14 / 25
14. 未来の大魔術師様のプロポーズ?
しおりを挟む私の鑑定を終えた子犬ルシアンは、しばらくの間放心したように固まっていた。
(本当に今日はよく固まるわね。仕方ないけれど)
「…………無効化?」
ようやくルシアンが言葉を発した。
そして、さすが未来の大魔術師様の鑑定スキル。ちゃんと正確に読み取っている。
ただの子犬では無かった!
「初めて聞いたな」
「そう、私の特殊能力は無効化なの。これを応用して感知されないように自分の属性にかけているのよ」
「……フィーリー。お前、とんでもない女だな」
「ふふ、今更でしょ?」
「違いない……」
私の言葉にルシアンは苦笑する。
そして、ふぅ……と一息つくとじっと私の目を見つめた。
「フィーリーは俺に隠してた力をバレる心配よりもリシェリエ嬢を助ける事を選んだのか?」
「当然でしょ? 何でそんな当たり前の事を聞いてくるの?」
「当たり前……はは、そうだよな、そんな女だから俺はフィーリーの事がー……」
「ルシアン……?」
何かを言いかけたルシアンの手がそっと私の頬に触れた。
その瞬間、ドキッと大きく私の胸が跳ねる。
(え、な、何!?)
「あ……悪い」
そう言ってルシアンは、頬を赤く染めながらパッと私の頬から手を離した。
(……あ)
そして、その事を寂しく思う自分の心に大きく戸惑う。
(手が離されてしまって、さ、寂しい…………ではなくて! いや、それより今のは何!?)
「しかし、これで色々納得したよ」
「な、納得?」
ルシアンは顔は赤いままだけれど、先程の行動がまるで無かったかのように話を続ける。
私のこのドキドキを返せと訴えたい。
「お前、無効化のスキルをそうやって属性を隠す為に使用していたという事は、毎日魔力を使っていたという事だろ?」
「そ、そうね……」
「その魔力がいつも少し漏れていた。いったい毎日毎日何に使っているのかと不思議に思っていたんだよ」
「えー……」
「それでも全然減らない魔力量にも驚いていたけどな」
「あはは」
私が笑って誤魔化すとルシアンがじとっとした目で睨んできた。
(うぅ!)
「俺が感じ取る印象としてのフィーリーは色々チグハグだった。だから、俺はずっとお前が無属性の魔術が使えない落ちこぼれだなんて思えなかったんだ」
だがまさか全属性とは思いもしなかったけどな、とルシアンは苦笑しながら続けた。
「ルシアン……」
「いつか話してくれるのを待とうって思ってた…………だから、話してくれてありがとう、嬉しいよ」
「……!」
ルシアンが笑顔を見せたので、ドキッと私の胸が再び大きく跳ねる。
(何、その笑顔……どうしてそんなに嬉しそうなの……?)
嬉しいと言ったルシアンの顔は今までで一度も見たことの無い眩しい笑顔で、私の胸のドキドキとバクバクが止まらない。
「なぁ、フィーリー」
「うん、な、何?」
「やっぱりお前は俺の所にいるべきだ」
「な、何の話?」
私はルシアンの話の意図が分からず首を傾げる。まだ、ドキドキしたままなので、少し吃ってしまう。
そんなルシアンは、私の両肩を掴みながら真剣な顔をしながら告げる。
「そんな規格外みたいな力を持ったお前を守れるのは、絶対に俺だけだ」
「え?」
「お前は強いよ。全属性に無効化なんてスキルを持っているんだから。自分の身は自分で守れるだろうよ」
「そ、そうね」
私は頷く。
自分でもそう思っているわ。
それでも、ルシアンは首を横に振る。
「だけど、この先どこからどんな罠や危険がやってくるかなんて分からないだろう? それに、フィーリーの力の事を知ってお前を狙う奴だって現れるかもしれない」
「…………」
「だから、卒業してもこれからもずっと俺の側にいろ!」
「え!」
「俺が絶対にお前を守るから」
(これからもずっとって……)
な、何なの? この一見プロポーズのような言葉は!
私は自分の顔がどんどん赤くなっていくのを感じる。
「~~~……!」
……よ、要するに、ルシアンは卒業後の進路の事を言っているのよね?
それなら言い方というものを考えて欲しい。
これでは、まるでプロ…………あぁ、もう! 勘違いしそうになるじゃないの!
「…………あ、ありがとう? えっと、か、考えておくわ……」
「うん、そうしてくれ」
「!!」
ルシアンは優しく微笑んで私の頭を撫でる。
ルシアンのその顔を見たら、ますます自分の頬に熱が集まった。
(だから、その微笑みはやめてーーーー!)
正直に言うなら……何だかんだでその申し出は嬉しい。
自分自身、何でこんな力を持っているのか分からなくて、しかもそれを今まで誰にも言えなかった。
だけど、こうして事情を知ったルシアンが、側にいてくれると言うのなら、それはとても心強いと思う。
「私、ルシアンが私の力の事を知ったら、怒り出すのではないかと思っていたの」
「……はぁ? 何でだよ!?」
ルシアンが憤慨する。
「自分の大魔術師となる地位を脅かすつもりなのかーって怒るかなって。ほら、入学式の時みたいに」
「うっ…………あ、あれは若気の至りだ……忘れてくれ」
そう言ってバツが悪そうに顔を赤くするルシアンが、何だかとても可愛く見えた。
「……子供だったんだよ。あの頃は色々必死だったんだ」
「ふふ、ルシアンったら」
「悪かったよ!」
未来の大魔術師様として育てられて来たルシアンにとって、自分より魔力の多い私の存在はすごく衝撃的だったんだろうなぁ。
何となく今なら分かる。
「だが、今は……違うな」
「え? 違うの?」
「あぁ。俺のそれなりにある力と、この約束された地位がこの先のお前を守る事に繋がるのならそれでいい」
「えっ!?」
ルシアンのその言葉に私は目を丸くしたまま固まってしまう。
そんなカチコチに固まった私を見て苦笑しながら、何故かルシアンは私の前に跪く。
「ルシアン?」
そして私の手を取ると手の甲にそっとキスを落とした。
「!?」
「フィーリー、約束するよ。俺は誰もが認める大魔術師となって必ず一生フィーリーを守る」
「ひぇ!?」
(い、一生!?)
バックン!
また、私の心臓が大きく跳ねた。
今度こそ鼓動が止まるのでは? と思うくらい。
(何て言い方をするのよ!! だから、これではまるでプロ……)
「~~~っ」
「どうした? フィーリー?」
私はあまりの恥ずかしさに両手で顔を覆う。
──未来の大魔術師様は言葉の選び方が絶対におかしい! 下手くそだ!
私は心の底からそう思った。
48
あなたにおすすめの小説
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される
ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
社交界で『地味姫』と嘲笑されている主人公、オルテシア・ケルンベルマは、ある日婚約破棄をされたことによって前世の記憶を取り戻す。
婚約破棄をされた直後、王城内で一匹の虎に出会う。婚約破棄と前世の記憶と取り戻すという二つのショックで呆然としていたオルテシアは、虎の求めるままブラッシングをしていた。しかしその虎は、実は獣人が獣の姿になった状態だったのだ。
虎の獣人であるアルディ・ザルミールに気に入られて、オルテシアは獣人が多く所属する第二騎士団のブラッシング係として働くことになり――!?
【この作品は、別名義で投稿していたものを加筆修正したものになります。ご了承ください】
【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』にも掲載しています】
心がきゅんする契約結婚~貴方の(君の)元婚約者って、一体どんな人だったんですか?~
待鳥園子
恋愛
若き侯爵ジョサイアは結婚式直前、愛し合っていたはずの婚約者に駆け落ちされてしまった。
急遽の結婚相手にと縁談がきた伯爵令嬢レニエラは、以前夜会中に婚約破棄されてしまった曰く付きの令嬢として知られていた。
間に合わせで自分と結婚することになった彼に同情したレニエラは「私を愛して欲しいなどと、大それたことは望んでおりません」とキッパリと宣言。
元々結婚せずに一人生きていくため実業家になろうとしていたので、これは一年間だけの契約結婚にしようとジョサイアに持ち掛ける。
愛していないはずの契約妻なのに、異様な熱量でレニエラを大事にしてくれる夫ジョサイア。それは、彼の元婚約者が何かおかしかったのではないかと、次第にレニエラは疑い出すのだが……。
また傷付くのが怖くて先回りして強がりを言ってしまう意地っ張り妻が、元婚約者に妙な常識を植え付けられ愛し方が完全におかしい夫に溺愛される物語。
離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています
腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。
「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」
そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった!
今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。
冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。
彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――
出来損ないと呼ばれた公爵令嬢の結婚
奏千歌
恋愛
[できそこないと呼ばれても][魔王]
努力をしてきたつもりでした。
でもその結果が、私には学園に入学できるほどの学力がないというものでした。
できそこないと言われ、家から出ることを許されず、公爵家の家族としても認めてもらえず、使用人として働くことでしか、そこに私の居場所はありませんでした。
でも、それも、私が努力をすることができなかった結果で、悪いのは私のはずでした。
私が悪いのだと、何もかもを諦めていました。
諦めた果てに私に告げられたことは、魔法使いとの結婚でした。
田舎町に住む魔法使いさんは、どんな方なのか。
大きな不安を抱え、長い長い道のりを歩いて行きました。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
【完結】身勝手な旦那様と離縁したら、異国で我が子と幸せになれました
綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
腹を痛めて産んだ子を蔑ろにする身勝手な旦那様、離縁してくださいませ!
完璧な人生だと思っていた。優しい夫、大切にしてくれる義父母……待望の跡取り息子を産んだ私は、彼らの仕打ちに打ちのめされた。腹を痛めて産んだ我が子を取り戻すため、バレンティナは離縁を選ぶ。復讐する気のなかった彼女だが、新しく出会った隣国貴族に一目惚れで口説かれる。身勝手な元婚家は、嘘がバレて自業自得で没落していった。
崩壊する幸せ⇒異国での出会い⇒ハッピーエンド
元婚家の自業自得ざまぁ有りです。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/07……アルファポリス、女性向けHOT4位
2022/10/05……カクヨム、恋愛週間13位
2022/10/04……小説家になろう、恋愛日間63位
2022/09/30……エブリスタ、トレンド恋愛19位
2022/09/28……連載開始
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる