僕の名前は、猫将軍眠留

初山七月

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 しょうもない事を考えていたのを昴に言い当てられた、数分後。
「ねえねえ、輝夜はやっぱり、前期委員に申請する?」
「うん、そうするつもり。私この学校で、沢山の人と関わってみたいの。昴はやっぱり、体育祭実行委員に申請する?」
 すっかり仲良くなった白銀さんと昴が、互いを名前で呼び合いおしゃべりを楽しんでいる。クラスに二人だけの薙刀部員であることを差し引いても、二人は大層気が合うようだ。それにしても、白銀さんと昴が楽しげに話す様子の、なんと華やかなことか。僕は鼻の下が伸びてしまわぬよう、必死で努力せねばならなかった。
「一年時の体育祭実行委員は、騎士見習いの公式初仕事みたいなものだからね。そういえば北斗も、前期委員希望組だっけ?」 
 女子二人で仲良く椅子を分け合って座る昴が、僕の椅子を単独占拠する北斗へ顔を向けた。北斗め、僕が頭を抱えているうちに、ちゃっかり座りやがって。
「ああ、そのつもりだ。学内ネットに集まる相談事や悩み事は、恐怖のマッドサイエンティストたる我の、かっこうの研究材料だからな」
 前髪を物憂げにかき上げ顔を反り返しそう答えた北斗に、昴の頬がピクリと引き攣った。北斗に、厨二病モードが発動したのだ。内心ため息をつくも、北斗を刺激せぬよう新たな話題を提供する必要性を感じた僕は、身を乗り出しそれを口にしようとした。だがそんなの知るよしもない白銀さんが、天真爛漫の見本のように燃料を投下してしまう。
「北斗君、前期委員になれたら、どうぞよろしくお願いします」
 しまった遅かったかと、僕と昴は地団駄を踏んだ。そんな僕らをよそに、北斗は制服のジャケットをたなびかせ颯爽と立ち上がり仰々しく右手を前にかざして、目を丸くする白銀さんへ皇帝の如く言った。
「ふふふ、勿論だ。期待しているぞ、我が忠実なるじょ‥‥」
「そこまでだ北斗!」
 半ば以上手遅れだが、せめて最後まで言わせぬよう僕は北斗をヘッドロック。阿吽の呼吸で昴が北斗の背後に回り込み、脇腹くすぐりを開始した。弱点を知り尽くす昴に一番の弱点をくすぐられ、北斗は窒息しそうなほど笑い転げている。だが、仕方ない。北斗は、報いを受けなければならないのだ。僕と昴は声をそろえて、北斗を叱りつけた。
「「助手いうな、このオタク!」」

 キーンコーンカーンコーン
 八時二十五分、HR開始のチャイムが鳴った。くすぐられ過ぎて息も絶え絶えだった北斗はなんとか立ち上がり、教壇へ向かった。昴も「またね~」と手を振り、自分の席へ戻って行った。チャイムが鳴り終わり、生徒達のざわめきが止んだころ、北斗の心地よい声が教室に響いた。
「日直の七ッ星北斗です、おはようございます」
「「「おはようございます」」」
 と、まずは皆で一斉に挨拶。その後、
「お~す北斗」
「う~す北斗」
「北斗ち~す」
 等々の、男子生徒達による短いやり取りが続いた。実は北斗、なかなかの人望家なのである。
「では出席を取ります。北条さん」「はい」「青木さん」「はい」「三島君」「はい」
 クラスメイト達の名前が次々呼ばれてゆく。出席取りが終わり、連絡事項に入った。
「前期委員と体育祭実行委員の申請が、今日の昼休み終了をもって締め切られます。申請者が六人未満十一人以上の場合は抽選となり、五限終了と同時にクラスHPにて各委員が発表されます。各委員は明日放課後開かれる会合に出席できるよう、予定を調整しておいてください。日直からの連絡は以上です。どなたか、連絡等ありますか」
 今日は何もないのだろう、教室に静寂が下りた。北斗は涼しい顔で日直を締めくくる。
「それではこれで、HRを終了します」
 一瞬の間を置き、キリリと引き締まった表情をしていた北斗が、慣れない顔は疲れるとばかりに間延びしたマヌケ顔を浮かべた。そのとたん、
「「「ギャハハハ~~!!」」」
 皆の爆笑が炸裂した。
 僕も腹を抱えて笑いつつ、しみじみ思った。
 五日後に迫る日直当番について考えるとヘコタレそうになるけど、教師のいない学校生活って、やっぱ良いものだなあ、と。
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