溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ

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 何を質問しても詰まることなく、かつ、わかりやすく、丁寧に教えてくれたニール。もはや尊敬の念しかわかず、これで本当にあのミックと同じ人間なのかと、真剣に疑いたくなるほどだった。

 揺れる馬車の窓に手を近付け、燃えるような夕焼けの空にかざす。一瞬。ほんとに一瞬だったけれど、隣に座るニールの指先に、この手が触れた瞬間があった。

 そのとき確かに、心臓が跳ねたのだ。はじめての感覚に戸惑い、ニールには少し変な顔をされてしまった。そして、思い知った。

「わたし、やっぱりミックのこと、好きでも何でもなかったんだなあ……」

 ミックに対してあんな感情を持ったことはない。抱き締められて嬉しかったが、今日のように心臓が跳ねたことなど、一度もなかった。

「……ふふ」

 修道院に入る前に、例え一時とはいえ、こんな経験ができたことは幸運だった。まだこれが、恋心かどうかはわからないけど。

「相手がミックならともかく、ニール様だもの。誰でもああなっちゃうわよね」

 フィオナが小さく笑う。どうしてあのミックを好きだなどと勘違いできたのだろうと、自身がひどくおかしく思えたからだ。



「フィオナ! 遅かったじゃないか!!」

 屋敷に着くなり怒鳴ってきたミックに、フィオナはこれ見よがしに大きくため息をついて見せた。

「お父様とお母様には、学園で勉強をしてくるので遅くなりますと伝えておいたはずですが」

 ミックの背後にいる侯爵たちに目を向けるフィオナ。侯爵夫人は「もちろん、ミックには伝えましたとも」と言った。

「それでもね。あなたが心配だったのよ。むろん、フローラじゃなく、あなたがよ?」

 あなた、を強調してくる侯爵夫人。対し、フィオナは冷えた口調で告げた。

「学園で。みながいる前で、ミックがまたも叫んでいましたよ。わたしがフローラになれば、みんなが喜ぶ。侯爵はああ言っていたが、本心ではフローラになってほしいと願っているはずだ、と」

 侯爵がギロッとミックを睨み付けた。ミックは「だってそれが事実でしょう?!」と声を荒げた。


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