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第三章 桜野学園編

第七話 演目 説明しましょう、悪人は水槽にエサを撒き、見ているだけです

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「ここだ」

 縁達が辿り着いたのは巨大な廃工場、周りには何もない。
 隠れるのも罠を仕掛けるのも最適な場所だろう。

「どうするの縁君?」
「『中途半端が一番怪我をする』って事を教えようかなと、今の俺がそうだ、昔の戦争時に関係者を殺しておけば、紅水仙君は大怪我をしなかった」
「次に活かしましょう、そして敵が理解する頭があるといいのだけど」
「ハハハ、無いからこんな事になっている」
「ええ、嫌がらせが続くなら絶滅すればいいだけ」

 縁には珍しく、人を馬鹿にした顔をしながら笑っていてた。
 対してスファーリアは無表情で廃工場を見ている。

「昔を思い出すわね……でも縁ちゃん、さっきも言ったけどそんな顔は慣れちゃダメよ?」
「ええ」
「それでどうするのかしら縁ちゃん? 見るからにこの廃工場は罠があるわよね?」
「なら攻略本を呼ぶまでだ」

 縁は両手を胸の前に合わせた。

「縁召喚……来い! 博識いずみ」

 目の前に魔法陣が現れた。
 魔法陣には『博識いずみ』をモチーフにしたような文字が浮かんでいる。
 光が集まり、そこから博識いずみがメガネをクイっとさせて登場した。

「はいはいはい! お久しぶりの登場でございます! てか縁さん、召喚するなら事前連絡してください! お風呂だったらどうするんですか! 唐突なお色要素ですよ! 今のご時世色々と厳しいんですから! そして縁召喚とは縁さんと縁が有る人達を――」
「解説が長い」
「あらあら、殺意が増してる縁さんはし塩対応ですね」
「いずみ、ここに居る敵はどんな奴らだ? 説明しろ」

 いずみはため息をした後に、不満そうな顔して説明を開始する。

「ここに居る人達は都合よく育てられた人達の集まりですね」
「どういう事だ?」
「昔、縁さん達に返り討ちにあった人達が結集して、孤児院を設立しました、これだけ言えば後はわかりますか?」
「ああなるほど、都合よく育てられるな」
「おそらく一本槍さん達を襲撃したのは、その中でも忠誠心の高い方達……つまり狂っている人達ですね」
「……お話が通じない人達で良かった」

 スファーリアは、ビーダーを取り出したと同時に地面に突き刺した。
 それはそれは楽しそう笑う、絶滅したくてたまらない様だ。

「いずみさん、どれくらい狂っているか興味ある」
「ワクワクしている所申し訳ない、説明しますけど、あなたを満足させる程の狂人ではありませんよ、一般人レベルが考える狂人です」
「あら、じゃあいずみちゃん? 一般人の間隔で狂人は……街中でナイフ振り回すとか?」
「はい、そうですルルさん、そのレベルくらいです、いやそのレベルって言っても十分ですがね」
「それじゃあ過度な期待はダメね? 残念ねスファーリアちゃん」
「私の狂気を奏でるだけ」

 それだけ言うとスファーリアは、訪問でもするかの様に堂々と入口に近寄って行った。
 縁も黙ってそれに続いた、このされたルルといずみはため息をする。

「はぁ……どうしてまた戦争の火種になるような事を敵は」
「今回で言えば、組織を盲信している人達に何を言っても無駄よ」
「そうですね」

 ルル達は駆け足で追いかけた。
 しばらく廃工場内を歩くと、予想通りの罠や襲撃を受けたのだが。

「死ね! 呪われし神よ!」
「ほう、この痛みは神絶対抹殺剣か、昔これに斬られて大変だった。」
「縁君、効果は?」
「文字通り神を絶対殺す剣、軽く斬られただけで血が止まらん」

 縁は背後から剣でぶっ刺されたが、縁は死んではいない。
 刺さった剣を身体から引き抜き、その辺に投げ捨てた。
 引き抜いた瞬間に傷も服も治る、それだけで敵は戦意喪失している。
 何故なら縁が刺された剣は神を殺す剣、言わば切り札クラス。
 それが効かないとなれば戦意喪失もするだろう。
 敵が弱い訳では無い、縁が規格外に強くなっただけだ。

「昔なら死んでいたが、俺はこの程度で死なん」
「その理由は?」
「君を幸せにしていない、これからだろ? そして君の想いが俺を死なせない」
「……へへへ」

 このやり取りがずっと続いていた。
 神の力は信仰心、欲無き想いが力になる。
 スファーリアもとい、結びが縁を愛する限り死なないという事だ。
 攻略方は簡単だ、その想いを超えればいいだけだ。 
 敵を目の前にしての2人はイチャイチャ、というか眼中に無い。 
 
 ルルやいずみに標的を変えた奴らも居るが、あっけなく負けた。

「敵が可哀想になってきたわ」
「ええ、ですがルルさん、知識は力です、今回も敵は愚かだって事です」
「え? 縁ちゃん達に勝算が有るから喧嘩吹っ掛けてきたんじゃないの? まさか中途半端に嫌がらせする為?」
「ふむ、嫌がらせがでしたら大成功です……が、今回の敵は努力や時間をかけて準備してきたのでしょうが、一つ抜けています」
「それは何かしら?」
「何で縁さん達が……更に力を付けてると考えてないんでしょうかね? RPGみたく時間軸が止まってないのに」

 いずみはそう言いながら、メガネをクイっとさせた。
 そう、敵が縁達を排除しようと時間をかけたとする。
 そのかけた時間分、縁達も成長しているのだ。
 追い越すには生半可や中途半端では超えられないだろう。
 当たり前の事だ、時間は止まってくれない。

「確かにそうよね、ついでに悪魔的に言わせてもらうと」
「はい」
「中途半端な悪って本当の悪人のエサでしかないのよね」
「そうですね、賢い悪は魚が入っている水槽にエサを撒いて眺めてます」
「その眺めている奴を水槽に引きずるから、魚視点は面白いのよ」
「はい、自ら水槽に突撃して、お前らにエサ撒いたのは私だ! とか言っても萎えます」
「そうよね、ま、その突撃してきたおバカさんは2人の逆鱗に触れたみたいだけど?」
「縁さんはまだしも、界牙流を怒らせたのは本当に愚かです」
「私はそんなに詳しくは知らないのだけど、説明してもらえる?」
「……お任せください! では短めに、質問があったらどうぞ」

 何時も雑に扱われているからか、目を輝かせてメガネをクイっとさせた!

「何で怒らせたらヤバいのかしら?」
「それは界牙流が一族総出で、敵の一族を滅ぼすからですね」
「それはヤバいはね、何で世間一般で知られてないのかしら?」
「そこそこは知られてはいますよ? 関わり合いになりたくないだけで」
「……そうよね、そこだけ聞くとお友達にはなりたくないわね」
「はい、後は少々なめられてる部分もあります」
「え? 何処が?」
「『そんな流派あるわけないだろ』うとね」
「確かに眉唾物よね」
「はい、後は界牙流は伴侶を守る流派、今回で言えば縁さんに何かあった訳では無いので……まあ一族絶滅は無いかなと」
「あ、その続きはわかるわ、絶滅演奏術奏者としても見逃せないって所かしら?」
「はい、事実無根な誹謗中傷は許しません」

 こんな会話をしているが、敵は今も襲い掛かってきてる。
 だが無意味だ、今日明日では覆せない実力の差があるからだ。

「ドレミドから聞いたけど、確か最初の奏者が誹謗中傷、そして努力が認められなかったとか」
「そうです、ブチギレて『てめーらの望む音楽を奏ででやるよ』と」
「本当に人って考えないで発言して、なーなーにして、強い方につく、愚かしいわ」
「すみません」
「あらあら、言い方が悪かったわいずみちゃん、一部のおバカさんね」

 ルルはお茶目にウィンクをした、いずみもノリ良くウィンクを返した。

「まあでも今回のお二方は……『先生』として許せないようですね」
「あ、それに関しては私もよ?」
「何かあったんですか?」
「んもう、全て知ってるのに言わせないでよ」
「私自身会話が好きなので、それにルルさんとの言葉遊びに魅力を感じましたよ」
「あら、魅力を感じてくれるのはサキュバスとして嬉しいわね……その答えは後で答えましょ」
「わかりました」

 先頭を歩いていたスファーリアが、ビーダーで扉を破壊した。
 その先に今回の首謀者が居るらしい。
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