婚約者はやさぐれ王子でした

ダイナイ

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本編

17話 追い出されるシルヴィア

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 レオン王子殿下に、おにぎりを持って行ってから数日が経った。
 私は、あの後も何度かレオン王子殿下の部屋をたずねては、料理を置いて来ていた。

 毎回、怒りながら拒絶してくる彼でしたが、必ず料理は受け取ってくれました。
 だけど、日に日に機嫌が悪くなっていくのが分かります。

 それでも、私はあきらめるわけにはいきません。
 何としてでも、私のつくった料理をレオン王子殿下に食べてもらって、少しでも喜んでもらいたいです。

 私は、いつものようにレオン王子殿下の部屋の前まで来ていた。

 コンコンコン

「レオン様、シルヴィアです」

「また来たのか」

 ガチャリ、と部屋の扉が開けられました。
 レオン王子殿下は、不機嫌と一目で分かる表情をしています。

「私は諦めません、何度だって来ますわ」

「はぁ......」

 私は、持って来た料理を渡した。
 これまでの経験から嫌がりながらも、受け取ってくれることは分かっています。

 レオン王子殿下は、いつものように料理を受け取りました。
 だけど、今日は普段とは少しだけ様子が違って見えます。

「シルヴィア公爵令嬢、どうしていつも料理を持ってくるのだ」

「それは、レオン様に食べてほしいからですわ」

うそだな、おまえの考えていることくらいは分かるぞ」

 レオン王子殿下は、私のことを見ながら言いました。

「俺だって、王国で何と呼ばれているかぐらいは知っている。やさぐれ王子だろ?」

「そ、それは......」

「そんなうわさの人物と婚約を結ぶやつなんか、よっぽど王家と親密な関係になりたい貴族しかいない。アーヴァイン公爵家もそうだろう」

「そんなことはありません、レオン様」

 レオン王子殿下は、どこか悲しそうな顔をしています。

「王家に取り入るためにも、俺に好かれようとしているんだな」

「そんな......私はただ」

「うるさい、もう言い訳などは聞きたくはない。俺が悪かったんだ、最初から拒絶しておけば良かったんだ」

 私が何を言っても、聞いてもらえそうにはありません。
 まるで、言葉が届いていないかのようです。

「シルヴィア公爵令嬢、おまえはもう無理をする必要ない。俺に好かれたところで、王家と親密な関係にはなれん。俺にその力はないのだからな」

「それは一体、どういうことですか」

「何、おまえには関係のないことだ。今日からシルヴィア公爵令嬢には、別邸へと移ってもらうことにする」

「別邸、ですか?」

「俺には、この屋敷以外にももう一つ屋敷がある。そう離れてはいないから、移動も苦ではないだろう」

 私には、レオン王子殿下が言っていることの意味がよく分かりませんでした。

「レオン様、考え直してください」

「うるさいっ! それが互いのためだろう。今のままだと、俺とおまえのどちらにも良くない」

 レオン王子殿下は、大きな声で言いました。
 今の発言は、ものすごく感情を込めたように感じます。

 それから、説得しようにも一切話しは聞いてもらえませんでした。

「荷はあとでまとめて送る。だからさっさと別邸へと行ってくれ」

 レオン王子殿下は、頭を抱えながら言ってきました。
 私は、反論することも出来ないまま、屋敷を追い出されることになったのです。



 ◇


 屋敷の入り口。

「シルヴィア様、申し訳ございません。まさかこのようになってしまうとは......」

「いいのですわ、セバスチャン」

「シルヴィア様! こんなのってあんまりです。せっかく料理をして、仲良くなれたばかりだと言うのに!」

「サラも泣かないで」

 見送りには、セバスチャンとサラが来ていました。

「シルヴィア様、別邸はそれほど離れてはおりませんので、すぐに着くことでしょう。それから、荷はあとでまとめてお送りいたします」

「ええ、お願いするわセバスチャン」

 私は、二人に見送られながら馬車へと乗り込んだ。


 ◇


 屋敷を出てから、それほど時間が経っていない頃。
 別邸へと到着しました。

 セバスチャンが言っていた通りで、前の屋敷からはそう離れてはいません。
 私は、一人で入り口まで行きました。

 せっかく前の屋敷での生活にも慣れ、セバスチャンとサラとも仲良くなれたばかりだと言うのに。
 どこか心細さを覚えながら、扉を開けます。

「ようこそシルヴィア様、お待ちしておりました」

 扉の先で、セバスチャンが出迎えてくれました。

「へっ!?」

 私は、とても驚いた。
 馬車には、私と従者しかいなかったはずです。

 セバスチャンには、確かに見送られていたはずです。
 なのに、一体どういうことでしょう。

「シルヴィア様、お部屋へと案内いたします」

「セバスチャン、その......」

「さぁ、足元に気をつけながらついて来てください」

「え、ええ......」

 私は、どこかに落ちないまま、廊下ろうかを歩いた。
 セバスチャンへの疑問と、これからの不安を感じながら、部屋へと歩きました。

 婚約者のレオン王子殿下とは、離れて暮らすことになってしまいました。
 仲良くなれるように頑張って来たと言うのに......。
 私のこれからはどうなってしまうのでしょうか——。
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