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1章 生と死の間の世界
第4話 お婆ちゃんの心残り
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「あの、お兄さんたち、良いかしら」
サヨさんを見送った後、謙太と知朗にさっそくお声が掛かる。
見るとふくよかなお婆ちゃんだった。にこにこと笑顔を浮かべたお婆ちゃんは腰も曲がっておらず、とても元気そうに見えた。
「私ここに来たばかりなんだけど、こちらでなんでも飲みたいものを作ってくれるって聞いたの」
「あ、はぁい。お作りできますよ~」
作り方は全て頭に入れられているとサヨさんは言っていたので、そう言い切ってしまって大丈夫だろう。
お客さまに不安な思いをさせてはいけないというのは、客商売の鉄則である。するとお婆ちゃんは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「じゃああのねぇ、あれ、なんて言ったかねぇ、カクテルとか言うやつでねぇ」
お婆ちゃんは飲み物の名前を思い出そうと頑張る。「ええっと、ええっとねぇ」と言いながら、困った様に頬に手を添えた。
「モス、モスなんとかって言っていたと思うんだけどもねぇ」
「モス?」
そう聞いた瞬間に、謙太と知朗の頭の中にひとつのカクテルが思い浮かび、目を見合わせて頷き合う。それは様々な飲み物の作り方が頭にあるからだろう。
「婆ちゃん、それってさ、モスコミュールって言うんじゃねぇか?」
知朗が言うと、お婆ちゃんははっとした様に目を見開いた。
「そう、それ! それが言いたかったよのぉ! ああ~良かったわぁ思い出せて!」
正確には知朗が言い当てたのだがそれはどうでも良い。
「実はねぇ、孫娘がこの前成人してねぇ」
お婆ちゃんはそう嬉しそうに話す。
「それはおめでとうございます~」
「ありがとう。でねぇ、初めてお酒を飲んだんですって。何が良いのか分からなかったら、いつもお世話になってる先輩の人が「これだったら飲みやすいよ」って教えてくれたのが、そのモスなんとかだったんだって。でね、飲んでみたら飲みやすくて美味しかったから、お婆ちゃん今度一緒に飲もうねって言ってくれてねぇ」
「そりゃあ良いお孫さんだな」
「そうなのよぉ。私も本当に嬉しくてねぇ。でも孫娘、息子家族が住んでるところは、そう簡単に行き来できる距離じゃ無くてねぇ。なかなか会えないうちに、私が死んでしまったのよ」
「……そうやったんですか。残念でしたねぇ。お孫さんも楽しみにしてはったでしょうに」
謙太がしんみりと言い知朗も表情を曇らすと、お婆ちゃんは「あらあら」と目を丸くする。
「こんな話しちゃってごめんなさいねぇ。残念だったけど仕方が無いことだったのよ。だって私102歳だったんだから。大往生だったのよぉ」
「102歳!?」
謙太と知朗の驚愕の声が揃う。とても100を超えている様には見えない。
体格が良いこともあるが、豊かな髪も黒々としていて肌艶もとても良い。お孫さんが一緒に飲もうと言うのなら、寝たきりなどでも無く元気で生活していたのだろう。
「あらあら、ほほほ。ここに来て若返ってしまったのかしらねぇ」
お婆ちゃんは嬉しそうに言ってにこにこと笑う。謙太たちは「はぁ~」と驚きのため息を吐くばかりだ。しかしはっと我に返り。
「お婆ちゃんごめんなさい、僕らびっくりしてしもうて。モスコミュールすぐに作りますね」
謙太が慌てると、お婆ちゃんは「ゆっくりで良いわよぉ」と笑顔で言ってくれた。
「いや驚いたぜ婆ちゃん。うちの祖母ちゃん、婆ちゃんより若ぇけどもっと老けてる感じするもんな。まだらな白髪が原因なんかな」
「そうねぇ、確かに白髪がまだらだったら、そう見えるのかも知れないわねぇ」
知朗とお婆ちゃんがそんな話をしている横で、謙太はモスコミュールを作る。
テーブル横の棚からコリンズグラスを用意すると透き通った氷を詰め、シガーで量ったウォッカを入れてジンジャーエールを注ぎ、くし切りのライムを搾り、そのライムも入れたら、バースプーンでステアしてできあがりだ。
「お婆ちゃんお待たせしましたぁ。モスコミュールです」
そう言ってテーブルに置くと、お婆ちゃんはそれを見て「あらまぁ、綺麗ねぇ」と目尻を下げた。淡い琥珀色の透明感のある液体が、しゅわしゅわと細かい泡を立てている。
「ウォッカって言うお酒をジンジャーエールで割って、ライムを搾ったお酒です。まだお酒に慣れてはらへん人にも飲みやすいお味なんですよ」
「そうなのねぇ。私自身はお酒好きなんだけど、こんなハイカラなのは初めてなのよ」
「へぇ。婆ちゃんは何の酒が好きなんだ?」
「ビールが大好きなのよ。だからほら、お腹もこんなになっちゃって~」
お婆ちゃんが笑いながら少し目立つお腹をさすると、知朗も「はははっ」と軽快に笑う。いやそこは笑って良いものなのかどうかと謙太は少し焦ってしまう。
「さぁ、じゃあモス、モスなんとかをいただきましょうかねぇ」
お婆ちゃんは言うと、そっと両手でコリンズグラスを持ってゆっくりと口を付けた。こくりとひと口飲むと「まぁ」と頬を緩ませた。
「本当に飲みやすいわぁ。まるでジュースみたいねぇ」
「普段からお酒を飲んではる方にはジュースの様に感じますよねぇ。でもちゃんとお酒なんですよ」
「ええ、ええ、お酒が入ってる感じはもちろんするわね。でも本当に飲みやすいわぁ。孫娘の言った通りだったわね。ああ、美味しいわぁ」
お婆ちゃんは嬉しそうな表情で天を仰ぐ。するとお婆ちゃんからきらっと光の粒が微かに舞った。
謙太も知朗も錯覚かと思ったが、その小さな輝きは徐々に増えて行き、それと反比例する様にお婆ちゃんの全身が少しずつ薄くなって行った。
「お婆ちゃん!?」
「おい婆ちゃん、どうしたんだよ!」
謙太と知朗が慌てて手を伸ばすが、お婆ちゃんに触れることはできなかった。まるで透明人間の様にすり抜けてしまったのだ。
しかしお婆ちゃんは落ち着いたまま、ゆるやかに笑みを浮かべながら言った。
「お迎えが来たみたいねぇ」
「お迎えって」
「孫娘がすすめてくれた、モスなんとかを飲めなかったのが心残りだったの。一緒に飲めなかったのは残念だけど、これで充分よ。本当にありがとうねぇ」
「お婆ちゃん……」
「婆ちゃん」
謙太と知朗が切なげに顔を歪めると、お婆ちゃんは「あらあら、そんなお顔をしないで」と微笑んだ。
「私は満足できたから、これから転生の流れに行くの。だから悲しくなる必要なんて無いのよ」
そう言ってお婆ちゃんは満面の笑みを浮かべる。謙太と知朗は「そうなのか?」と表情を和らげる。
「そっか、お婆ちゃんはこれから生まれ変わるんですね」
「ええ、楽しみよ。モスなんとか美味しかったわ。ありがとう。じゃあねぇ」
お婆ちゃんがひらひらと手を振ると同時にその姿は霧散し、その場にはまだ中身が入ったコリンズグラスが残された。
「消えてもた……」
「ああ。心残りが無くなったってことなんかな」
謙太と知朗が半ば呆然と呟くと、「そういうことじゃ」としわがれた老人の声が耳に届く。いつの間にかひとりのお爺ちゃんが近くにいて、お婆ちゃんを見送っていた。
「ここはのう、成仏はしたものの、先に進めんもんが集まっとるとこじゃ。あの婆さんは飲みたかった飲み物があったんじゃなぁ。それが叶ったから先に進めたんじゃのう。名前を聞く間も無かったわい」
痩せた小柄なお爺ちゃんだった。半袖のシャツから出ている腕なんて、捻るとぽっきりと折れてしまいそうだ。だが腰もしゃんとして震えもせずまっすぐに立っていた。
「新しいお役目さんじゃの。よろしくの。すまんが大吟醸をもらえるかの。冷酒での」
「あ、はい」
謙太が慌てて動き出す。青い切り子グラスを出して大吟醸を注ぐ。それは外に出してあるのに、不思議ときんと冷えていた。
「お爺ちゃんお待たせしましたぁ。どうぞ~」
「ありがとうのう」
お爺ちゃんはさっそくこくりと口に含んで、嬉しそうに「うんうん、美味しいのう。わしはこれが一番好きなんじゃ」と頬を綻ばせた。
「うむ、ヨリコちゃんとマユコちゃんも、とても良い子たちじゃったからの、お前さんたちも良い子なんじゃろうのう。お役目さんじゃからのう。名前を教えてくれんかのう」
「僕は高輪謙太と言います。よろしくお願いしますねぇ」
「俺は成田知朗。よろしくな」
「謙太坊と知朗坊か。ふむ、謙太坊はともかく知朗坊は言いにくいのう」
「ならトモって呼んでくれ。謙太は俺をそう呼ぶぜ」
「そうか。ではトモ坊じゃの。よろしくの。わしのことはツルさんとでも呼んでくれ。ここで1番の古株じゃ」
「そうなんですかぁ」
と言うことは、ツルさんにはそれだけ先に進みたくない理由があると言うことなのだろう。だがそれはここではきっと愚問だ。
「ここにはいろんな人間がおるからの。少ないが子どもから、わしみたいな年寄りまでの。じゃからいろんな注文があるじゃろうが、よろしく頼むぞい」
「はい。頑張らせてもらいますねぇ」
「おう」
「うむ、良い返事じゃ」
ツルさんは満足げに目を細めた。
しかしさっそく気になることがひとつ。
前のお役目だった女性ふたりは扉から出て行ったのに、モスコミュールのお婆ちゃんはこの場で消えた。
お婆ちゃんは転生するために先に進むと言っていたが、ではお役目だったふたりはどういうことなのか。お役目だという理由で課程が違うのだろうか。
ならそのうち謙太と知朗の知るところになるだろうか。
サヨさんを見送った後、謙太と知朗にさっそくお声が掛かる。
見るとふくよかなお婆ちゃんだった。にこにこと笑顔を浮かべたお婆ちゃんは腰も曲がっておらず、とても元気そうに見えた。
「私ここに来たばかりなんだけど、こちらでなんでも飲みたいものを作ってくれるって聞いたの」
「あ、はぁい。お作りできますよ~」
作り方は全て頭に入れられているとサヨさんは言っていたので、そう言い切ってしまって大丈夫だろう。
お客さまに不安な思いをさせてはいけないというのは、客商売の鉄則である。するとお婆ちゃんは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「じゃああのねぇ、あれ、なんて言ったかねぇ、カクテルとか言うやつでねぇ」
お婆ちゃんは飲み物の名前を思い出そうと頑張る。「ええっと、ええっとねぇ」と言いながら、困った様に頬に手を添えた。
「モス、モスなんとかって言っていたと思うんだけどもねぇ」
「モス?」
そう聞いた瞬間に、謙太と知朗の頭の中にひとつのカクテルが思い浮かび、目を見合わせて頷き合う。それは様々な飲み物の作り方が頭にあるからだろう。
「婆ちゃん、それってさ、モスコミュールって言うんじゃねぇか?」
知朗が言うと、お婆ちゃんははっとした様に目を見開いた。
「そう、それ! それが言いたかったよのぉ! ああ~良かったわぁ思い出せて!」
正確には知朗が言い当てたのだがそれはどうでも良い。
「実はねぇ、孫娘がこの前成人してねぇ」
お婆ちゃんはそう嬉しそうに話す。
「それはおめでとうございます~」
「ありがとう。でねぇ、初めてお酒を飲んだんですって。何が良いのか分からなかったら、いつもお世話になってる先輩の人が「これだったら飲みやすいよ」って教えてくれたのが、そのモスなんとかだったんだって。でね、飲んでみたら飲みやすくて美味しかったから、お婆ちゃん今度一緒に飲もうねって言ってくれてねぇ」
「そりゃあ良いお孫さんだな」
「そうなのよぉ。私も本当に嬉しくてねぇ。でも孫娘、息子家族が住んでるところは、そう簡単に行き来できる距離じゃ無くてねぇ。なかなか会えないうちに、私が死んでしまったのよ」
「……そうやったんですか。残念でしたねぇ。お孫さんも楽しみにしてはったでしょうに」
謙太がしんみりと言い知朗も表情を曇らすと、お婆ちゃんは「あらあら」と目を丸くする。
「こんな話しちゃってごめんなさいねぇ。残念だったけど仕方が無いことだったのよ。だって私102歳だったんだから。大往生だったのよぉ」
「102歳!?」
謙太と知朗の驚愕の声が揃う。とても100を超えている様には見えない。
体格が良いこともあるが、豊かな髪も黒々としていて肌艶もとても良い。お孫さんが一緒に飲もうと言うのなら、寝たきりなどでも無く元気で生活していたのだろう。
「あらあら、ほほほ。ここに来て若返ってしまったのかしらねぇ」
お婆ちゃんは嬉しそうに言ってにこにこと笑う。謙太たちは「はぁ~」と驚きのため息を吐くばかりだ。しかしはっと我に返り。
「お婆ちゃんごめんなさい、僕らびっくりしてしもうて。モスコミュールすぐに作りますね」
謙太が慌てると、お婆ちゃんは「ゆっくりで良いわよぉ」と笑顔で言ってくれた。
「いや驚いたぜ婆ちゃん。うちの祖母ちゃん、婆ちゃんより若ぇけどもっと老けてる感じするもんな。まだらな白髪が原因なんかな」
「そうねぇ、確かに白髪がまだらだったら、そう見えるのかも知れないわねぇ」
知朗とお婆ちゃんがそんな話をしている横で、謙太はモスコミュールを作る。
テーブル横の棚からコリンズグラスを用意すると透き通った氷を詰め、シガーで量ったウォッカを入れてジンジャーエールを注ぎ、くし切りのライムを搾り、そのライムも入れたら、バースプーンでステアしてできあがりだ。
「お婆ちゃんお待たせしましたぁ。モスコミュールです」
そう言ってテーブルに置くと、お婆ちゃんはそれを見て「あらまぁ、綺麗ねぇ」と目尻を下げた。淡い琥珀色の透明感のある液体が、しゅわしゅわと細かい泡を立てている。
「ウォッカって言うお酒をジンジャーエールで割って、ライムを搾ったお酒です。まだお酒に慣れてはらへん人にも飲みやすいお味なんですよ」
「そうなのねぇ。私自身はお酒好きなんだけど、こんなハイカラなのは初めてなのよ」
「へぇ。婆ちゃんは何の酒が好きなんだ?」
「ビールが大好きなのよ。だからほら、お腹もこんなになっちゃって~」
お婆ちゃんが笑いながら少し目立つお腹をさすると、知朗も「はははっ」と軽快に笑う。いやそこは笑って良いものなのかどうかと謙太は少し焦ってしまう。
「さぁ、じゃあモス、モスなんとかをいただきましょうかねぇ」
お婆ちゃんは言うと、そっと両手でコリンズグラスを持ってゆっくりと口を付けた。こくりとひと口飲むと「まぁ」と頬を緩ませた。
「本当に飲みやすいわぁ。まるでジュースみたいねぇ」
「普段からお酒を飲んではる方にはジュースの様に感じますよねぇ。でもちゃんとお酒なんですよ」
「ええ、ええ、お酒が入ってる感じはもちろんするわね。でも本当に飲みやすいわぁ。孫娘の言った通りだったわね。ああ、美味しいわぁ」
お婆ちゃんは嬉しそうな表情で天を仰ぐ。するとお婆ちゃんからきらっと光の粒が微かに舞った。
謙太も知朗も錯覚かと思ったが、その小さな輝きは徐々に増えて行き、それと反比例する様にお婆ちゃんの全身が少しずつ薄くなって行った。
「お婆ちゃん!?」
「おい婆ちゃん、どうしたんだよ!」
謙太と知朗が慌てて手を伸ばすが、お婆ちゃんに触れることはできなかった。まるで透明人間の様にすり抜けてしまったのだ。
しかしお婆ちゃんは落ち着いたまま、ゆるやかに笑みを浮かべながら言った。
「お迎えが来たみたいねぇ」
「お迎えって」
「孫娘がすすめてくれた、モスなんとかを飲めなかったのが心残りだったの。一緒に飲めなかったのは残念だけど、これで充分よ。本当にありがとうねぇ」
「お婆ちゃん……」
「婆ちゃん」
謙太と知朗が切なげに顔を歪めると、お婆ちゃんは「あらあら、そんなお顔をしないで」と微笑んだ。
「私は満足できたから、これから転生の流れに行くの。だから悲しくなる必要なんて無いのよ」
そう言ってお婆ちゃんは満面の笑みを浮かべる。謙太と知朗は「そうなのか?」と表情を和らげる。
「そっか、お婆ちゃんはこれから生まれ変わるんですね」
「ええ、楽しみよ。モスなんとか美味しかったわ。ありがとう。じゃあねぇ」
お婆ちゃんがひらひらと手を振ると同時にその姿は霧散し、その場にはまだ中身が入ったコリンズグラスが残された。
「消えてもた……」
「ああ。心残りが無くなったってことなんかな」
謙太と知朗が半ば呆然と呟くと、「そういうことじゃ」としわがれた老人の声が耳に届く。いつの間にかひとりのお爺ちゃんが近くにいて、お婆ちゃんを見送っていた。
「ここはのう、成仏はしたものの、先に進めんもんが集まっとるとこじゃ。あの婆さんは飲みたかった飲み物があったんじゃなぁ。それが叶ったから先に進めたんじゃのう。名前を聞く間も無かったわい」
痩せた小柄なお爺ちゃんだった。半袖のシャツから出ている腕なんて、捻るとぽっきりと折れてしまいそうだ。だが腰もしゃんとして震えもせずまっすぐに立っていた。
「新しいお役目さんじゃの。よろしくの。すまんが大吟醸をもらえるかの。冷酒での」
「あ、はい」
謙太が慌てて動き出す。青い切り子グラスを出して大吟醸を注ぐ。それは外に出してあるのに、不思議ときんと冷えていた。
「お爺ちゃんお待たせしましたぁ。どうぞ~」
「ありがとうのう」
お爺ちゃんはさっそくこくりと口に含んで、嬉しそうに「うんうん、美味しいのう。わしはこれが一番好きなんじゃ」と頬を綻ばせた。
「うむ、ヨリコちゃんとマユコちゃんも、とても良い子たちじゃったからの、お前さんたちも良い子なんじゃろうのう。お役目さんじゃからのう。名前を教えてくれんかのう」
「僕は高輪謙太と言います。よろしくお願いしますねぇ」
「俺は成田知朗。よろしくな」
「謙太坊と知朗坊か。ふむ、謙太坊はともかく知朗坊は言いにくいのう」
「ならトモって呼んでくれ。謙太は俺をそう呼ぶぜ」
「そうか。ではトモ坊じゃの。よろしくの。わしのことはツルさんとでも呼んでくれ。ここで1番の古株じゃ」
「そうなんですかぁ」
と言うことは、ツルさんにはそれだけ先に進みたくない理由があると言うことなのだろう。だがそれはここではきっと愚問だ。
「ここにはいろんな人間がおるからの。少ないが子どもから、わしみたいな年寄りまでの。じゃからいろんな注文があるじゃろうが、よろしく頼むぞい」
「はい。頑張らせてもらいますねぇ」
「おう」
「うむ、良い返事じゃ」
ツルさんは満足げに目を細めた。
しかしさっそく気になることがひとつ。
前のお役目だった女性ふたりは扉から出て行ったのに、モスコミュールのお婆ちゃんはこの場で消えた。
お婆ちゃんは転生するために先に進むと言っていたが、ではお役目だったふたりはどういうことなのか。お役目だという理由で課程が違うのだろうか。
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