上 下
95 / 291
第二章 ジャスティスジャッジメントの正義

第四話 演目 きっかけをくれた恩人

しおりを挟む
「んじゃ、縁先生授業をどうぞ~」
「待て風月、何をしろと」
「さっき言ったじゃん、精神力は重要! って話でもすればってさ」
「っても、俺に説得力があって言える事は、人との縁についてしかないぞ?」
「ならばそれ語ればオッケーよ」
「じゃあそうするか、人との縁の大切さ、これが俺の経験で語るとだ」

 縁は身振り手振りを入れつつ話し始めた。

「昔、俺は妹が人間達に迫害されててな? 俺は妹を守る為に人間達と殺し合った、人間達は不利になると『俺は悪くない、アイツがやったんだ』とか『騙されたんだ』とか『不幸の神は死ぬべきだ』とか、色々だったが……全て『幸せに』してやった」
「あの先生、幸せにしたってどういう事ですか?」

 女子生徒が手を上げた、制服に刻まれたクラスを表す紋章は『鏡に写った人』をモチーフにしていた。

「身の丈に合わない幸せをくれてやった、浪費癖がある奴には宝くじとかで、巨額の大金を当てさせて自滅、とかな」
「先生って何の神様なんですか?」
「俺の名は縁起身丈白兎神、縁だ、縁起の良い事、身の丈の幸せを守る神様だな、一応」
「幸せって、身の丈合ったのを求めた方がいいんでしょうか?」
「幸せの上限を上げる事は出来るぞ?」
「上限をあげる? ですか?」
「努力をするんだ」

 縁は威圧感を放ちながらそう言った。
 質問した生徒は真剣な表情をしていたが、他の生徒の何人かは目をそらしていた。

「幸せになる努力をしたらいい、簡単に言えば『まっとうにお金持ち』になりたいなら、それ相応の努力をしろって事だ」
「……なるほど、ありがとうございます」
「人様に迷惑をかける幸せは求めない方がいいぞ? 俺の身体の様に呪われてるからな」

 自分自身の行いを嘲笑うかの様に鼻で笑った。

「でだ、話を戻して、人に呪われた神様がちょっとまともになれたのは……人の縁があったからだ」

 今度は感謝してもしきれない様な表情をしている。

「戦争が表向きには終わっても、俺は妹を迫害した奴らを幸せにし続けた、それを見かねた俺の恩人が神社を建ててくれたんだ」
「お? あの神社ってさ、もしかして斬銀が建てたん?」
「ああ、俺があまりにも暴れてたんでな」
「神社ってそんな効果があるん?」
「『神社を建てて祀りますので、怒りを鎮めて下さい』ってやつだな」
「ああ~なるほどね」
「そこが俺の怒りの抑え何処だったんだ、恩人に『お前、これ以上暴れると自分と周りを不幸にするぞ、幸運の神がそんなんでどうする』ってな」
「んで縁はどう変わったんだい?」
「とりあえず無関係な人間達に対しては、攻撃はしなくなった」
「いや~あれてんね~あたしも人の事言えんが」
「まあ、そこから少しずつ変わったのさ」
「急に変われるもんなのかね?」
「いや? 今も神社が有るから暴れてないだけ、それと大切な人達が増えたからな、その人達にも迷惑かけてしまうし」
「まとめると、縁が悪い神様にならなかったのは、人との関わりって事だね?」
「ああ、だからみんなには……何かあって時に、周りに当たり散らさずに自分が幸せになる方法を探してほしい」

 自分が後々後悔をして今に至るこの姿を、反面教師にしてほしい様にみえた。

「何度も言うが、調子に乗って考え無しに力を振るった結果がコレだ」
「そこは大丈夫だよ縁」
「そうなのか?」
「うん、ここに居る生徒達は『相手の実力』を測れるよ」
「それがどう関係あるんだ?」
「人の恨みをちゃんと感じているって事、そしてそれすら力にしていて、自分達と比べて月とスッポン以上だからさ」
「……つまり怖いって事か?」
「当たり前でしょ、何言ってんの」
「いや、そんなつもりは」
「さっき自分で言ってたでしょうに? 『自分から不幸になっていってる』ってさ、その姿に愛着沸くと思う?」
「ああ……客観的見れてなかった」
「ま、先生初日なんてそんなもんよ」
「んじゃ、次の話をしようか」

 何時のもウサミミカチューシャを付けた縁。
 普段通りのジャージ姿になった。
 その姿になった時、数人の生徒が安堵の表情をした。

「お、何時もの縁に戻ったね、うんうん、あたしはそっちの方が好きだよ」
「んじゃ、次は精神力について自分なりに話していくか」
「ほほう、聞かせてもらおうじゃないの」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ドール

奈落
SF
TSFの短い話です 目覚めると、その部屋の中は様々なアンティークドールに埋め尽くされていた。 身動きの取れない俺の前に、男が運んできた鏡に映された俺の姿は…

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

クリスマスプレゼント

奈落
SF
TSFの短い話です

超ゲーム初心者の黒巫女召喚士〜動物嫌われ体質、VRにモフを求める〜

ネリムZ
SF
 パズルゲームしかやった事の無かった主人公は妹に誘われてフルダイブ型VRゲームをやる事になった。  理由としては、如何なる方法を持ちようとも触れる事の出来なかった動物達に触れられるからだ。  自分の体質で動物に触れる事を諦めていた主人公はVRの現実のような感覚に嬉しさを覚える。  1話読む必要無いかもです。  個性豊かな友達や家族達とVRの世界を堪能する物語〜〜なお、主人公は多重人格の模様〜〜

処理中です...