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「……あの、私。一つ年上のお姉様がいて。そこにいる子爵令嬢の噂、いくつか耳にしたことがあって。男好きで、性格も難があるって……だからミラベル様のこと、心配になって」
俯き、ぽつりぽつりと語る女子生徒の手を、ミラベルはそっと握った。
「だからここまで来てくれたのですね……ありがとうございます。情けないことばかり聞かせることになってしまい、すみません」
いいえ、いいえ。女子生徒が、ゆるく頭を振る。
「……愛人を認めろだとか。あまりに理解できないことばかりで混乱しているのですが……人の容姿を、まして婚約者であるミラベル様のことを平気で貶める相手の神経が、もう、わからなすぎて」
「そう言ってもらえると、救われます」
「……まともな人なら、みんなそう思いますよ」
ちょっと。
口を挟んできたのは、マルヴィナだった。
「盗み聞きなんて、最低ですね。まずはそれを謝罪すべきでは?」
ミラベルは女子生徒を庇うように、背に隠した。
「それはあなたが鍵をかけたからではないですか?」
「ちょ、ちょっと待って!」
睨み合う二人のあいだに割って入ってきたのは、オーブリーだった。
「そんなことより、男好きってなに? 性格に難があるって……」
オーブリーが女子生徒に必死の形相で問いかけると、女子生徒はなんとも言えない顔をした。
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「そう言ってもらえると、救われます」
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ちょっと。
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