ハロウィントリップ!〜異世界で獣人騎士に溺愛された話〜

のらねことすていぬ

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捕獲

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町に出たら、少年の情報はじわじわと少しずつ、だが確実に集まってきた。

背丈の小さい黒猫の男娼。
スラムの隅で見た。
まだ若い三毛猫の獣人とよく連れ立っている。
16歳と言っていたが、それにしては幼すぎる見た目だった。

他人に無関心なようなスラムの住人は、その実(じつ)、異端な者には敏感だ。
細切れでも集まってくる情報に、深夜になる前には彼の居住地の近くまでは突き止めた。

もちろん他の娼婦や男娼も、怪しいものは調べ、悪事を見つけたら取り締まる。
金切り声を上げながら抵抗する娼婦を部下に引き渡し、然るべき場所へと連れていかせる。
情夫が悪事に手を染めているんだろう。
抵抗すればするほど怪しまれるというのに、娼婦はそのことにすら考えつかないのか、大声で罵り喚き散らしている。

その時、ふわりと嗅いだことのある甘い香りがどこからか漂ってきた。
もしやとあたりに視線を巡らせると……いた。

慌てて隠れたようだが、目の端に映った黒髪。
存在を感じたことで一気に体中に血が駆け巡る。

いた。ようやく見つけた。
体中の細胞が、まだ番でさえない少年を欲して騒ぎ出す。
あれは俺のものだと、俺の獲物だと叫びだしたくなる。


「お前たちはそこで待て」


唸り声を押し込め、訝しがる部下を置いてボロボロの建物の階段を進んだ。
外から見た窓の位置でだいたいの部屋を探りだす。
部屋数は少なく簡単な造りの建物だから、部屋の目星はあっという間についた。
それになにより、隠し切れない甘い匂いがこの部屋から漂ってくる。
普通の猫の獣人とは違う、掴みようのない、だがたまらなく魅力的な匂いだ。

静かにノックをする。
中で息を呑むような音がし……ノックを繰り返すうちにわずかに床が軋む音とともに鍵が開かれた。

逃がすまい、とドアを開くと……やはり、白い顔をしてサタが怯えたように立っていた。


「ひっ……!」
「………………見つけた」


俺の声にガタガタと震えだすサタを哀れに思うが、溢れる怒気を止めることができない。
怖がらせたいわけではない。だが彼が俺のもとからいなくなったという事実が、どうしようもなく俺の心をピリピリと波立たせる。
泣き出しそうな顔を見ると抱き寄せて慰めたくなるのと同時に、酷く嗜虐心が刺激された。


「見つけるのに時間がかかってしまったな……来い」

「……っや、」


サタが咄嗟に逃げようとするのを許さず、細い二の腕を掴んだ。
ちょっとでも強く握ったら、折れてしまいそうなほど細い腕だ。
筋肉も脂肪もなく、俺じゃなくても少し力の強い獣人が握れば、簡単に骨まで砕けるだろう。
誰かの庇護の下(もと)でなければ生きられない腕だ。
それなのに、いやいやと首を振るサタに腹が立った。


「俺から逃げられるとでも思ったのか? こんな細い脚で? それとも俺を煽ろうとわざとやっているのか?」

「ちが、ッ……!」


この部屋に入った瞬間から鼻につく、若い雄の匂いがますます怒気を煽る。
最初は猫かと思ったが、これはおそらく虎の子供だ。
まだ成人前だろうか。今は青臭くまだまだ弱いが、いずれ立派な獣に成長する牙を隠した雄の匂いだ。


「若い雄の匂いがするな……ここに番と住んでいるのか?」

「ちが、い、ます……」


サタが涙目でこちらを睨み付けるが、昨夜俺が噛んだばかりの首筋からも雄の匂いが色濃く漂い、余計に腹立たしい。


「庇うのか? こんなに濃く匂いを付けさせておいて。まあ、どのみち関係ない事だ……ここにはもう二度と帰さない」


真っ白だったサタの顔が、さらに色を失う。
そんなに番と引き離されるのが嫌か。
サタを男娼に堕とし、まともな巣すら作れないような雄でもか。
沸々と湧き上がる怒りを歯を食いしばってこらえる。

もう立っているのさえやっとな風情の彼をマントに包み、部屋からゆっくりと部下のもとへ戻った。


「団長……! その者は……?」

「一旦戻る。お前たちは任務を続けろ。副長から指示を出させる」

「では供を……」

「いらん」


明らかに困惑する部下たちを一瞥すると、私邸へ馬を走らせる。
あの様子だと、明日からどんな噂がされるかわかったものじゃない。

だが、頭の中はようやく手に入れた獲物のことで一杯になっていた。
若い騎士たちが信じられないものを見るような目でこちらを見るのも、気にならなかった。

もう二度と逃げられないように、誰にも邪魔されないように、今度こそ俺の『巣』に持ち帰らなくては。
そして俺の腕の中でぐずぐずになるまで甘やかしてしまいたい。
俺の心の中はそれだけだった。













だが。
俺はこの後、彼の大きな秘密に、今まで生きてきたなかで一番と言っていいほど動揺させられることになる。

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