以外の何物でもなかったに違いない。
村で食材を補給して、昨日の朝早くに村を出発した。村の人達も朝早いのにわざわざ見送りに来てくれたのはありがたかったな。
そして昨日と今日は何事もなく無事に目的の場所まで到着した。いよいよ明日の昼頃にはワイバーンが大量発生している村に到着する予定だ。
「いやまあそうなんじゃが、妾の屋敷での料理やこの遠征中の料理に比べるとちと物足りんな。昨日の晩ごはんも美味しかったし、今日のこの料理も見事じゃ。特にこの甘辛いソースがいいのう。おかわりじゃ!」
ちなみに昨日の晩ご飯は村でもらった野菜と肉をコンソメスープで煮込んだお手軽ポトフだ。コンソメスープってまじで便利だよな。適当に肉と野菜を切って煮込むだけでもこんなにうまくなるんだから。とはいえ村でもらった肉や野菜が美味しかったからこそ出せる味である。
ちなみにこの固形のコンソメが今回の旅の準備で一番時間がかかった。固形コンソメの作り方自体は非常にシンプルで、ベーコンや燻製肉と様々な野菜に塩と水を加えひたすらに細かく切り刻む。ミキサーがあれば楽なんだけどそんな物はないからちょっと手間がかかる。そして刻んでドロドロになったものをひたすら煮詰めて最後に乾燥させて完成だ。
屋敷でも味を見たが、素人が作ったにしては十分な味のものができた。どれくらい持つのかはわからないが、だいぶ煮詰めて乾燥させたし数ヶ月は持つだろう。
そして今日の晩ご飯は村でもらった肉と野菜の甘味噌炒めだ。アルガン家の屋敷でも味噌汁の評価は微妙だったが、甘味噌炒めは好評だったから作ってみたが、ローラン様にも好評のようで何よりだ。
「はいよ、口に合って何よりだ。これは俺がいた国で使われている味噌って調味料をメインに使ったソースだ。砂糖と醤油も加えてある。砂糖は高いとはいえ手に入るが、味噌と醤油は結構珍しいからな。気に入ったのならアルガン家の屋敷から届けるように伝えておくよ」
「そうか、ならよろしく頼むぞ!正直に言って村で食べた物より野営でユウキの作った料理の方が美味しかったからのう。ユウキを連れてきて正解じゃったな、感謝しておるぞ」
「なっ、なんだよ急に!まあそう言ってもらえて俺も光栄だけどさ」
このお嬢様が素直に俺に感謝するなんて珍しいこともあるもんだ。歓迎してくれた村の人達には少し悪いが、俺としては俺の料理を褒めてもらって素直に嬉しい。
「私もユウキ殿に感謝していますよ。最初ローラン様がわざわざ道中の食事のためにひとり連れて行くとおっしゃった時には、恐れながらなぜそんなことをする必要があるのか理解できませんでした。
ですが、道中の食事は今まで私が味わったことのない料理で、馬車の中ではみなで楽しく遊べる遊具、今ではユウキ殿が来てくれて本当によかったと思っておりますよ。もちろんみなもそう思っているはずです」
そりぁまあ食事のためだけに護衛対象をもう一人増やすなど、守る人にとっては余計なことでしかないからそう思うのも当然だ。それでもリーダーであるニアさんにそう言ってもらえるのはとても嬉しい。
「そう言ってもらえるとこちらも嬉しいですね。今回アルガン家はフローレン家の皆さんに本当にお世話になりましたから、少しでもお役に立てたなら何よりです」
今回アルガン家が受けた恩はこれくらいではまだまだ返せないから少しずつ返していくとしよう。
「うむ、ユウキのおかげで食事に関してはいつもより充実しておるからのう。さていよいよ明日は本格的な戦闘が始まるから各自しっかりと準備しておくように!」
「「「はい!」」」
明日はいよいよワイバーンとの戦闘が始まる。俺が直接戦うことはないとは思うが、後方支援くらいはする可能性もあるだろうから気合を入れておこう。
そして次の日、いつも通り日が昇ってからすぐに移動を開始する。順調にいけば昼を過ぎた頃には目的の村に到着する予定だ。
「今更なんだけど村に着いたあとはどうするんだ?」
「そういえばユウキには伝えてなかったのう。村に着いたら妾達は村で留守番じゃな。それと護衛を2人残して残りの6人と村にいる男衆で村の周りを調査し、ワイバーンを狩っていくのじゃ。おそらく大量発生しているならば、巣もあるじゃろうからそこも潰してようやく終わりと言ったところじゃな」
「なるほど、巣を探すとなると意外と面倒なんだな。1週間くらいはかかりそうな感じかな?」
「できれば3日くらいで終わらせたいところじゃな。まあワイバーンの巣がどれくらいで見つかるか次第ということになるのう」
どうやら最終的にはワイバーンの巣を潰すのが目的らしい。とはいえさすがに3日は難しいんじゃないのか?いくらルーさんやラウルさん達が強いとはいえ、相手は空を飛ぶドラゴンだから空に逃げられたとしたらどうにもならないと思うのだが。
「さすがにそれだけ長い間村で待っているのも逆につらいな。俺もいざとなったら逃げれるし、調査部隊のほうに……」
「ローラン様!目的の村が見えてきましたが、今現在ワイバーンに襲われている様子です!」
「なんじゃと!」
窓から馬車の外を見ると確かに空に数体のワイバーンがいるのが見えた。前の馬車で前方はよく見えないのだが、この先に村があるに違いない。
「戦闘予定の者は先に村に向かいワイバーンを倒すのじゃ!護衛予定の者は外に出て馬車の周りを警戒、ワイバーンがこちらに向かって襲ってくるかもしれん」
「「「はっ!」」」
ローラン様がみんなに指示を出す。村の様子がかなり気になるところだが、指示通りに外に出て刀を構え身体能力強化魔法と硬化魔法を自身にかけて周囲を警戒する。護衛対象とはいえ、周りを警戒するだけなら大丈夫だろう。
しばらく経ったがワイバーン達はこちらの馬車を襲ってくる様子はなく、村の上空を飛び続けている。ときおり槍や風の刃のような魔法が空に放たれているからルーさん達が村に到着して戦闘が始まったのだろう。
しばらくするとワイバーンが2体、村のあたりから逃げていくのが見えた。もしかしたら戦闘が終わってワイバーン達が逃げ出したのだろうか?
「ローラン様、無事に戦闘が終わりました。村の者に怪我人がおりますが、死者はおりません。怪我をした者はエレノアが治療をしております」
リーダーのニアさんが馬車の方へ戻ってきた。少し土汚れがあるが、怪我などはないようだ。村の人達も死者がいないようで何よりだ。
「そうか、よくやった。とりあえず移動して妾達も村の中に入るぞ」
「「「はっ!」」」
15
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
異世界でキャンプ場を作って全力でスローライフを執行する……予定!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
お気に入りに追加
364
あなたにおすすめの小説
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。
人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…
雪見だいふく
ファンタジー
私は大学からの帰り道に突然意識を失ってしまったらしい。
目覚めると
「異世界に行って楽しんできて!」と言われ訳も分からないまま強制的に転生させられる。
ちょっと待って下さい。私重度の人見知りですよ?あだ名失神姫だったんですよ??そんな奴には無理です!!
しかし神様は人でなし…もう戻れないそうです…私これからどうなるんでしょう?
頑張って生きていこうと思ったのに…色んなことに巻き込まれるんですが…新手の呪いかなにかですか?
これは3歩進んで4歩下がりたい主人公が騒動に巻き込まれ、時には自ら首を突っ込んでいく3歩進んで2歩下がる物語。
♪♪
注意!最初は主人公に対して憤りを感じられるかもしれませんが、主人公がそうなってしまっている理由も、投稿で明らかになっていきますので、是非ご覧下さいませ。
♪♪
小説初投稿です。
この小説を見つけて下さり、本当にありがとうございます。
至らないところだらけですが、楽しんで頂けると嬉しいです。
完結目指して頑張って参ります


加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

宇宙戦争時代の科学者、異世界へ転生する【創世の大賢者】
赤い獅子舞のチャァ
ファンタジー
主人公、エリー・ナカムラは、3500年代生まれの元アニオタ。
某アニメの時代になっても全身義体とかが無かった事で、自分で開発する事を決意し、気付くと最恐のマッドになって居た。
全身義体になったお陰で寿命から開放されていた彼女は、ちょっとしたウッカリからその人生を全うしてしまう事と成り、気付くと知らない世界へ転生を果たして居た。
自称神との会話内容憶えてねーけど科学知識とアニメ知識をフルに使って異世界を楽しんじゃえ!
宇宙最恐のマッドが異世界を魔改造!
異世界やり過ぎコメディー!

異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!

元チート大賢者の転生幼女物語
こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。)
とある孤児院で私は暮らしていた。
ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。
そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。
「あれ?私って…」
そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる