播磨の美しい姫

阿弖流為

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決着の刻

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 戦いの激しさは一段と増していた。蘭姫の体は疲れ、思考は鈍くなる。だが、黒田との戦いが繰り広げられる中、彼女の中で何かが覚醒していた。

 黒田の鋭い攻撃をかわしながら、蘭姫は冷静にその動きを見極める。

 「お前、強くなったな」

 黒田はにやりと笑い、剣を振りかざす。

 だが、蘭姫はその攻撃を予測し、素早く身をかわすと、今度は反撃に出た。

 「貴方のような者には、私の守るものを理解できない」

 その言葉とともに、蘭姫は一気に黒田に接近し、鋭く切り込んだ。

 黒田はその刃を受け止め、鈍い音を立てて弾き返す。だが、蘭姫の心は決して揺らがなかった。

 「私が守りたいもの、私が生きる意味。それを貴方に壊させはしない」

 その言葉に、黒田は軽く舌打ちをし、再び攻撃を仕掛けてきた。

 その攻撃を、蘭姫はもう一度かわす。

 だが今度は、そのタイミングを逃さなかった。彼女は黒田の隙をついて、一気に剣を突き込んだ。

 「ッ!」

 黒田は驚愕の表情を浮かべ、背中に深い傷を負った。

 その痛みに、彼は一瞬ひるんだが、すぐに怒りを爆発させるように身をよじって反撃してきた。

 だが、その隙を見逃さず、蘭姫は再び剣を交え、彼の動きを封じる。

 「私が守るべきものは、私だけではない。村の者たち、そして私自身の未来だ」

 黒田はその言葉に顔を歪ませ、とうとう無力感にとらわれたかのように膝をついた。

 「お前……本当に強いな」

 「それが私の道だ」

 蘭姫は剣を引き、黒田の背を一度見下ろす。

 「この戦いを終わらせるのは、私だ」

 蘭姫がその言葉を口にしたとき、遠くで戦の終息を告げるような鐘の音が響き渡った。

 その音が、蘭姫の心をさらに強く、そして冷静にさせた。

 戦場の中で、赤松家の兵たちは次々と撤退し始めていた。

 黒田もまた、力尽きて動けなくなり、その場に倒れ伏した。

 「終わったか……」

 蘭姫はそのまま深く息を吐き、力を抜いて剣を下ろした。

 橘が近づいてきて、彼女の肩に手を置く。

 「お前、よくやったな」

 「でも、まだ終わらない」

 蘭姫は少し弱弱しい声で答えると、再び前を向いた。

 戦いは一応の終息を迎えたが、蘭姫の中で感じる不安は消えなかった。

 「私、まだ足りないのかもしれない。これで本当にすべてが終わったと言えるのか」

 橘は静かに頷き、言った。

 「蘭、戦いは勝った。だが、お前が本当に守りたいものを守り抜くためには、もっと多くの戦いが待っているだろう。だが、お前はもうその覚悟を決めている」

 蘭姫は橘の言葉に深く頷き、しばらく沈黙を守った。

 その後、戦場に集まった村上の者たちが歓声を上げ、蘭姫を讃える声が響いた。

 だが、蘭姫の心には少しの空虚感が残っていた。

 戦いの勝利に満足しているわけではなかった。

 それでも、彼女はもう一度、自分の心に問いかけることにした。

(私は、この戦いの後に何を選ぶのだろうか……)

 その問いが、蘭姫の中でずっと鳴り響き続ける。
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