VRゲームでも運と愛し合おう!

藤島白兎

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第三章 桜野学園編

第七話 演目 次の目的地へ歩く

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 3人は病院に着くと玄関付近に一本槍、メーナ、リリアールが居た。

「縁先生、スファーリア先生」
「一本槍君、何があった?」
「縁先生の知り合いというだけで、襲撃されました」

 縁とスファーリアの目付きが鋭くなる。

「今日は親睦を深めに紅水仙君達と、竹山奥さんの別荘に行ったのですが」
「なるほど、外で遊んでる時に襲撃されたのね?」
「はい、それも竹山奥とルルさんが、買い物に出かけているタイミングです」
「そして、私達に連絡しなかったのは、動いたらヤバいと感じたからね?」
「はい、相手が格上でした、下手に動けば死んでいました。そして……結果を言えば」

 一本槍は手を震わせ、悔しそうな顔をして俯いた。

「紅水仙君が両足を切断されました……今……足の再接着の手術中です」

 縁はその言葉を聞いた瞬間にカミホンを操作した。
 情報屋、ルティ・スティツァにメールで連絡をする。
 
「敵は複数人で、私達の即興の連携でどうにか出来る相手じゃなかったよね」
「紅水仙さんが敵を挑発して、私達を助けてくれました」
「縁先生、スファーリア先生……僕は……僕は強くなったと思っていました! でも現実は! 友人一人に全て任せてしまった、いくら紅水仙君が手を出すなと言っても!」

 一本槍は悔しさから泣き始めてしまった。
 格上の相手との実戦、話から分かるのは複数の相手をした紅水仙。
 そして最善の手、自己犠牲で一本槍達を五体満足で帰した事。
 その結果両足切断という重症。

「強く……なりたい……」
「失礼、口を挟んでいいかな?」
「……貴方は?」

 服の袖で涙を拭いた後に一本槍は炎龍を見た。

「私は界牙流三代目炎龍、話を聞く限り君達は強い、何よりも『我慢した事』を評価したい、そして君達は五体満足で帰り、その紅水仙君も治療中なのだろう?」
「……ええ、全体を見れば上々でしょうが……僕の心が黒くなりそうです」
「ふむ、ここが君の心と武術の分岐点になるだろう、縁さん、あの巻物を」
「一本槍君これを」
「縁先生……これは?」
「一本槍君、これには凄い人が封じられた巻物だ」

 縁は鞄から『歩みの書』を取り出して一本槍に渡す。
 受け取った一本槍達は興味深そうに見ていた。

「それはつい先程私と戦った者が残した命の歩みだ、その人物は界牙流に勝った」
「か、界牙流に勝った!?」
「うむ、人生の全てを賭けて界牙流に勝ちたいとの信念、だが無理をし過ぎたのだろう、出会った時には今日明日の命だった」
「そんな凄い人の技術がこの巻物に」
「うむ、彼の歩んだ道は『活人かつじん』だ、私が憎い敵なら死んでいただろう、ちなみに界牙流は大切な者を守る為の殺人の拳」

 炎龍は一本槍の心を見透かす様に見つめた。

「学ぶといい、流派ではなく『活人』の心をだ」
「……」

 一本槍は意を決した顔をして巻物を開いた、だが中身は真っ白だった。
 どれだけ読み進めても真っ白が続いている。

「あれ? 何も書いてませんよ?」
「一本槍君、巻物にはちょっとした制約があるんだ、読み進めれば見える箇所があるだろう」
「……むむ? この蹴り方……紅水仙君と戦った時と同じ方法?」

 メーナとリリアールが、あの時かと閃いた顔をして巻物をのぞき込んだが。 

「え? アタイには見えないよ?」
「私にも見えていない、近しい能力や考え方の人しか見えないとか?」
「はっ!」

 一本槍は唐突に巻物を食い入るように見て動かなくなった。
 目は巻物を見ているが、遠くを見ている様にも見える。

「うお!? どうした一本槍!?」
「なるほど、読めた事によって一本槍さんは、巻物に封じられた人とお話してるのでは?」
「あーそういたぐいのものね? てか病院前でやんなし、傍から見たら気絶だよ」
「これは困った」

 リリアールとメーナは暗い空気を変えようとしているようだ。
 一本槍の肩等を叩いているが反応が無い。

「お父さん、この子達をお願い出来る?」
「うむ、任せなさい」
「ありがとう」

 それだけ言うと縁とスファーリアは病院から離れた、少し経って2人は足を止める。

「容赦しない、絶滅する」
「ああ、俺もここまでされて黙ってられん」

 突然縁のウサミミカチューシャが壊れ、何時もの神様の姿になった。
 壊れたウサミミカチューシャを拾って鞄に入れる。

「あ、壊れた」
「いや、代えがあるから大丈夫だ」
「そいういうば、縁君がウサミミ付けている理由は?」
「ああ、言ってなかったか? 斬っても切り離せないが、神として生きるのがめんどくさくなった、最初の理由はな」
「なるほど」
「巻き込んですまない」
「私は構わない、絶滅演奏術奏者として悪を滅するだけ」
「界牙流としては?」
「貴方の敵を全て殺す」
「そうか」
「俺も人に愛想がつきそうだ」
「あらダメよ縁ちゃん」

 2人の背後から声をかけられた、殺気だっているからか睨みながら振り返る。
 そこにはくねくねしながら立っているルルが居た。

「笑う門には福来るよ、一部のクソ野郎の為に、貴方の心を黒くする必要は無いわ」
「……ルルさん」
「それに……もし子供が出来て𠮟る時にそんな顔をして接するのかしら? 日常生活やクセって顔に出るわよ?」
「これは厳しい……だけど、そうですね」
「よし、敵の前だけにしましょ、笑顔は無理でも怒った顔はしないどく」
「……手を握ろうか?」
「ここは抱きしめ、数十秒抱きしめたら心身がリラックスするとか」
「聞いた事が有るな、よし」

 2人は数十秒抱き合った、こわばった顔が徐々に緩くなったのは言うまでもない。 
 何時も通りの表情になった2人であった、いやむしろデレデレだ。

「2人共いい顔ね……で、敵はどこかしら? 私も付いていくわ」
「ルティから情報は貰っている、今から向かう」
「全力でやりましょ」

 3人はその場から消えた。
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