【完結】私は落ちこぼれで構いません! ~未来の大魔術師様が今日も私を困らせて来ます~

Rohdea

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14. 未来の大魔術師様のプロポーズ?

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  私の鑑定を終えた子犬ルシアンは、しばらくの間放心したように固まっていた。

  (本当に今日はよく固まるわね。仕方ないけれど)

「…………無効化?」

  ようやくルシアンが言葉を発した。
  そして、さすが未来の大魔術師様の鑑定スキル。ちゃんと正確に読み取っている。
  ただの子犬では無かった!

「初めて聞いたな」
「そう、私の特殊能力は無効化なの。これを応用して感知されないように自分の属性にかけているのよ」
「……フィーリー。お前、とんでもない女だな」
「ふふ、今更でしょ?」
「違いない……」

  私の言葉にルシアンは苦笑する。
  そして、ふぅ……と一息つくとじっと私の目を見つめた。

「フィーリーは俺に隠してた力をバレる心配よりもリシェリエ嬢を助ける事を選んだのか?」
「当然でしょ?  何でそんな当たり前の事を聞いてくるの?」
「当たり前……はは、そうだよな、そんな女だから俺はフィーリーの事がー……」
「ルシアン……?」

  何かを言いかけたルシアンの手がそっと私の頬に触れた。
  その瞬間、ドキッと大きく私の胸が跳ねる。

  (え、な、何!?)

「あ……悪い」

  そう言ってルシアンは、頬を赤く染めながらパッと私の頬から手を離した。

  (……あ)

  そして、その事を寂しく思う自分の心に大きく戸惑う。

  (手が離されてしまって、さ、寂しい…………ではなくて!  いや、それより今のは何!?)

「しかし、これで色々納得したよ」
「な、納得?」

  ルシアンは顔は赤いままだけれど、先程の行動がまるで無かったかのように話を続ける。
  私のこのドキドキを返せと訴えたい。

「お前、無効化のスキルをそうやって属性を隠す為に使用していたという事は、毎日魔力を使っていたという事だろ?」
「そ、そうね……」
「その魔力がいつも少し漏れていた。いったい毎日毎日何に使っているのかと不思議に思っていたんだよ」
「えー……」
「それでも全然減らない魔力量にも驚いていたけどな」
「あはは」

  私が笑って誤魔化すとルシアンがじとっとした目で睨んできた。

  (うぅ!)

「俺が感じ取る印象としてのフィーリーは色々チグハグだった。だから、俺はずっとお前が無属性の魔術が使えない落ちこぼれだなんて思えなかったんだ」

  だがまさか全属性とは思いもしなかったけどな、とルシアンは苦笑しながら続けた。

「ルシアン……」
「いつか話してくれるのを待とうって思ってた…………だから、話してくれてありがとう、嬉しいよ」
「……!」

  ルシアンが笑顔を見せたので、ドキッと私の胸が再び大きく跳ねる。

  (何、その笑顔……どうしてそんなに嬉しそうなの……?)

   嬉しいと言ったルシアンの顔は今までで一度も見たことの無い眩しい笑顔で、私の胸のドキドキとバクバクが止まらない。

「なぁ、フィーリー」
「うん、な、何?」
「やっぱりお前は俺の所にいるべきだ」
「な、何の話?」

  私はルシアンの話の意図が分からず首を傾げる。まだ、ドキドキしたままなので、少し吃ってしまう。
  そんなルシアンは、私の両肩を掴みながら真剣な顔をしながら告げる。

「そんな規格外みたいな力を持ったお前を守れるのは、絶対に俺だけだ」
「え?」
「お前は強いよ。全属性に無効化なんてスキルを持っているんだから。自分の身は自分で守れるだろうよ」
「そ、そうね」

  私は頷く。
  自分でもそう思っているわ。
  それでも、ルシアンは首を横に振る。

「だけど、この先どこからどんな罠や危険がやってくるかなんて分からないだろう?  それに、フィーリーの力の事を知ってお前を狙う奴だって現れるかもしれない」
「…………」
「だから、卒業してもこれからもずっと俺の側にいろ!」
「え!」
「俺が絶対にお前を守るから」

  (これからもずっとって……)

  な、何なの?  この一見プロポーズのような言葉は!
  私は自分の顔がどんどん赤くなっていくのを感じる。

「~~~……!」

  ……よ、要するに、ルシアンは卒業後の進路の事を言っているのよね?
  それなら言い方というものを考えて欲しい。
  これでは、まるでプロ…………あぁ、もう!  勘違いしそうになるじゃないの!

「…………あ、ありがとう?  えっと、か、考えておくわ……」
「うん、そうしてくれ」
「!!」

  ルシアンは優しく微笑んで私の頭を撫でる。
  ルシアンのその顔を見たら、ますます自分の頬に熱が集まった。

  (だから、その微笑みはやめてーーーー!)

  正直に言うなら……何だかんだでその申し出は嬉しい。
  自分自身、何でこんな力を持っているのか分からなくて、しかもそれを今まで誰にも言えなかった。
  だけど、こうして事情を知ったルシアンが、側にいてくれると言うのなら、それはとても心強いと思う。

「私、ルシアンが私の力の事を知ったら、怒り出すのではないかと思っていたの」
「……はぁ?  何でだよ!?」

  ルシアンが憤慨する。

「自分の大魔術師となる地位を脅かすつもりなのかーって怒るかなって。ほら、入学式の時みたいに」
「うっ…………あ、あれは若気の至りだ……忘れてくれ」

  そう言ってバツが悪そうに顔を赤くするルシアンが、何だかとても可愛く見えた。

「……子供だったんだよ。あの頃は色々必死だったんだ」
「ふふ、ルシアンったら」
「悪かったよ!」

  未来の大魔術師様として育てられて来たルシアンにとって、自分より魔力の多い私の存在はすごく衝撃的だったんだろうなぁ。
  何となく今なら分かる。

「だが、今は……違うな」
「え?  違うの?」
「あぁ。俺のそれなりにある力と、この約束された地位がこの先のお前を守る事に繋がるのならそれでいい」
「えっ!?」

  ルシアンのその言葉に私は目を丸くしたまま固まってしまう。
  そんなカチコチに固まった私を見て苦笑しながら、何故かルシアンは私の前に跪く。
   
「ルシアン?」

  そして私の手を取ると手の甲にそっとキスを落とした。

「!?」
「フィーリー、約束するよ。俺は誰もが認める大魔術師となって必ず一生フィーリーを守る」
「ひぇ!?」

  (い、一生!?)

  バックン!

  また、私の心臓が大きく跳ねた。
  今度こそ鼓動が止まるのでは?  と思うくらい。

  (何て言い方をするのよ!!  だから、これではまるでプロ……)

「~~~っ」
「どうした?  フィーリー?」

  私はあまりの恥ずかしさに両手で顔を覆う。

  ──未来の大魔術師様は言葉の選び方が絶対におかしい!  下手くそだ!
  私は心の底からそう思った。

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