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しばらくして。アパートに戻ると、リリアンが帰ってきていた。どこに行っていたのと自分のことは棚に上げて怒るリリアンに、オーブリーは「……お金を返して」と、手を差し出した。
リリアンが、キョトンとする。
「あるわけないじゃない。ぜんぶ、借金してたとこに返したんだから」
「……自分で作った慰謝料だろ」
リリアンは数秒押し黙ったが、やがて開き直ったように、そうよ、と薄く笑った。
「だからなに? どっちにしろ、お金はもうないわ。あなたの稼ぎが悪いから、貯金もないし」
「……お前のせいで、ぼくはなにもかも失ってしまった」
「知らないわよ。ぜんぶ、あんたが選んだことでしょ? 気に入らないなら、出てけば?」
オーブリーは、お前になんか再会しなきゃよかった、と項垂れ、背を向けた。昨日のうちに荷物は仕事場に移しておいたから、なにも持っていく物はない。リリアンは焦ることも呼び止めることもせず、椅子に座り直し、ただ、日常のように紅茶を吞んでいた。
「……哀しくて、惨めか……いまならきみの気持ち、わかる気がするよ」
苦笑しながら、オーブリーはアパートを後にした。
リリアンが、キョトンとする。
「あるわけないじゃない。ぜんぶ、借金してたとこに返したんだから」
「……自分で作った慰謝料だろ」
リリアンは数秒押し黙ったが、やがて開き直ったように、そうよ、と薄く笑った。
「だからなに? どっちにしろ、お金はもうないわ。あなたの稼ぎが悪いから、貯金もないし」
「……お前のせいで、ぼくはなにもかも失ってしまった」
「知らないわよ。ぜんぶ、あんたが選んだことでしょ? 気に入らないなら、出てけば?」
オーブリーは、お前になんか再会しなきゃよかった、と項垂れ、背を向けた。昨日のうちに荷物は仕事場に移しておいたから、なにも持っていく物はない。リリアンは焦ることも呼び止めることもせず、椅子に座り直し、ただ、日常のように紅茶を吞んでいた。
「……哀しくて、惨めか……いまならきみの気持ち、わかる気がするよ」
苦笑しながら、オーブリーはアパートを後にした。
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