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藤島白兎

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第三章 桜野学園編

第六話 演目 恋の美しさ

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 しばらく休憩した後、虚言坂がマイクを握った。

「おう、そろそろ2回戦目を始めるぞ、次の対戦はリリアール・サキュレート対紅水仙べにすいせん成樹なるきだ」

 会場がざわつき、急いで席に戻る人達が多かった、参加者はというと。
 金髪のイケメンで銀色のキラキラとしたスーツに、手鏡を持っている青年。
 スーツのキラキラがちょっと眩しい。 
 そしていかにもサキュバスと言わんばかりに、わがままボディにコウモリの羽、露出の多い服装で青い色の肌の悪魔の女性。
 長い少し薄い紫の髪と豊満な胸を揺らして歩いている。

 そして中央に着くとお互いに向き合った。

べにとは何回か手合わせしているけど、腕を上げた?」
「フッ、君は美しさに磨きをかけたようだね」
「もちろん、アタイが着飾るのは彼氏の為だし」
「となれば、君の技は……『相思相愛の心』より美しくなっているだろう」

 紅水仙の言葉に縁が反応する。

「む? 相思相愛の心?」
「お? 縁は知っているの?」
「ああ、少し前に『ルナ』って悪魔さんが使っていた、戦ったのは麗華さんだけど」
「あら縁ちゃん、ルナと知り合い?」
「いえルルさん、戦いを見た程度です」
「そう、でも縁ちゃんと近い力だから親近感があるでしょ?」
「ええ、どんな能力なのかはあまり知りませんが」
「あら、簡単に説明しようかしら?」
「お願いします」
「昔、まだ淫魔が、乱れていた時代に、一途な考えを持った淫魔達が居たの」

 ルルは昔を懐かしむ様に、そして寂しく語っている。

「色々と障害はあったけれど、他の淫魔には無い心を手に入れたいわ」
「それが相思相愛の心ですか」
「大まかな言えばだけどね」

 縁達は中央へと視線を戻した。

「んじゃ、何時も通り本気でやろうか」
「まあ待ちたまえ、前回の様にしたら迷惑がかかるだろう?」
「メーナから施設強化したって言ってただろ」
「そういえば、ここに居る先生方や師匠でも、骨が折れると言ってましたね」
「ならアタイ達が傷つける事は無いね」
「では……お互いの魅力を見せつけましょう」
「んじゃ、遠慮無く」

 リリアールは右片手に力を貯め、淡い赤色のエネルギーの様な物が右手に集まりつつある。

「相思相愛……」

 何かを投げる前振りみたく、右手を振りかぶる。

「はああぁぁぁぁぁ!」

 気合の入った掛け声と共に右手突き出した!
 そこから淡い赤色のビームの様な物が放たれる。
 会場の広さ以上の広範囲で、紅水仙は簡単巻き込まれた。
 観客席に居る人達も悲鳴は多少なりと上げたが、障壁が攻撃を弾いている。

「見事、だが私も君と同様に常に美しさを磨いてる」

 なんと、そのビームの中で紅水仙は平然としていて、手鏡で自分の顔を見ていた。
 その様子を見て風月はニヤリと悪い笑みをする。

「これは凄いね~紅水仙は自分の内外の美しさで攻撃を弾いている」
「なるほど……これはお互いに理屈でどうこうの能力じゃない」
「縁っぽい能力だね~質問、輝夜様、あれはどういった能力なんですか?」

 意気揚々と手を挙げた風月を竹山奥は笑顔で答えた。

「あれは尽善尽美じんぜんじんびといいます」
「確か善と美を極めた完璧な状態の事の四文字熟語だね~」
「はい、愛弟子はまだ半人前ですが」
「いやいや見事、精神面や志はナイスだね~」
「ありがとうございます」
「でさ、能力的には縁と同じ分類なのかな? こう、説明されても解らない系?」
「一言でいいますと、愛弟子の技は『自分以下の美しい、善の攻撃』を弾きます」

 その説明を聞いて更にニヤリとした風月。
 美しい、善の攻撃を回避、風月の考えている事は。
 自分達の美しい愛なら当たるんじゃないかと。
 縁はそんな風月を見透かした様に言った。

「風月、そんな顔しちゃだめだぞ」
「防御に特化した技術ってあまりないからさ~ついつい」
「大人しくしてなさい」
「へ~い」

 ちょっとむくれた風月は中央に目線を戻す。

「相変わらずわけわかんねーな」
「では前の様にダンス勝負にしますか?」
「そりゃ前の交流会で会場ぶっ壊した時だろ? それに」

 リリアールは一本槍の方を見た、真剣な表情で2人の試合を見ている。

「今回は面白い奴が参加してるからな、どうだ? ウォーミングアップ」
「次に彼と戦うのは貴女ですからね、付き合いますよ?」
「言ったな? アタイは遠慮はしねーぜ?」

 再び右手に淡い赤色の力を貯め、相変わらず紅水仙は手鏡で自分を見ている。

「ええ」
「んじゃ、彼氏への愛2倍だ!」

 言葉通り、先程のビームの範囲が2倍の物を右手かせ放った!
 おそらく威力も2倍なのだろうが、そのビームの中でも平然と自分を手鏡で見ている。

「素晴らしい、この威力、常日頃愛を育んでいるのがわかります」
「お前って本当に褒める事しかしないな、てか相変わらず自分見てるし」
「当たり前です私は美しいので、それに貴女は敵ではない、そして」

 手鏡で自分を見るのは止め、リリアールを真剣な表情で見た。

「醜い言葉は自分の価値を下げてしまいます」

 その言葉に竹山奥は強く頷いていた。
 リリアールは自分の攻撃を止め、秘策が有る様に笑う。

「はっはっは! なら美しい必殺技の一つでも出しとくか」
「一本槍さんに手の内を見せていいんですか?」
「どうせ真似出来ねーよ……いくらお前でも耐えられるかな?」

 紅水仙は相手の気配が変わったのを感じ、手鏡を懐にしまう。
 リリアールは両手を掲げ、気合の入った声を上げた!

「世の片思い、両想いの男女達よ! アタイに恋心の熱さを貸してくれ!」

 頭上に少しずつ淡い赤色の玉が出来上がっていく。
 驚いた顔をしながらも、紅水仙は叫んだ!

「なんという恋心! これは紆余曲折を経て愛し合った者達の気持ち! 片思いの純粋な気持ち! う、美しい!」
「名は『落花流水らっかすいりゅう』! 世の恋心の美しさを耐えられるか!」

 そして、落花流水を見て泣く人物達が居た。

「す、素晴らしい……」
「あ、また輝夜様が泣いている」
「ああ……すみません、あんな綺麗な技を見せられたらつい」
「ってルルちゃんもまた泣いてるし」
「だって、本当に美しい」
「あれ……え゛!? 縁も泣いてるの?」
「世の中には目をそむけたくなる恋愛もあるが、まだそんなに腐っちゃいないんだな」
「縁を司る神様も泣いちゃう凄い技なんだね~」
「そういうお前はどうなんだ風月?」
「斬君、争う事じゃないけど、そりゃ~私達の愛が勝つ」
「そこに行きつくのか」

 斬銀はため息をしながら視線をリリアール達に戻す。

「おらよ! 世の中の美しいものだ!」

 物凄く巨大な玉になった落花流水、リリアールは両手を勢い良く振り下ろした!
 落花流水は破裂した、そして様々な種類の花びらが舞う。
 地面に落ちると、水にでも流されている様に漂っていた。

「ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ! 美しいいぃぃぃぃぃぃぃ!」

 その花びらの嵐に包まれた紅水仙は、悲痛な声と歓喜な声を上げて膝を付いていた。
 しばらくして花びらは消え、スーツが少しボロボロで髪も少しぼさぼさ。 
 だがスッキリした顔でリリアールを見る。

「見事、美しい攻撃だった」
「んじゃ、ここまでだな、ウォーミングアップありがとう」
「いえ、素晴らしい技をありがとうございます」
「ではそこまで! 本来なら休憩だが、リリ、このまま連戦するか?」

 お互いに礼をする2人、虚言坂はマイクを使い話しかけた。

「ああ、一本槍が良ければな」
「んじゃ、一応会場の点検だけはさせてくれ、問題ないとは思うが」
「了解っさー」

 紅水仙は待機場に戻り、代わりに一本槍が中央へ。
 そしてスタッフが会場の点検を始めた。
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