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草原を駆ける 1
しおりを挟むリュコスちゃんを三倍にしたぐらいに大きい白狼の、ふさふさの青みがかった銀の毛並みはレイシールド様を連想させて、涼し気なアイスブルーの瞳もまたレイシールド様のものだった。
強い意志を持つ優しい瞳が私を見る。
ラーチェさんは驚いたように目を見開いて、マリエルさんはラーチェさんや私を庇うようにしてくれた。
「大丈夫です、レイシールド様ですよ」
『父上じゃ』
リュコスちゃんが白狼となったレイシールド様の隣にちょこんと座る。
私はレイシールド様の傍に近づくと、そのふさふさの毛並みを撫でた。
「どういうことですの?」
「ラーチェは、本当に従兄について興味がないのだよね」
「マリエル。大丈夫だ、それは兄上だ」
レイシールド様の後ろに隠れて見えなかったのだろう。
シャハル様とシュミット様が警戒するラーチェさんたちの元へと近づいて来て言った。
「確かに、レイシールド様は白狼の血を受けている……とは聞いていましたけれど。でも、白狼そのものとは聞いていません」
「私たちも兄上のこの姿を見るのははじめてだ。クリスティス伯爵家に向かうのに、馬も馬車もいらないと言うから、どうするのかと思えば、白狼の姿になるのが一番早いと言う。それではティディスを驚かせるだけではないかと心配してきてみれば、大丈夫だったようだね」
マリエルさんの隣に並んだシュミット様が、腕を組んで言った。
「さっぱりわかりませんわ」
「ラーチェはわからなくていいよ。ともかく、この白狼がレイ兄様だと分かればそれでいいのだから。ラーチェが大騒ぎするかもしれないと心配してきたのだけれど、やっぱり泣きそうだね。怖がり」
混乱するラーチェさんに、シャハル様が優しく言う。
ラーチェさんは憤慨したように、シャハル様を睨んでいる。怖がりとからかわれたのが気に入らなかったみたいだ。
『ティディス。背中に』
レイシールド様の声が、頭に響いた。リュコスちゃんの声が聞こえるのと一緒。
私が乗りやすいように、レイシールド様は背を低くしてくれた。
シュゼットちゃんとペロネちゃんが、自分たちも一緒に行く、というように、リュコスちゃんの上で手足をぱたぱたさせているので、私は二匹を片手で抱っこしてあげた。
「すまないな、ティディス。……女性と出かけるのなら、馬車が順当なのだろうが。それに、本来ならば、護衛兵も同行させるべきなのだが」
「レイ兄様は強いからね。騎士団はいらない。この皇国でレイ兄様に剣を向けようと思うのは、余程の馬鹿だから、心配ないよ、ティディス」
「クラウヴィオなどは、レイ様が強いばかりに必要とされていないなどとよく泣いているしな」
「レイ兄様が強いというだけで、私たちには護衛が必要だから、泣かなくてもいいのだけれど」
シュミット様がすまなそうに目を伏せて、シャハル様はにこやかに言った。
心配そうなマリエルさんとラーチェんさんに「行ってきます」と挨拶をして、私はレイシールド様の背中の上に飛び乗った。
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