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32戦闘
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「俺の伴侶を馬鹿にするな!」
「か~かっかっか。お前は自分の伴侶すら守れないのか?」
しまった。わざとか?オレにちょっかいをかけてわざと怒らせたのか?くそ。アグニめ!
「やる事が汚いぞ!」
「それはこんな風にか?」
熱いっ……。一瞬炎に包まれたと思ったらすぐさまイスベルクに抱き込まれた。アグニの野郎。オレを狙ってきやがった。イスベルクがオレを庇うのがわかっていて挑発してきている。このまま戦闘に引きずりこもうとしているんだな。
「オレは大丈夫だから!戦っちゃだめだ」
「ルミエール……」
オレの名を呼ぶとイスベルクが濃厚な口づけをしてきた。んん。こんなので騙されないぞ……んぁ。
「ヒュウ♪俺もまぜてくれよ~。業火!」
ゴォッと炎が広がったと思うと氷の壁が現れ鎮火となる。グラソンが氷魔法を展開したのだ。ウチの宰相も凄い。
「こちらも居るのを忘れてもらっては困りますね」
「へえ。あんたらも戦えるのか?こりゃあおもしれえ」
「皆逃げて!」
「螺旋業火!」
炎柱がらせん状に部屋中を回り始めた。まるで生き物みたいに襲い掛かってくる。グラソンやユージナルが氷壁や氷柱をだして応戦している。アグニが笑いながら暴れ回る。イスベルクはオレを抱いたままで動きが鈍い。
「おい、それじゃあ思いっきり戦えないだろ?そのお荷物かたずけてやろうか?」
お荷物ってオレのことか?悔しいけど確かにそうだ。
「おのれっ!」
殺気が部屋中にいっぱいになる。アグニが嬉しそうだ。こんな狭い空間でチカラを使いあったら城が崩れてしまう。
「アグニ兄さん。イスベルクと本気で戦いたいの?それとも城を壊したいの?」
「どっちもに決まってるだろ!」
くそ。話が通じる相手じゃなかったか。
「かーっかかっか!そらっどうだ!」
自分の身体に炎をまとわせたまま攻撃を仕掛けてくるアグニ。拳を出すたびに炎の玉がこちらへ飛んでくる。
「無駄だ!」
ひらりとかわすと湾曲した氷柱がアグニに向かって伸びる。それを笑顔で叩き壊すアグニ。
二人の炎属性魔法と氷属性魔法の攻撃が入り乱れる。激しい衝撃で部屋の壁がどんどん崩れていく。被害が大きくなる前にみんな逃げて欲しい。
こうなるとミコトの占いが当たっていたようにも思える。オレがここにこなければこんなことにはならなかった。オレが氷の国に災いを運んできたのだろうか。だが、アグニをここに連れ込んだのがミコトの策ならば何年も前からこの城を。いやこの氷の国自体を狙っていたのかもしれない。そんなのは許せない。
「くっ……」
「イスベルク?苦しいの?」
顔面蒼白ってこういうのを言うんだろうな。ユージナルの言っていた通り、体調が悪いの?指先が震えている。チカラを使いすぎた場合、寿命が削られ、肉体がついていかなくなるってシーヴルが言ってたよな。じゃあこれ以上戦ったらダメじゃん。どうしよう。とにかくこのままだと不利だ。
「イスベルク。オレを離して」
「しかしっ。あやつがお前を狙うかもしれん」
「ほお。そんなにそいつが心配か」
不意打ちでアグニの炎の鎖がオレを縛った。そのまま足元に引きずりだされる。
「ルミエール!」
「邪魔なお荷物を始末されたくなかったら、本気で俺と戦え!」
アグニの足元には溶けた氷の水が溜まっていた。これならオレのチカラが使えるかも!
「雷撃!」
バリバリバリ!と電撃が足元からアグニを襲う。うまく感電させたようだ。炎の鎖が消え、オレはその隙にイスベルクの元に走った。
「うぐぐ……っ!このやろぉおおおっ!憤怒の炎!」
怒りにまかせたアグニが最大級の炎魔法をぶちまけた。荒れ狂う炎がイスベルクごとオレを包んだ。これは炎の国の王とアグニにしか使えない炎魔法だ。本気でオレを殺す気なんだな。弟だなんて本当に思ってなかったんだ。
イスベルクが氷魔法を展開するがオレの周りの炎は消えない。そう消えないんだ。
「なぜだ?なぜ炎が消えない!」
「ダメだよ。イスベルクまで焼けてしまう。オレを離して。この呪いの炎は対象物を焼き尽くさないと消えないんだ」
「い、いやだ!ルミエールっ!」
熱い。熱くて体中が焼ける。ああ、でもイスベルクを助けなきゃ。オレは癒しのチカラのすべてをイスベルクに使った。オレはどうなっても良い。だからイスベルクを……。ぢりぢりと焼ける匂いがする。ああ髪が焼けたのだな。
「髪が!ルミエールの髪が!綺麗な髪が燃えて行ってしまうっ」
「イスベルク……オレのチカラを受けと……て」
ぱあっと胸のミスリルが光るとイスベルクの身体が光る。オレのチカラで炎から守って。
オレ、守られるだけでなく守りたいんだ。好きなものを。大事な人を自分の手で守りたいんだ。そうして自信をもって隣に並んで立ちたかった。大好きだよ。
「オレ。イスベ……ルクが……好きだ……った」
「だめだっ。逝くな!逝かせるものか!お前は俺の番だ!」
叫び声と共にバキバキとイスベルクの身体の骨が鳴った気がした。
「か~かっかっか。お前は自分の伴侶すら守れないのか?」
しまった。わざとか?オレにちょっかいをかけてわざと怒らせたのか?くそ。アグニめ!
「やる事が汚いぞ!」
「それはこんな風にか?」
熱いっ……。一瞬炎に包まれたと思ったらすぐさまイスベルクに抱き込まれた。アグニの野郎。オレを狙ってきやがった。イスベルクがオレを庇うのがわかっていて挑発してきている。このまま戦闘に引きずりこもうとしているんだな。
「オレは大丈夫だから!戦っちゃだめだ」
「ルミエール……」
オレの名を呼ぶとイスベルクが濃厚な口づけをしてきた。んん。こんなので騙されないぞ……んぁ。
「ヒュウ♪俺もまぜてくれよ~。業火!」
ゴォッと炎が広がったと思うと氷の壁が現れ鎮火となる。グラソンが氷魔法を展開したのだ。ウチの宰相も凄い。
「こちらも居るのを忘れてもらっては困りますね」
「へえ。あんたらも戦えるのか?こりゃあおもしれえ」
「皆逃げて!」
「螺旋業火!」
炎柱がらせん状に部屋中を回り始めた。まるで生き物みたいに襲い掛かってくる。グラソンやユージナルが氷壁や氷柱をだして応戦している。アグニが笑いながら暴れ回る。イスベルクはオレを抱いたままで動きが鈍い。
「おい、それじゃあ思いっきり戦えないだろ?そのお荷物かたずけてやろうか?」
お荷物ってオレのことか?悔しいけど確かにそうだ。
「おのれっ!」
殺気が部屋中にいっぱいになる。アグニが嬉しそうだ。こんな狭い空間でチカラを使いあったら城が崩れてしまう。
「アグニ兄さん。イスベルクと本気で戦いたいの?それとも城を壊したいの?」
「どっちもに決まってるだろ!」
くそ。話が通じる相手じゃなかったか。
「かーっかかっか!そらっどうだ!」
自分の身体に炎をまとわせたまま攻撃を仕掛けてくるアグニ。拳を出すたびに炎の玉がこちらへ飛んでくる。
「無駄だ!」
ひらりとかわすと湾曲した氷柱がアグニに向かって伸びる。それを笑顔で叩き壊すアグニ。
二人の炎属性魔法と氷属性魔法の攻撃が入り乱れる。激しい衝撃で部屋の壁がどんどん崩れていく。被害が大きくなる前にみんな逃げて欲しい。
こうなるとミコトの占いが当たっていたようにも思える。オレがここにこなければこんなことにはならなかった。オレが氷の国に災いを運んできたのだろうか。だが、アグニをここに連れ込んだのがミコトの策ならば何年も前からこの城を。いやこの氷の国自体を狙っていたのかもしれない。そんなのは許せない。
「くっ……」
「イスベルク?苦しいの?」
顔面蒼白ってこういうのを言うんだろうな。ユージナルの言っていた通り、体調が悪いの?指先が震えている。チカラを使いすぎた場合、寿命が削られ、肉体がついていかなくなるってシーヴルが言ってたよな。じゃあこれ以上戦ったらダメじゃん。どうしよう。とにかくこのままだと不利だ。
「イスベルク。オレを離して」
「しかしっ。あやつがお前を狙うかもしれん」
「ほお。そんなにそいつが心配か」
不意打ちでアグニの炎の鎖がオレを縛った。そのまま足元に引きずりだされる。
「ルミエール!」
「邪魔なお荷物を始末されたくなかったら、本気で俺と戦え!」
アグニの足元には溶けた氷の水が溜まっていた。これならオレのチカラが使えるかも!
「雷撃!」
バリバリバリ!と電撃が足元からアグニを襲う。うまく感電させたようだ。炎の鎖が消え、オレはその隙にイスベルクの元に走った。
「うぐぐ……っ!このやろぉおおおっ!憤怒の炎!」
怒りにまかせたアグニが最大級の炎魔法をぶちまけた。荒れ狂う炎がイスベルクごとオレを包んだ。これは炎の国の王とアグニにしか使えない炎魔法だ。本気でオレを殺す気なんだな。弟だなんて本当に思ってなかったんだ。
イスベルクが氷魔法を展開するがオレの周りの炎は消えない。そう消えないんだ。
「なぜだ?なぜ炎が消えない!」
「ダメだよ。イスベルクまで焼けてしまう。オレを離して。この呪いの炎は対象物を焼き尽くさないと消えないんだ」
「い、いやだ!ルミエールっ!」
熱い。熱くて体中が焼ける。ああ、でもイスベルクを助けなきゃ。オレは癒しのチカラのすべてをイスベルクに使った。オレはどうなっても良い。だからイスベルクを……。ぢりぢりと焼ける匂いがする。ああ髪が焼けたのだな。
「髪が!ルミエールの髪が!綺麗な髪が燃えて行ってしまうっ」
「イスベルク……オレのチカラを受けと……て」
ぱあっと胸のミスリルが光るとイスベルクの身体が光る。オレのチカラで炎から守って。
オレ、守られるだけでなく守りたいんだ。好きなものを。大事な人を自分の手で守りたいんだ。そうして自信をもって隣に並んで立ちたかった。大好きだよ。
「オレ。イスベ……ルクが……好きだ……った」
「だめだっ。逝くな!逝かせるものか!お前は俺の番だ!」
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