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本章

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 そもそも悪いのは柊だ。
 それを八つ当たりし、さらに理不尽な言い分をぶつけてきた。傍目に見たら無茶苦茶だ。

 熱しやすくカラッとした性格の柊のことだから、冷静になったら照れくさそうに謝ってくるだろうと、穂積さんは思っていた。
 なにせ、おねーちゃん大好きなのである。気まずいままで過ごすなど一日と持つまいとたかを括っていた。
 ところが、柊は慮外の粘りを見せ、穂積さんと口をきかないまま一ヶ月が過ぎようとしていた。

 穂積さんとしては流石に長すぎるとは思うものの、まったく悪くない穂積さんから謝るのもおかしいしと、気を揉んでいるところに、穂積さん側に発生した厄介な問題が少しずつ大きくなってきていて、それどころではなくなってしまっていた。

 女子人気の高かったバスケ部の先輩に告白され、それを断った穂積さんが、何かにつけて攻撃の対象にされてしまうようになっていった。
 ベタな少女漫画なんかでよくある展開だ。


 例えば、トークアプリのグループ内で、誰がとは言わずとも露骨に穂積さんとわかる内容で批判的なやり取りを交わしてみたり。


「知ってる先輩が人前でひどく振られててかわいそうだった」

「あれはないよね。気遣いとかないのかな」

「モテるみたいだし、勇気を出して告白する側の気持ちなんてわからないんじゃない?」


 なんて感じ。
 これの厄介なところは、「あいつ調子に乗ってない?」「気に食わないよね」なんて感じの、嫉妬丸出しの陰口ではなく、穂積さんを加害者的に仕立て上げ、攻撃の対象にしやすくしていることと、あくまでも誰と言っていないところだ。

 本人も所属しているグループだけど、反論もできない。したら自意識過剰の被害妄想的な扱いをされるのだろう。
 自分であろう対象に向けた、正義の立ち位置の人たちから悪として叩かれ続け、しかも反論もできないのだ。

 精神的に大人で、くだらない同級生と同列になったりはせず超然としていた穂積さんも、これが連日のことになると堪えたらしい。
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