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第四章 縁と結びで縁結び

第八話 演目 心配した者、流派を受け継いだ者

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 結び達は階段を上ると、次に待っていたのは。
 青く細かな模様の入った、全身鎧が特徴的な東洋だった。 

「ん? 東洋じゃない」
「ほう、その姿が本当の姿か、界牙流四代目」
「んだよ~てか、闘気も殺気も無く何してるのさ」
「余計なお世話だろうが、私も縁が心配だからだ」
「だったら一緒に行く? てかわざわざ敵側にならんでも」
「自分が規格外という事を念頭に置け、ここは神の世界なんだぞ、普通に来れるか」
「そりゃ失礼」

 東洋も妻を守る為に無茶をした過去がある。
 だがそれは、人間で考えられるレベルの話だ。
 例えば命を削るが力を得る、誰でも簡単に想像が出来るだろう。
 界牙流は、その命を削るのを抑える努力をしたのだ。
 古今東西の禁止された、封じられた、忘れ去られた技の数々を。
 東洋が弱いわけではなく、界牙流がおかしいのだ。

 つまりは敵に寝返らないと本来はここには来られない、という事だ。
 何故ならばここは神の世界だからだ、椰重とクラリアは自分の事を最優先だっただろうが。

 そして、東洋に戦う気が無いからか、仕掛けてあった罠が発動した。
 多種多様な種族が召喚される、その中で如何にも強そうなミノタウロスが居た。 

「罠か」
「ぶははは! 私は――」
「過剰浄化の一本締め!」
「ぐわぁぁぁぁぁ!」

 東洋が両手をーで一本締めをすると、閃光弾の様な光を発した。
 次の瞬間には、敵はミノタウロス以外居なくなっていた。
 悠長に名乗る時点で東洋には勝てない、これはルールがある戦争ではない。
 つまり待つ必要が無い、さっさと攻撃しない方が悪い。

「ほう? 喋ろうとした者は耐えたか、相手をしてやろう」
「お見事だね~」
「私の事は良いから、この上で待っている者に時間を使ったらどうだ」
「そうだね、行こうか絆ちゃん」
「はい、お姉様」

 結び達が階段に近寄ると、結界が現れた。
 調べる様に結びは、結界を右手で叩いている。

「ぶははは! 馬鹿め! ここは下とは違う! この男を殺さぬ限り結界は解けん!」
「この結界の性能はわかった、絆ちゃん、開けるからささっと入ってね」
「はい」

 結びはぶん殴って結界を破壊した、ささっと2人は結界を通る。
 壊れた結界は直ぐに修復した、敵は悪くない相手が悪かった。
 すんなりと階段を上る2人の前に、現れた次の相手は――

「お久しぶりですね、風野音先生」

 一本槍陸奥が立っていた、紺色の武道着を着ていて、自信に満ち溢れている顔をしている。
 結びは品定めするように見ながら、一本槍に近寄っていく。

「一本槍……随分と強くなったな」
「旅のおかげですよ」
「ん? お前、回歴かいれき流創始者、逍遥しょうようの魂を封じた巻物はどうした?」
「……くだらないイタズラで、燃やされてしまいました」

 回歴流創始者、逍遥。
 界牙流三代目との戦いに勝つため、自分の人生を全て捧げた人物。
 無茶をし過ぎて老化が加速し、死ぬ間際に三代目と戦った。
 戦いに敗れ死を悟った時、自分の技を伝えれない悔しさを感じる。
 その時縁が巻物に魂を封じて、一本槍に渡した。

 一本槍は学園を休み、しばらく旅に出ていた。
 その旅がどの様なものかは結びは知らない。
 言えるのは、結びを目の前にして一本槍は落ち着いているのだ。
 何がどうとかは知らずとも、結びは一本槍の成長を感じていた。

「絆ちゃん、出来るだけ離れて」
「はい、お姉様」

 元々離れていた絆は、壁まで移動する。
 結びは一本槍に対して、殺意を持った目で見る。
 対して一本槍は、落ち着いた表情をしていた。

「一本槍、私は前に言ったな? 私の邪魔はするなと」
「はい」
「死ね」

 結びの十八番、界牙流ただの蹴り。
 だがこれまで見せた蹴りとは違った。
 風月が良く使っていたレベルで放ったのだ。
 
 今までの一本槍では歯が立たなかっただろう。
 だが彼は片手で、いとも簡単に払いのける。
 結びは別に驚きもしない、それは既にわかっている事だからだ。
 ニヤリと笑った結びは一本槍から距離を取った。

「ほう? 以前の私の全力ではお前を殺せないか」
「先生、わかってやっていますよね」
「当たり前だ、先に生きているから先生なんだよ」

 結びはこれから、音楽の授業でも始める様に手を軽く広げた。
 一本槍はそれを見て、全身に力を込める。

「絶滅演奏術、消滅」
「絶滅演奏体術! 発生!」

 結びはリズム取るように手を叩き、一本槍は地面や柱、壁を叩き始めた。
 壁等は壊れる気配が無い、そしてお互いの音が相殺している、しばらくそれが続く。
 結びが止めると一本槍を止め、お互いに視線をずらさなかさった。

「強くなったな」
「逍遥師匠が言ってました、殺し合いの場で死にたくなかったら、何にでも歩み寄れと」
「なるほど、私以上にいい師に出会えたか?」
「はい!」
「……武道家として相手をしよう」

 元気のいい返事に、結びは殺意と闘気を今まで以上にむき出しにする。
 流石に一本槍も顔がこわばったが、目を背けなかった。

「私は界牙流四代目風野音結び」
「僕は回歴の二代目……一本槍陸奥です!」

 お互いに一礼して構えた。
 これから2人の本気の戦いが始まる。
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