上 下
77 / 87

第77話 富山県② 立山連峰、黒部ダム、富山ブラック

しおりを挟む

「これはとんでもない景色じゃな……」

「この時期じゃないと見えない景色とはいえ、すごい景色だよね」

「雪の壁とでも言うべきなのでしょうかね……」

 続けてやってきたのは立山連峰にある大谷だ。先ほど雨晴海岸から見た雪の積もった立山連峰である。

 標高2500メートルほどの場所にある大谷は吹き溜まりとなっているため積雪量がとても多く、高さが20メートルを超えることもあるらしい。そしてこの大谷を通る立山流量道路に積もった雪を除雪してできるのがこの雪の壁で、この壁が連なる500メートルの区間のことを雪の大谷と呼ぶ。

 雪の大谷ウォークでは雪の壁に挟まれた道の片側を歩行者用通路として開放された場所を歩くことができる。真っ白な雪の壁と青々とした美しい空のコントラストがとても素晴らしい。

「これほど雪が積もるというのもすごいが、これだけの高さの雪を壁にするのもすごいのじゃ……」

「完全に雪が積み重なって真っ白な世界になるからGPS……場所が分かる道具を使ってこの道を探し当てて、少しずつ車で削り取るように少しずつ道を作っていくんだってさ」

 本来ならばもう少しあとの時期から一般開放されるらしいのだが、そこは喜屋武さんの力によって入れてもらうことができた。20メートルも積もった雪を少しずつ削っていくんだから本当に大変だよな……

 もうだいぶ暖かくなってきたのに、さすがに標高が高すぎて寒い……もう少し歩いたら早めに移動するとしよう。



「こ、これはなんなのじゃ……?」

「これはダムと言って、雨水を貯めておける設備だよ。大雨が降った時に川の水が溢れたりしないように水をためておくんだ。そして反対に雨が降らなくなったら、川の水が減っても作物が育てられるように、少しずつ貯めていた水を流すんだよ」

「ふ~む……仕組みとしては分かるが、よくこんな巨大な物を作ることができるものじゃな……」

 続けてやってきたのは大谷から少し進んだところにある黒部ダムだ。

 まあ、ダムの仕組み自体は簡単なものだが、実際にこんな巨大な壁を作って水を貯めておくことが難しいことはミルネさんならすぐに分かるだろう。

「このダムをつくるのには7年もの歳月が掛かったらしいね」

 黒部ダムは60年前に竣工を迎えたダムで、7年の歳月と513億円の工費、延べ1千万人の人手と171名の尊い犠牲によって完成した日本一の高さを誇るダムだ。その高さは186メートルと世界でも最高クラスの高さとなるらしい。

 横の長さは500メートル近くあり、左右のアーチを描くウイングが特徴だ。もうしばらくあとの時期から行われる黒部ダムの毎秒10t以上の圧倒的な放水の迫力はすさまじいものらしい。

 観光シーズンになると、多くの観光客が黒部ダムの観光放水を見にやってくるようだ。

「広大な自然の中にこれほど巨大なダムがあるというのは不思議ですね……」

「今は真っ白な景色だけれど、雪が解けると今度は緑一杯の景色になるよ」

 喜屋武さんの言う通り、この黒部ダムは標高の高い場所にあって山々に囲まれている。今は雪が積もって真っ白だが、雪が解ければ今度は緑に囲まれ、秋になれば紅葉がとても美しい景色となるようだ。

 展望台や新展望広場からは美しい眺めが見えるようだ。また、近くには黒部湖もあり、日本で最も高所を運行する遊覧船なんかもある。



「これはまた真っ黒な色をしたスープですね……」

「これはラーメンという料理であったか。確かに以前に食べたいろいろなラーメンとはスープの色が違って真っ黒じゃな!」

「富山県のご当地ラーメンの富山ブラックというラーメンだよ。スープの色が真っ黒なのは醤油をさらに煮詰めてタレにしているから、これだけスープの色が黒いんだよ」

 晩ご飯は富山県のご当地ラーメンである富山ブラックだ。富山ブラックは醤油を濃くしたスープに大量の粗びき黒コショウが掛けられており、黒コショウの風味がさらに塩辛さを引き立てている。

 元々肉体労働や運動後の塩分補給と共にご飯と一緒に食べることを意識した味付けをしているので、これだけ塩辛い味付けになっているらしい。元々はお客さんがご飯を持ち込んでラーメンをおかずして食べるというスタイルが当たり前になっていたみたいだ。

「……う~ん、やっぱり少し塩辛いかな。2人とも無理に食べなくても大丈夫だからね」

 白いご飯と一緒に食べてもやはり少ししょっぱい気がする。この富山ブラックはかなり塩辛いため、好きな人と嫌いな人がはっきりと分かれるラーメンとなっている。個人的には少ししょっぱいとは思うのだが、これも立派なご当地ラーメンだからしっかりと味わっておかなければな。

「うむ、確かに他のラーメンと比べると、少ししょっぱいかもしれんのう。じゃが、妾は大丈夫じゃぞ!」

「ええ、私も問題ありませんね」

「ならよかった……」

 どうやら2人とも富山ブラックは大丈夫みたいだな。好き嫌いが分かれるラーメンだが、とりあえずミルネさんが満足してくれたようで良かったぞ。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界に転移したので国民全員の胃袋を掴みます

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:322

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:924pt お気に入り:678

【完結】前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:64,453pt お気に入り:4,588

異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,082pt お気に入り:4,740

【本編完結】貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14,391pt お気に入り:10,115

処理中です...