614 / 934
十七章
10
しおりを挟む
従業員制服のラップスカートは、巻きかた次第で膝丈ほどのスリットを入れることができる。それに沿い脚をグイッと出して腰に手を当てると、シルクの豪華さもあって本当にカッコ良かった。つま先側に大きなリボンの付いたパンプスは「カワイイ!」の集中砲火を浴び、スリットとは逆方向に流したバンダナ巻きのスカーフは「素敵!」の集中砲火を浴びていた。つまり現時点で既に大騒ぎだったのに、
「スカーフは自分の好きな柄にデザインできます」
との説明をされたものだからさあ大変。教育AIが男子生徒一人一人の周囲に相殺音壁を展開せねばならぬ事態に、教室はなってしまったのである。帰宅したら咲耶さんに、謝っておかなきゃな・・・
それはさて置き、男子の蝶ネクタイも思いのほか好評で実行委員は胸をなでおろした。僕らの学年の男子は自分達が脇役なことを重々承知しているから従業員制服の男女差に文句は出ないと予想していたが、それでも委員全員で安堵の目配せをしたものだった。
という教室の空気がある内に、
「実技棟は女子に比重が傾いたので、教室棟の『冒険者服』は男子に比重を傾けました」
水谷さんが冒険者の個所を強調して皆に語りかけた。と同時に神々しい五つの武器が空中に出現し、次いで深紅のロングマントをたなびかせた男子冒険者の後ろ姿が中央に浮かび上がり、そして両手剣が煌々と輝きながら冒険者の背中に収まった。その途端、
「「「ウオオオ――ッッ!!」」」
野郎どもの雄叫びが教室を揺るがした。教育AIは今度は女子を、相殺音壁で守らなければならなかったのだった。
カッコイイ武器を持たせさえすれば、男子が大満足になるのは100%確実と言える。そんな子猿どもと比べたら女子は難しいが、この武器なら大丈夫との予想を胸に、女子冒険者の演出が始まった。大剣を背負った男子冒険者が窓辺へ移動し、女子冒険者が中央に浮かび上がる。クラスメイトの目にまず映ったのはスカート丈に合わせた深紅のハーフマントで、予想に違わずとても好評だった。そして満を持し、女子冒険者がクルッと回転して背中の武器を見せる。すると、
「「キャ――!!」」「「カワイイ――!!」」
黄色い歓声が教室を満たした。金と銀を基調とし、純白の羽が二枚付いたキューピットの弓に、女子はハートを射抜かれてしまったのだ。頃合いを計り、水谷さんの最後の説明が入った。
「男子はごらんのように、五種類の中から好きな武器を選ぶことができます。実技棟の従業員制服を豪華にしたぶん女子の武器は一種類ですが、その代わり教育AIと交渉し、キューピットの弓の使用許可をもらいました。マントの丈についてはクラスHPでアンケートを取り、柔軟に対応しようと思っています」
昨夜話し合った結果、男子の籠手と女子のブーツは、現時点では伏せることになった。同時開催案における回転率の有用性を伝える方が、より重要と判断したのである。制服責任者としての役目を終えた水谷さんへ、実行委員主導で盛大な拍手を贈ったのち、回転率の有用性に話題を移行すべく智樹が舵を切った。
「二か所開催案における、3Dの虚像では賄えない備品を俺達は検証しました。その結果、八つのティアラ、四種類の制服と六種類の武器、そしてティアラを乗せる台が、実際に用意せねばならない備品と判明しました」
実技棟の男女の制服が窓側に、教室棟の男女の制服及び武器が廊下側に改めて映し出され、そして中央に長テーブルの3Dが出現した。天板の上に一辺30センチほどの段ボール箱が八つ置かれ、シャンパンゴールドの布が段ボールごと長テーブルにかぶせられる。そこに八色のティアラが並べられるや、感嘆のため息が教室に溢れた。
「今みなさんが目にしているのが、実際に制作する備品の全てです。実技棟でお客様が身に付けるドレスやタキシード、教室でお客様が身に付ける戦闘服や武器は、すべて3Dで賄われます。そのメリットを、去年の文化祭で四冠を成し遂げた旧十組の眠留に、説明してもらいましょう」
注目を集めるのは覚悟していたけど、立ち上がると同時になぜか拍手が鳴り響き、僕は半ば腰砕けになった。しかしそれがウケて爆笑が沸き起こったお陰で、落ち着きを取り戻すことができた。
「旧十組の四冠の秘訣を一言で表すなら、『回転率の高さ』になるでしょう。メニューを一種類に限定し、お客様がテーブルに着くなり入れたての紅茶と焼きたてのお菓子を・・・」
四冠の軌跡は六学年共通の学内ネットに去年掲載しており、閲覧者数五千という大記録を樹立していた。その記事を書いたのは香取さんで、かつ今僕が読んでいる原稿を書いてくれたのも香取さんだったから、クラスメイト達は回転率のメリットを心に素早く染み渡らせたようだった。僕は活舌よく話を進めていった。
「湖校写真館に足を運んでくださったお客様に、3D衣装を重ねるだけなら、着替えの時間を省けます。それどころか、3D衣装をまとう工程を、魔法による変身のように演出することもできます。待ち時間中にドレスとタキシードを決めて頂いたお客様には、背景の舞踏会会場を無料でグレードアップする等の特典を付ければ、写真撮影に要する時間は更に短くなるでしょう。回転率が高ければ料金を安くでき、料金が安ければ多数の来客数を見込め、大勢の人達が喜ぶ様子を目の当たりにすれば、働くのが楽しくて仕方なくなる。そんな文化祭を、みんなと体験できたらいいなって、僕は思います」
アクリル窓を振動させるほどの雄叫びと拍手が轟くも今回は腰砕けにならず、四方にペコペコお辞儀して着席した。二度目の爆笑に照れていると、智樹が溌剌とした声を放った。
「時間が差し迫って来たので、まとめに入ります。明日明後日の土日を使いクラス展示の三案についてHPで話し合い、日曜の二十時から三十分間、暫定投票を行います。時間の都合の付かない人は事前投票も受け付けていますから、お気軽にご利用ください。クラス展示が三つの案のどれになっても、男女三人ずつの六人チームによるローテーションは変わりません。部活やサークルの展示に参加する予定のある人はローテーションを調整しますので、クラスHPの専用掲示板に遠慮せず書き込んでください。俺からは以上です。質問はありますか」
ポカンやポケ~系の表情をしているクラスメイトが半数近くいたため智樹が尋ねたところ、二カ所開催で確定した気になっていたとその人達は答えた。智樹は「眠留の猿真似だが」と余計な一言を加えて、HRを締めくくった。
「研究学校には、過去の労力を惜しむなかれ、という鉄則があります。学問の未開領域に分け入り、そこに眠る宝物を世界で初めて見つけたいなら、無数の失敗と多大な無駄を覚悟せよという意味ですね。それと同種の事態に、ニ十組は直面しています。確かに俺ら実行委員は、二カ所開催案にそれなりの時間を費やしました。ですがみなさん、どうかそれを無視して、クラス展示について話し合ってください。その先にこそ、世界に通用する研究者になる未来が拓けていると、俺は信じています」
キーンコーンカーンコーン♪
計ったように四限終了のチャイムが鳴り、文化祭のHRは無事終了した。ただ、
「クオリティーが去年と全然違う!」「うん、ビックリするよね!」
に類する会話が至る所でされていたのは意味が分からず、僕は首をしきりと捻っていた。
その日のパワーランチはお休みになり、僕らは久しぶりにお昼ご飯をのんびり食べた。けど途中から何となく物足りなさを感じて、またそれは他の実行委員達も同じだったらしく、結局十人で集まり文化祭の話をしまくってしまった。
まあ楽しかったから、全然いいんだけどさ。
「スカーフは自分の好きな柄にデザインできます」
との説明をされたものだからさあ大変。教育AIが男子生徒一人一人の周囲に相殺音壁を展開せねばならぬ事態に、教室はなってしまったのである。帰宅したら咲耶さんに、謝っておかなきゃな・・・
それはさて置き、男子の蝶ネクタイも思いのほか好評で実行委員は胸をなでおろした。僕らの学年の男子は自分達が脇役なことを重々承知しているから従業員制服の男女差に文句は出ないと予想していたが、それでも委員全員で安堵の目配せをしたものだった。
という教室の空気がある内に、
「実技棟は女子に比重が傾いたので、教室棟の『冒険者服』は男子に比重を傾けました」
水谷さんが冒険者の個所を強調して皆に語りかけた。と同時に神々しい五つの武器が空中に出現し、次いで深紅のロングマントをたなびかせた男子冒険者の後ろ姿が中央に浮かび上がり、そして両手剣が煌々と輝きながら冒険者の背中に収まった。その途端、
「「「ウオオオ――ッッ!!」」」
野郎どもの雄叫びが教室を揺るがした。教育AIは今度は女子を、相殺音壁で守らなければならなかったのだった。
カッコイイ武器を持たせさえすれば、男子が大満足になるのは100%確実と言える。そんな子猿どもと比べたら女子は難しいが、この武器なら大丈夫との予想を胸に、女子冒険者の演出が始まった。大剣を背負った男子冒険者が窓辺へ移動し、女子冒険者が中央に浮かび上がる。クラスメイトの目にまず映ったのはスカート丈に合わせた深紅のハーフマントで、予想に違わずとても好評だった。そして満を持し、女子冒険者がクルッと回転して背中の武器を見せる。すると、
「「キャ――!!」」「「カワイイ――!!」」
黄色い歓声が教室を満たした。金と銀を基調とし、純白の羽が二枚付いたキューピットの弓に、女子はハートを射抜かれてしまったのだ。頃合いを計り、水谷さんの最後の説明が入った。
「男子はごらんのように、五種類の中から好きな武器を選ぶことができます。実技棟の従業員制服を豪華にしたぶん女子の武器は一種類ですが、その代わり教育AIと交渉し、キューピットの弓の使用許可をもらいました。マントの丈についてはクラスHPでアンケートを取り、柔軟に対応しようと思っています」
昨夜話し合った結果、男子の籠手と女子のブーツは、現時点では伏せることになった。同時開催案における回転率の有用性を伝える方が、より重要と判断したのである。制服責任者としての役目を終えた水谷さんへ、実行委員主導で盛大な拍手を贈ったのち、回転率の有用性に話題を移行すべく智樹が舵を切った。
「二か所開催案における、3Dの虚像では賄えない備品を俺達は検証しました。その結果、八つのティアラ、四種類の制服と六種類の武器、そしてティアラを乗せる台が、実際に用意せねばならない備品と判明しました」
実技棟の男女の制服が窓側に、教室棟の男女の制服及び武器が廊下側に改めて映し出され、そして中央に長テーブルの3Dが出現した。天板の上に一辺30センチほどの段ボール箱が八つ置かれ、シャンパンゴールドの布が段ボールごと長テーブルにかぶせられる。そこに八色のティアラが並べられるや、感嘆のため息が教室に溢れた。
「今みなさんが目にしているのが、実際に制作する備品の全てです。実技棟でお客様が身に付けるドレスやタキシード、教室でお客様が身に付ける戦闘服や武器は、すべて3Dで賄われます。そのメリットを、去年の文化祭で四冠を成し遂げた旧十組の眠留に、説明してもらいましょう」
注目を集めるのは覚悟していたけど、立ち上がると同時になぜか拍手が鳴り響き、僕は半ば腰砕けになった。しかしそれがウケて爆笑が沸き起こったお陰で、落ち着きを取り戻すことができた。
「旧十組の四冠の秘訣を一言で表すなら、『回転率の高さ』になるでしょう。メニューを一種類に限定し、お客様がテーブルに着くなり入れたての紅茶と焼きたてのお菓子を・・・」
四冠の軌跡は六学年共通の学内ネットに去年掲載しており、閲覧者数五千という大記録を樹立していた。その記事を書いたのは香取さんで、かつ今僕が読んでいる原稿を書いてくれたのも香取さんだったから、クラスメイト達は回転率のメリットを心に素早く染み渡らせたようだった。僕は活舌よく話を進めていった。
「湖校写真館に足を運んでくださったお客様に、3D衣装を重ねるだけなら、着替えの時間を省けます。それどころか、3D衣装をまとう工程を、魔法による変身のように演出することもできます。待ち時間中にドレスとタキシードを決めて頂いたお客様には、背景の舞踏会会場を無料でグレードアップする等の特典を付ければ、写真撮影に要する時間は更に短くなるでしょう。回転率が高ければ料金を安くでき、料金が安ければ多数の来客数を見込め、大勢の人達が喜ぶ様子を目の当たりにすれば、働くのが楽しくて仕方なくなる。そんな文化祭を、みんなと体験できたらいいなって、僕は思います」
アクリル窓を振動させるほどの雄叫びと拍手が轟くも今回は腰砕けにならず、四方にペコペコお辞儀して着席した。二度目の爆笑に照れていると、智樹が溌剌とした声を放った。
「時間が差し迫って来たので、まとめに入ります。明日明後日の土日を使いクラス展示の三案についてHPで話し合い、日曜の二十時から三十分間、暫定投票を行います。時間の都合の付かない人は事前投票も受け付けていますから、お気軽にご利用ください。クラス展示が三つの案のどれになっても、男女三人ずつの六人チームによるローテーションは変わりません。部活やサークルの展示に参加する予定のある人はローテーションを調整しますので、クラスHPの専用掲示板に遠慮せず書き込んでください。俺からは以上です。質問はありますか」
ポカンやポケ~系の表情をしているクラスメイトが半数近くいたため智樹が尋ねたところ、二カ所開催で確定した気になっていたとその人達は答えた。智樹は「眠留の猿真似だが」と余計な一言を加えて、HRを締めくくった。
「研究学校には、過去の労力を惜しむなかれ、という鉄則があります。学問の未開領域に分け入り、そこに眠る宝物を世界で初めて見つけたいなら、無数の失敗と多大な無駄を覚悟せよという意味ですね。それと同種の事態に、ニ十組は直面しています。確かに俺ら実行委員は、二カ所開催案にそれなりの時間を費やしました。ですがみなさん、どうかそれを無視して、クラス展示について話し合ってください。その先にこそ、世界に通用する研究者になる未来が拓けていると、俺は信じています」
キーンコーンカーンコーン♪
計ったように四限終了のチャイムが鳴り、文化祭のHRは無事終了した。ただ、
「クオリティーが去年と全然違う!」「うん、ビックリするよね!」
に類する会話が至る所でされていたのは意味が分からず、僕は首をしきりと捻っていた。
その日のパワーランチはお休みになり、僕らは久しぶりにお昼ご飯をのんびり食べた。けど途中から何となく物足りなさを感じて、またそれは他の実行委員達も同じだったらしく、結局十人で集まり文化祭の話をしまくってしまった。
まあ楽しかったから、全然いいんだけどさ。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
序盤で殺される悪役貴族に転生した俺、前世のスキルが残っているため、勇者よりも強くなってしまう〜主人公がキレてるけど気にしません
そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
大人気ゲーム「剣と魔法のファンタジー」の悪役貴族に転生した俺。
貴族という血統でありながら、何も努力しない怠惰な公爵家の令息。
序盤で王国から追放されてしまうざまぁ対象。
だがどうやら前世でプレイしていたスキルが引き継がれているようで、最強な件。
そんで王国の為に暗躍してたら、主人公がキレて来たんだが?
「お前なんかにヒロインは渡さないぞ!?」
「俺は別に構わないぞ? 王国の為に暗躍中だ」
「ふざけんな! 原作をぶっ壊しやがって、殺してやる」
「すまないが、俺には勝てないぞ?」
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル総合週間ランキング40位入り。1300スター、3800フォロワーを達成!
社畜がひとり美女に囲まれなぜか戦場に~ヘタレの望まぬ成り上がり~
のらしろ
ライト文芸
都内のメーカーに勤務する蒼草秀長が、台風が接近する悪天候の中、お客様のいる北海道に出張することになった。
移動中の飛行機において、日頃の疲れから睡魔に襲われ爆睡し、次に気がついたときには、前線に向かう輸送機の中だった。
そこは、半世紀に渡り2つの大国が戦争を続けている異世界に直前に亡くなったボイラー修理工のグラスに魂だけが転移した。
グラスは周りから『ノラシロ』少尉と揶揄される、不出来な士官として前線に送られる途中だった。
蒼草秀長自身も魂の転移した先のグラスも共に争いごとが大嫌いな、しかも、血を見るのが嫌いというか、血を見て冷静でいられないおおよそ軍人の適正を全く欠いた人間であり、一人の士官として一人の軍人として、この厳しい世界で生きていけるのか甚だ疑問だ。
彼を乗せた輸送機が敵側兵士も多数いるジャングルで墜落する。
平和な日本から戦国さながらの厳しいこの異世界で、ノラシロ少尉ことヘタレ代表の蒼草秀長改めグラスが、はみ出しものの仲間とともに仕出かす騒動数々。
果たして彼は、過酷なこの異世界で生きていけるのだろか
主人公が、敵味方を問わず、殺さずに戦争をしていく残酷シーンの少ない戦記物です。
便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~
卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。
店主の天さんは、実は天狗だ。
もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。
「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。
神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。
仲間にも、実は大妖怪がいたりして。
コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん!
(あ、いえ、ただの便利屋です。)
-----------------------------
ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。
カクヨムとノベプラにも掲載しています。
あやかし猫社長は契約花嫁を逃さない
有沢真尋
キャラ文芸
☆第七回キャラ文芸大賞奨励賞受賞☆応援ありがとうございます!
限界社畜生活を送るズボラOLの古河龍子は、ある日「自宅と会社がつながってれば通勤が楽なのに」と願望を口にしてしまう。
あろうことか願いは叶ってしまい、自宅の押入れと自社の社長室がつながってしまった。
その上、社長の本性が猫のあやかしで、近頃自分の意志とは無関係に猫化する現象に悩まされている、というトップシークレットまで知ってしまうことに。
(これは知らなかったことにしておきたい……!)と見て見ぬふりをしようとした龍子だが、【猫化を抑制する】特殊能力持ちであることが明らかになり、猫社長から「片時も俺のそばを離れないでもらいたい」と懇願される。
「人助けならぬ猫助けなら致し方ない」と半ば強引に納得させられて……。
これは、思わぬことから同居生活を送ることになった猫社長と平社員が、仕事とプライベートを密に過ごし、またたびに酔ったりご当地グルメに舌鼓を打ったりしながら少しずつ歩み寄る物語です。
※「小説家になろう」にも公開しています。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
おきつねさんとちょっと晩酌
木嶋うめ香
キャラ文芸
私、三浦由衣二十五歳。
付き合っていた筈の会社の先輩が、突然結婚発表をして大ショック。
不本意ながら、そのお祝いの会に出席した帰り、家の近くの神社に立ち寄ったの。
お稲荷様の赤い鳥居を何本も通って、お参りした後に向かった先は小さな狐さんの像。
狛犬さんの様な大きな二体の狐の像の近くに、ひっそりと鎮座している小さな狐の像に愚痴を聞いてもらった私は、うっかりそこで眠ってしまったみたい。
気がついたら知らない場所で二つ折りした座蒲団を枕に眠ってた。
慌てて飛び起きたら、袴姿の男の人がアツアツのうどんの丼を差し出してきた。
え、食べていいの?
おいしい、これ、おいしいよ。
泣きながら食べて、熱燗も頂いて。
満足したらまた眠っちゃった。
神社の管理として、夜にだけここに居るという紺さんに、またいらっしゃいと見送られ帰った私は、家の前に立つ人影に首を傾げた。
深川あやかし綺譚 粋と人情とときどきコロッケ
高井うしお
キャラ文芸
妻に失踪された男、氷川 衛は一人娘の瑞葉とともに義母のミユキと東京の下町、深川で同居をはじめる。
ミユキの経営する総菜屋はまったく流行っていないが、実は人外のあやかしの問題解決をするよろず屋をして生計を立てていた。
衛は総菜屋をやりながら、よろず屋稼業の手伝いもさせられる羽目に。
衛と瑞葉から見た、下町深川の風景とおかしなお客の数々。そして妻穂乃香の行方は……。
※一日三回更新します。
※10万字前後で一旦完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる