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#116 ドロップクッキーを作ろう。その2
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オーブンに近付くと、更に香りは強くなる。バターと砂糖の香りだ。
オーブンからするジジジジジと言う音は、タイマーが進んでいるもの。切れるとカチッという音がする。アナログなのである。
庫内にランプなどは無いので、中の様子は判らない。タイマーが切れるのを待つしか無い。しかし後少しだ。
そうしている内にカチッと言う音がする。
「や、焼きあがりました?」
「出してみようか」
オーブンをドアを開け、ミトンを付けた手で鉄板を引っ張り出す。庫内の温度が下がらない様に、直ぐに次の鉄板を入れてドアを閉め、タイマーを仕掛けてスイッチを入れた。
さて、焼き上がったばかりのクッキーはどうだろうか。鉄板も少しでも早く冷ましたいので、水で濡らした布の上に置く。
だがそれはあっという間に温くなってしまうので、濯ぎ直してまた鉄板の下に。
「さてと、まずはちゃんと焼けてるかどうかだけど」
壱はターナーで、まだ湯気を上げるクッキーを鉄板から外し、大きな皿に重ならない様に置いて行く。
「食べてみても良いかの?」
茂造が嬉しそうに訊いて来るが、壱は首を振る。
「ちょっと待って。念の為に生焼けになっちゃって無いか見ないとね」
壱はまだ熱いクッキーを手にし、半分に割ってみる。中からもふわりと湯気が上がる。見ると、きちんと中まで焼けていた。
「うん、大丈夫みたい。一応半分に割ってみてね」
言うと、茂造とマユリもクッキーを手にする。先程まで厨房の端の椅子で寛いでいたサユリもこちらに来ていたので、壱が先程割った半分を前に置いてやる。
「じゃあ、頂くとしようかの。生焼けは無いぞい」
「こ、こちらも、大丈夫です。い、頂きます」
「我も頂くとするカピ」
「はい、どうぞ」
全員ほぼ同時にクッキーを口に運ぶ。齧り、じっくりと味わう様に咀嚼する。そしてサユリは満足そうに眼を細め、茂造は嬉しそうに目尻を下げ、マユリは眼を見開いて輝かせた。
「うむ、なかなかカピ」
「甘くて旨いのう。良く出来ておるのう」
「お、美味しい、です! 凄いです!」
それぞれに反応してくれる。
さてレシピを持ち込んだ壱はと言うと、その出来栄えに満足していた。レシピそのものはインターネットに上がっていた完成されたもの。だが作り手の腕やオーブンの調子で出来栄えは幾らでも変わるのだ。
今回生地を作るのはマユリがメインになったが、チェックをしたのは壱。感覚が間違えて無かった事に安堵する。
サクサクしていながら、しっとりもしている。バターの香ばしさと砂糖の甘みが融合し、壱の知る既製品に劣らぬ美味しさである。
2枚目を手にしようとしたその時だった。
「あー! 食べてる!」
「あらあらぁ」
厨房とフロアを繋ぐドアから声が上がる。驚いて振り返ると、メリアンとマーガレットだった。
「イチがクッキー焼くって言うから待ってたんだよ! フロアの掃除しながら! 店長が食べたかったらフロアの大掃除しろって言うから頑張ったのに!」
メリアンは頬を膨らませて怒りを表す。
「あらぁ、アナタは相変わらずちょこちょこさぼっていたじゃ無ぁい?」
「ボクにしては頑張ったの!」
「いやいや、頑張ったのはオレとサントとマーガレットじゃん」
ふたりの後に、カリルとサントも姿を現した。カリルの笑いながらの台詞に、サントも大いに頷いている。
「もーぅ、煩いなぁ」
メリアンはますます膨れっ面に。しかし鼻をひくつかせると、すぐに機嫌は治る。
「それよりっ! クッキー出来たんだね! ボクも食べたい!」
「ワタシもぉ~」
「オレも食いたい!」
「……俺も」
それぞれ主張しながら壱たちの元へ。皿には数枚のクッキーが残っている。
「ほいほい。食べて良いぞい。旨いぞい」
茂造が言うと、4人は同時に手を伸ばした。口にして、「美味しい!」「うめー!」と嬉しそうに声を上げた。
「今、紅茶味の焼いてるからね」
「あらぁ、ワタシお紅茶好きだから楽しみだわぁ」
マーガレットがうっとりと頬を緩ませた。
さて、鉄板が大分冷めて来たので、残りのノーマル生地をマユリとふたりで落として行く。そうしている内にオーブンのタイマーが切れたので、紅茶味のクッキーを取り出し、ノーマル生地を乗せた鉄板を入れた。
「さ、紅茶味だよ」
ターナーで皿に移し、みんなの元へ。まだ熱くて湯気が上がっているのに、みんなの手は躊躇い無く伸びた。
「やだぁ、紅茶味も凄く美味しいじゃ無ぁい。お紅茶の良い香りがしっかり生かされてるのねぇ」
マーガレットが嬉しそうに眼を細めた。
壱も熱いまま口にする。紅茶の深く芳しい香りがしっかりとある。まだ熱いからか、鼻にまで豊かに上がって来る。
その出来栄えに満足し、眼を閉じた。
オーブンからするジジジジジと言う音は、タイマーが進んでいるもの。切れるとカチッという音がする。アナログなのである。
庫内にランプなどは無いので、中の様子は判らない。タイマーが切れるのを待つしか無い。しかし後少しだ。
そうしている内にカチッと言う音がする。
「や、焼きあがりました?」
「出してみようか」
オーブンをドアを開け、ミトンを付けた手で鉄板を引っ張り出す。庫内の温度が下がらない様に、直ぐに次の鉄板を入れてドアを閉め、タイマーを仕掛けてスイッチを入れた。
さて、焼き上がったばかりのクッキーはどうだろうか。鉄板も少しでも早く冷ましたいので、水で濡らした布の上に置く。
だがそれはあっという間に温くなってしまうので、濯ぎ直してまた鉄板の下に。
「さてと、まずはちゃんと焼けてるかどうかだけど」
壱はターナーで、まだ湯気を上げるクッキーを鉄板から外し、大きな皿に重ならない様に置いて行く。
「食べてみても良いかの?」
茂造が嬉しそうに訊いて来るが、壱は首を振る。
「ちょっと待って。念の為に生焼けになっちゃって無いか見ないとね」
壱はまだ熱いクッキーを手にし、半分に割ってみる。中からもふわりと湯気が上がる。見ると、きちんと中まで焼けていた。
「うん、大丈夫みたい。一応半分に割ってみてね」
言うと、茂造とマユリもクッキーを手にする。先程まで厨房の端の椅子で寛いでいたサユリもこちらに来ていたので、壱が先程割った半分を前に置いてやる。
「じゃあ、頂くとしようかの。生焼けは無いぞい」
「こ、こちらも、大丈夫です。い、頂きます」
「我も頂くとするカピ」
「はい、どうぞ」
全員ほぼ同時にクッキーを口に運ぶ。齧り、じっくりと味わう様に咀嚼する。そしてサユリは満足そうに眼を細め、茂造は嬉しそうに目尻を下げ、マユリは眼を見開いて輝かせた。
「うむ、なかなかカピ」
「甘くて旨いのう。良く出来ておるのう」
「お、美味しい、です! 凄いです!」
それぞれに反応してくれる。
さてレシピを持ち込んだ壱はと言うと、その出来栄えに満足していた。レシピそのものはインターネットに上がっていた完成されたもの。だが作り手の腕やオーブンの調子で出来栄えは幾らでも変わるのだ。
今回生地を作るのはマユリがメインになったが、チェックをしたのは壱。感覚が間違えて無かった事に安堵する。
サクサクしていながら、しっとりもしている。バターの香ばしさと砂糖の甘みが融合し、壱の知る既製品に劣らぬ美味しさである。
2枚目を手にしようとしたその時だった。
「あー! 食べてる!」
「あらあらぁ」
厨房とフロアを繋ぐドアから声が上がる。驚いて振り返ると、メリアンとマーガレットだった。
「イチがクッキー焼くって言うから待ってたんだよ! フロアの掃除しながら! 店長が食べたかったらフロアの大掃除しろって言うから頑張ったのに!」
メリアンは頬を膨らませて怒りを表す。
「あらぁ、アナタは相変わらずちょこちょこさぼっていたじゃ無ぁい?」
「ボクにしては頑張ったの!」
「いやいや、頑張ったのはオレとサントとマーガレットじゃん」
ふたりの後に、カリルとサントも姿を現した。カリルの笑いながらの台詞に、サントも大いに頷いている。
「もーぅ、煩いなぁ」
メリアンはますます膨れっ面に。しかし鼻をひくつかせると、すぐに機嫌は治る。
「それよりっ! クッキー出来たんだね! ボクも食べたい!」
「ワタシもぉ~」
「オレも食いたい!」
「……俺も」
それぞれ主張しながら壱たちの元へ。皿には数枚のクッキーが残っている。
「ほいほい。食べて良いぞい。旨いぞい」
茂造が言うと、4人は同時に手を伸ばした。口にして、「美味しい!」「うめー!」と嬉しそうに声を上げた。
「今、紅茶味の焼いてるからね」
「あらぁ、ワタシお紅茶好きだから楽しみだわぁ」
マーガレットがうっとりと頬を緩ませた。
さて、鉄板が大分冷めて来たので、残りのノーマル生地をマユリとふたりで落として行く。そうしている内にオーブンのタイマーが切れたので、紅茶味のクッキーを取り出し、ノーマル生地を乗せた鉄板を入れた。
「さ、紅茶味だよ」
ターナーで皿に移し、みんなの元へ。まだ熱くて湯気が上がっているのに、みんなの手は躊躇い無く伸びた。
「やだぁ、紅茶味も凄く美味しいじゃ無ぁい。お紅茶の良い香りがしっかり生かされてるのねぇ」
マーガレットが嬉しそうに眼を細めた。
壱も熱いまま口にする。紅茶の深く芳しい香りがしっかりとある。まだ熱いからか、鼻にまで豊かに上がって来る。
その出来栄えに満足し、眼を閉じた。
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