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 ちなみに、ミラベルも似たような顔をしていた。それはそうだろう。音楽室でのやり取りを聞いた者なら、どの口が言うか、と誰もが突っ込みそうなものだ。

「……ミラベル様がおっしゃられたように、あなたにはとてもお似合いの方だと思いますよ」

「それじゃわからない!」

「……顔さえよければ、中身はどうでもいいのでしょう?」

「そ、そこまでは言ってな──っ」

 ぐいっ。マルヴィナは「もういいではないですか」と、オーブリーの腕を引っ張った。

「このあたしが、愛人ではなく、正式に婚約者になってあげますよ。そんな不細工にこだわることはもうありません。ね?」

 顔をぐっと近付け、マルヴィナが魅力的に微笑む。オーブリーは、ちかっ、と頬を赤く染めた。

(……確かにこれだけ美人なら、多少性格に難があっても我慢できる気がする)

 オーブリーは、覚悟を決めた。

「……ミラベル。本当に、婚約解消でいいってことだよね? お互いに納得したうえでのもので、慰謝料は請求しない? あと、マルヴィナ嬢を恨んだりしないって誓える?」

 真剣な顔と声色に、ミラベルと女子生徒はもはや怒りを通り越して、呆れた。女子生徒が、ちらっとミラベルを見る。

 こんな男のどこが好きだったんですかと言わんばかりの視線に、ミラベルは沈黙することしかできなかった。

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