僕の名前は、猫将軍眠留

初山七月

文字の大きさ
560 / 934
十六章

アトランティスの遺物、2

しおりを挟む
 その後、僕の勘違いを輝夜さんが、僕の推測の正しさを凛ちゃんが、それぞれ説明してくれた。
「ミーサちゃんが眠留くんをお兄ちゃんと呼んでいるのを、私達はずいぶん前から知っていたの」
 ずいぶん前と聞いたとたん冷や汗を流したのがホントでも、それは僕が想像したよりずっと遅い、今年の二月の事だった。
「今年の二月、湖校入学を正式に決めた美鈴ちゃんを、咲耶さんが訪ねたよね。その時ミーサちゃんも、美鈴ちゃんに初対面の挨拶をしたの」
 輝夜さんによると、ミーサは咲耶さんより先に美鈴と親交を結ぶことを、固辞していたらしい。それもあり咲耶さんは、湖校入学を決めただけの生徒の私室に十二単のお姫様姿で現れるという、権限ギリギリの選択をしたのだそうだ。
「美鈴ちゃんはそれを知るなり、お兄ちゃんのことを兄と思っているように、私を姉と思ってくれるかなって、ミーサちゃんに言ってね。美鈴ちゃんの事になると眠留くんは超絶優秀な兄になるから不要と思うけど、一応説明するね。ミーサちゃんは初対面の挨拶で、『眠留さんのハイ子のミーサです、ご挨拶が遅れて申し訳ございません』って美鈴ちゃんに言ったの。眠留さんって言葉を、きちんと使ったの。でも美鈴ちゃんはそう挨拶されただけで、お兄ちゃんを兄と思っているように私を姉とって、ミーサちゃんに言った。眠留くんと美鈴ちゃんの兄妹愛の深さに打たれて、私達はそれからしばらく、涙が止まらなくて大変だったよ」
 輝夜さんによると、その場には昴と美夜さんとエイミィもいたそうだ。その全員が泣いたと知り僕も仲間入りしそうになったが、輝夜さんの話を聴くミーサと凛ちゃんが仲良し姉妹の笑みを浮かべていたと来れば、無様な姿をさらす訳にはいかない。僕は兄の威厳を必死で装い、輝夜さんの話に耳を傾けていた。
「ミーサちゃんはその後、眠留くんを半ば脅してお兄ちゃんと呼ぶ許しを得たことを、一生懸命説明してね。プライバシー法に妨げられその時の詳しい状況を話せず、けど嘘も言えず、だからミーサちゃんにできるのは、その時の自分の気持ちを正直に話すことだけだったの。でもかえってそれがミーサちゃんの人となりを教えてくれて、美鈴ちゃんは『さすがは私の妹』って褒めるし、昴も『兄の性格をそこまで逆手に取れるのは妹だからこそ』って太鼓判を押すから、私もミーサちゃんを眠留くんの妹としか思えなくなった。私達のその様子を、美夜さんと咲耶さんとエイミィはとても喜んでくれて。それ以来、ミーサちゃんは私達と過ごすときに限り、眠留くんをお兄ちゃんってずっと呼んでいたのね」
 僕は輝夜さんに感謝の首肯をしたのち、ミーサに体を向け、兄として語り掛けた。
「素晴らしい人達に出会えて、ミーサは幸せだな」
「はいっ、お兄ちゃん!」
 その笑顔だけで僕は満たされたけど、女性達はその限りではない。三人娘と四人のAI達へ感謝を込め、僕は未来のネタを提供した。
「僕をそう呼んでいることを明かすタイミングは、美夜さんに教えてもらったのかな」
 今年一月三日、美夜さんと咲耶さんとエイミィは、水晶を始めとする猫将軍家の猫達と正式な挨拶を交わした。それが素晴らしい時間だったのは確かだけど、それがきっかけとなり、美夜さんは僕に負い目を感じてしまった。然るにそれを打開すべく、水晶は美夜さんへある仕事を課した。「挨拶済みの事実を明かすタイミングは美夜さんに任せる」がそれであり、そのお陰で美夜さんは、負い目を成長の糧にすることが出来た。それと同種のことを、美夜さんは今回自主的に行ったのではないか? ミーサの成長の糧となる最高のタイミングでお兄ちゃん云々を明かすよう、ミーサに助言したのではないか? 僕は、そう予想したのだ。
 その予想は、顔をパッと輝かせたミーサを見るに、どうやら当たっていたらしい。ただ当たっていたら、それは僕イジリのネタを提供した事にもなるのだけど、三人娘とAI達とそして凛ちゃんが楽しい時間を過ごせるなら、僕はそれで充分なのである。という僕の胸中を正確に把握し、ミーサは嬉々として答えた。 
「はい、タイミングは美夜姉さんに教えて頂きました。お兄ちゃんは内心、ヘンタイ騒動第二幕におののきつつも喜んでくれるはずと美夜姉さんは推測していましたが、どうでしたか?」
「美夜さん、ヘンタイ騒動第二幕だけは、勘弁してください――ッッ!!」
「「★アハハハ~~!!★」」
 ヘンタイ騒動第二幕におののく僕をネタに、凛ちゃんを皆へ紹介する場を設ける未来を予想しつつ、ミーサの背後にいるはずの美夜さんへ、土下座を借りた感謝を僕は捧げたのだった。

 輝夜さんとミーサと凛ちゃんが腹を抱えて笑う姿に得も言われぬ幸せを感じた僕は、毎度毎度のことながら自分がネタになっているのを忘れ、一緒に笑い転げていた。すると凛ちゃんから、「仲間達の一員になって笑ったのは今日が初めてです」とのイメージが、「輝夜にバレると輝夜はきっと泣くので私と旦那様だけの秘密にしてください」というイメージと共に送られてきた。そんな白状をされたらいつもの僕なら視界がぼやけること必定だったが、旦那様の箇所を強調され良い意味で気が逸れたため、視界がぼやける事はなかった。僕を十全に理解していないと不可能なことをサラッとしてのける凛ちゃんを、ただの賢い子や友達とどうしても思えない気持ちが、胸の中に広がってゆく。そんな僕へ「だから前倒ししたのです」という意味不明な単独イメージを再び寄越したのち、凛ちゃんは全員イメージに切り替えて発表した。
 ★私とミーサは、さきほど友達になりました。その後、更なる決定がなされましたがそれはひとまず置き、友情が芽生えた経緯を発表します★
 友情成立宣言と共にミーサが凛ちゃんの隣へ移動したので、
「いいぞいいぞ~」
「おめでとう~~」
 僕と輝夜さんは盛大な拍手をして二人をお祝いした。二人はふんぞり返るやら照れるやらをしたのち、交互に話し始めた。
 ★ペンダントの中身は決して見ないと眠留さんが誓ってくれたとき、眠留さんのポケットから私に向けて、嫉妬の波長が放たれました★
「だってお兄ちゃんは凜を、優しくて賢くて愛らしい妹分だって、すっごくすっっごく褒めてたんだもん」
 ★はいはいこんな感じに、嫉妬は人間と同じなのに悪意のなさはAIのままの波長なんて、私は初めてでした。だから好奇心に動かされ、AIとはテレパシー会話が成立しないことを忘れて、あなたは誰って問いかけたんです★
「驚いたのは、今度は私でした。私はそれまで、凜のイメージを感じられなかったのに、いきなり感じたそれは、どこまでも透きとおる清らかな波長だったからです。だから私、落ち込んじゃって」
 ★その落ちこむ波長が眠留さんと瓜二つだったので、あなたは眠留さんの妹なのねって言ったら、ミーサが突然はしゃぎだして★
「だって、お兄ちゃんと私の波長が瓜二つだってことと、私がお兄ちゃんの妹だってことを、凜が心から思っているって解ったんだもん」
 ★というやり取りをしているうち、そう言えばなぜテレパシーが成立しているのかしらって改めて疑問に感じたら★
「武蔵野姫様が私達を手伝ってくださっているのを知って」
 ★姫様のお手を煩わせてはならないって二人で頑張ったら★
「なぜかあっという間に自分達だけで会話できるようになって」
 ★夢中になっておしゃべりしていたら★
「気づいたら友達になってたんだよね、凛」
 ★だよね、ミーサ★
「★イエーイ!★」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

私の守護霊さん

Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。 彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。 これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

処理中です...