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本章

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 柊の説明でひとつわかったことは、サンバってなんとなく知っているつもりでいたけど、実際は何もわかっていなかったということ。

 ダンサーのイメージはある。羽飾りを背負ったセクシーな女性ダンサーが足先で小刻みなステップを踏んでいるような場面はテレビなどで見たことがある気がする。
 踊りは大体音楽に合わせるものだ。サンバダンスがあるのだから、サンバという音楽もあるはずなのに、そのイメージがまったくない。真っ先に思いつくのはマツケンサンバだけど、全員和服だし、多分あれではないのだろう。
 良く考えれば、サンバをきちんと観たことがなかった。
 テレビなどでなんとなくサンバダンサーが賑やかしに踊っている場面などは見ていても、ちゃんとサンバとして観たことは無かった。というより、サンバと言われればその賑やかしをイメージしてしまっていたが、パレードやショーとして披露されるサンバはそれとは異なるのかもしれない。
 
 柊もサンバが一般的にどういう印象を持たれているのかを理解しているからなのか、ダンスサークルに入っていることは開示していたが、サンバであることは積極的に話していないように思えた。
 隠してはいないがわざわざは言っていないという感じだ。
 よくよく聞いたところ、学校の友だちで今回のイベントに誘ったのはわたしだけらしい。出ることも誰にも言っていないようだ。
 柊は社交的で、わたしよりも友だちは多く、部活の仲間もいる。それでも、誘ったのはわたしだけ。
 何か裏があるのか? という勘繰りよりも、積極的に開示していない自分の趣味を、わたしには見せて良い、というか見せたいと思ってくれたのかなと思えて少し嬉しかった。
 
 とにかく、柊が誘ってくれたお祭りに行けば観られるのだ。
 いつも以上に良い笑顔で写真に写っている柊。彼女にこんな表情をさせるサンバに、興味を持った。
 
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