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助力
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ものの数分で、近衛兵団の真っ黒な制服を着たルアンが玄関ホールに戻ってきた。艶やかな深い漆黒の服を纏った黒豹のルアンは、闇に溶けそうだ。いつの間に指示を出したのか、屋敷の門の前には騎乗の準備のできた馬が従者に引き連れられてきている。
「とりあえずは、アズラークが失踪した館へ向かおう。イレリオもすぐに合流するように伝令を飛ばしている。他の団員を連れてくるはずだ」
俺を抱えて素早く馬に乗ろうとしたルアンさんに、俺は慌てて腕を引っ張る。
「ルアンさん、レオンも一緒に来てもらいたいんです。呼んで貰ってもいいですか?」
「レオンも?」
そうだ。レオンも一緒に連れて行ってほしい。それは安全とは言い難いのは知っているけど……俺の考えが正しければ、レオンがいた方がこの先囚われているアズラークを探すのに有利なはずだ。そう思って深く頷く。
すると俺の声が聞こえていたのだろう。廊下の奥から騒がしい足音が響いてきた。
「サタ!!!」
ルアンさんに抱きかかえられた俺に飛びかかろうとする茶色の大型猫。飛びかかってくるその塊は、どこか興奮したように顔を紅潮させたレオンだった。勢いを付けて飛んでくるレオンをルアンさんはひらりと躱すけれど、レオンは地面に器用に着地すると跳ねるようにして叫んだ。
「よく分かんないけど、俺も行く!」
「おい、よく分かんないって……レオン、お前ね」
呆れたようなルアンさんの声。確かにどこへ何しに行くかも言っていないのに勢いよく『行く』と宣言したレオンは無鉄砲にしか見えない。だけどルアンさんの言葉に、レオンは視線を強くすると俺の顔を真っすぐに見つめた。
「サタが困ってるんだろ? だったら俺も行かせてよ。俺、もうサタが急にいなくなっちゃって置いて行かれるの嫌だ」
「レオン……」
少し口を尖らせて呟いた言葉は、少し子供っぽい響きを含んでいるのに。なのにそれは俺の胸に仄かな痛みを齎した。
レオンのところからアズラークの屋敷に連れ去られた時も、ここ数日間部屋に閉じ込められていた時も、レオンには俺は何一つとして伝えられずにいなくなってしまった。特に最初に彼と離れ離れになった時なんて……部屋に戻って俺がいなくて、情に厚い彼はどれほど心配しただろう。騎士団の詰め所に乗り込もうとしていたってルアンさんが言っていたのを思い出す。
だけど強い視線で俺を見つめるレオンに、ルアンさんはふんと鼻を鳴らした。
「サタ、本当にレオンを連れていくつもりか? 大型獣でもこいつはまだガキだ。足手まといになりかねない。サタ一人なら俺が守るけど、こいつは怪我しようが危険な目に遭おうが放っておくぞ」
「なっ! 俺なら平気だよ!」
ルアンさんの冷たい言葉にレオンは食ってかかるように拳を握る。確かにレオンは体は大きいけれど騎士でも兵士でもないし、まだ子供だ。だけどルアンさんの腕の中で俺は彼に縋るように視線を向けた。
「ルアンさん、お願い。アズラークを探すのにレオンが必要なんです……たぶん、だけど。あと俺は守らなくてもいいから、レオンは守ってあげてください」
俺の視線を受けたルアンさんは、困ったような顔を一瞬して。それから深いため息を吐くと、従者に馬を連れてくるように指示を出した。なぜかルアンさんは俺の頭を何度か撫でると、それからレオンの方へと向き直った。
「乗馬の仕方はこの間教えたよな? ポニーじゃないから振り落とされるなよ」
どこか突き放すような冷たい言葉。だけどこれが獣性の強い獣人同士では普通なんだろうか。ルアンさんの言葉にレオンは大きく頷いて、それから俺に笑ってみせた。
「とりあえずは、アズラークが失踪した館へ向かおう。イレリオもすぐに合流するように伝令を飛ばしている。他の団員を連れてくるはずだ」
俺を抱えて素早く馬に乗ろうとしたルアンさんに、俺は慌てて腕を引っ張る。
「ルアンさん、レオンも一緒に来てもらいたいんです。呼んで貰ってもいいですか?」
「レオンも?」
そうだ。レオンも一緒に連れて行ってほしい。それは安全とは言い難いのは知っているけど……俺の考えが正しければ、レオンがいた方がこの先囚われているアズラークを探すのに有利なはずだ。そう思って深く頷く。
すると俺の声が聞こえていたのだろう。廊下の奥から騒がしい足音が響いてきた。
「サタ!!!」
ルアンさんに抱きかかえられた俺に飛びかかろうとする茶色の大型猫。飛びかかってくるその塊は、どこか興奮したように顔を紅潮させたレオンだった。勢いを付けて飛んでくるレオンをルアンさんはひらりと躱すけれど、レオンは地面に器用に着地すると跳ねるようにして叫んだ。
「よく分かんないけど、俺も行く!」
「おい、よく分かんないって……レオン、お前ね」
呆れたようなルアンさんの声。確かにどこへ何しに行くかも言っていないのに勢いよく『行く』と宣言したレオンは無鉄砲にしか見えない。だけどルアンさんの言葉に、レオンは視線を強くすると俺の顔を真っすぐに見つめた。
「サタが困ってるんだろ? だったら俺も行かせてよ。俺、もうサタが急にいなくなっちゃって置いて行かれるの嫌だ」
「レオン……」
少し口を尖らせて呟いた言葉は、少し子供っぽい響きを含んでいるのに。なのにそれは俺の胸に仄かな痛みを齎した。
レオンのところからアズラークの屋敷に連れ去られた時も、ここ数日間部屋に閉じ込められていた時も、レオンには俺は何一つとして伝えられずにいなくなってしまった。特に最初に彼と離れ離れになった時なんて……部屋に戻って俺がいなくて、情に厚い彼はどれほど心配しただろう。騎士団の詰め所に乗り込もうとしていたってルアンさんが言っていたのを思い出す。
だけど強い視線で俺を見つめるレオンに、ルアンさんはふんと鼻を鳴らした。
「サタ、本当にレオンを連れていくつもりか? 大型獣でもこいつはまだガキだ。足手まといになりかねない。サタ一人なら俺が守るけど、こいつは怪我しようが危険な目に遭おうが放っておくぞ」
「なっ! 俺なら平気だよ!」
ルアンさんの冷たい言葉にレオンは食ってかかるように拳を握る。確かにレオンは体は大きいけれど騎士でも兵士でもないし、まだ子供だ。だけどルアンさんの腕の中で俺は彼に縋るように視線を向けた。
「ルアンさん、お願い。アズラークを探すのにレオンが必要なんです……たぶん、だけど。あと俺は守らなくてもいいから、レオンは守ってあげてください」
俺の視線を受けたルアンさんは、困ったような顔を一瞬して。それから深いため息を吐くと、従者に馬を連れてくるように指示を出した。なぜかルアンさんは俺の頭を何度か撫でると、それからレオンの方へと向き直った。
「乗馬の仕方はこの間教えたよな? ポニーじゃないから振り落とされるなよ」
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