VRゲームでも運と愛し合おう!

藤島白兎

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第四章 縁と結びで縁結び

第八話 演目 夫婦愛と初恋

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 結びと絆は階段を上がりきると待っていたのは。

「おや次はクラリアさ――」

 クラリアが居た、そして問答無用で結びを殴りに来た。
 結びは難なく無表情で、右手でそれを受け止める。
 クラリアは結びから距離を取った。

 クラリアの姿は、この間手合わせした時と違った。
 どことなく、ウエディングドレスの様なデザインの外装をしている。
 色合いは白く、パンツスタイルのウエディングドレス。
 ベールで顔を隠し、白いグローブもしていた。

「殺し合いにお喋りは不要だろ!」
「私と殺し合いをしたいのか? いやどう見てもウェディングドレスだろそれ、サイボーグ用?」
「花嫁システムを全てを引き出す、お前の全力の愛を見せてみろ!」
「わかった」

 結びは静かに目を閉じた、風が結びの周りに優しく吹き、音を奏でている。
 それを見たクラリアは、信じられないモノを見たように、驚きの声を上げた。

「馬鹿な! 花嫁システムの出力を完全に上回っている!? 私達の夫婦生活が未婚に負けるだと!? いや、これは初恋特有の気持ち! 夫婦の私達は思い出になった力!」

 花嫁システム。
 それは夫のシラルドとの、愛の積み重ねで出来た力。
 夫婦生活の苦楽を力に変えるシステム。
 今の結びが、結婚生活をしてきたクラリアより強いという事だ。
 一見矛盾だろう、夫婦の苦楽の人生が劣るという事に。
 
 それは単純な答えだ、結びの気持ちが強い。
 何故ならば、それは嬉恥ずかしい『初恋』という状態だからだ。
 未来への不安と期待、様々な気持ちが結び中で渦巻いている。
 今の目標、結婚生活縁との新生活は絶対にする。

 ここまで来ると、理屈がどうのではない。
 結びは愛する人と生涯を全うするまで死ねないだけだ。

「ちっ! だが計測はあくまでも目安! 私達の夫婦生活は簡単には負けん!」
「これが私の! 今の愛だ!」
「なる――」

 それは本当に一瞬だった、クラリアが音もなく吹き飛んだのだ。
 そして、クラリアの立って居た場所に結びが居る。
 速いなんてものでは無い、結びの本気で放った『界牙流二代目の奥義』だ。

 それはただ、自分の気持ちを脚に込めて放つ、単純な奥義。
 それ故に難しい事は何もない、クラリアより速く蹴っただけだ。
 そしてその威力が、クラリアの身体を粉々にするほどだった。
 頭と首と、ほんの少しの上半身だけになったクラリア。
 道端に落ちているゴミを蹴った様に、壊れながら地面を跳ねている。
 
 止まったクラリアに、ゆっくりと近寄る結び。
 結びが見下ろすと、クラリアは――

「ははは! 参った参った、生身ではこう無茶な戦いは出来ないからな!」
「ほぼ頭と首だけなのに元気に喋る事もな」
「確かにそうだ、ま、完全に壊れても今は大丈夫なんだが」
「いやいや、詳しくは知らないけど身体は大事にしなさいよ、壊した私が言うのもなんだけど」
「そうだな、しかしいいデータが取れた」
「えぇ……いやそれよりどうやって帰るの?」
「私の旦那は完璧だよ」

 クラリアがそう言うと、少々ゴテゴテしたSFで出てきそうな、円柱のカプセルが突然現れた。
 カプセルの中央が透明なガラスで包まれている、そこにホログラムなのか、シラルドが映し出される。
 
「クラリア、やはり界牙流四代目に敗れたか……このカプセルに入ると、お前の禁断のパーツ『未帰還』に直ぐに交換出来る、この名前にしたのは出来れば、このパーツは使いたくないからじゃ、クラリア、私は何時までも君本来の身体に戻れるのを待っているよ」

 カプセルが光った、クラリアと辺りに散らばったパーツが吸い込まれる。
 一瞬強く光ったと思ったら、クラリアが五体満足で出てきた。
 今度は女性物の喪服の様なデザインをしている。

「はや!」
「換装にちんたらとしてたら攻撃されるだろ?」
「なるほど……そして今の身体は私より強いね?」
「この力は戦う為ではなく、旦那の元に何が何でも帰る力だ、目的が違う」
「それだったら早く帰りな」
「そうさせてもらう……だが」

 そう、椰重の時と同じく魔法陣が空中に現れて、敵が召喚されていた。 

「データの採取を開始する」
「本当の目的はそれか?」
「これはついでだ、早くいけ」
「はいよ~」
「ごきげんよう」

 結びと絆は階段を上がり、次に進むのだった。
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