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5章【外交編・モットー国】
32 思い出
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「〈さっきは、その……ごめんなさい〉」
「〈ん?なんのこと?〉」
「〈さっき、ステラが気を遣ってくれたのに。あたしったら……〉」
しょんぼりと肩を落としながら話すメリッサをギュッと抱き締める。そして、「〈いいのよ、全然気にしてないから〉」と囁いた。
「〈じーちゃんね、前から言ってたの。昔、あたしに似た子を弟子にしたことがあるって〉」
「〈そうなの?〉」
「〈うん。いつも話してくれたわ。もう耳にタコができるほど!その子はとてもおてんばで、頑固で、負けず嫌いで、勝気だったって〉」
「〈それ、ほとんど悪口に近いじゃない〉」
「〈ふふ、でも褒めてもいたわ。とても吸収が早くて、1を言ったら10できるようになるって。あと、気丈に振る舞ってるけど、本当は寂しがり屋であたしとそっくりな子だよ、って〉」
(師匠……)
表に出すことはなかったが、あの当時から姉に対するコンプレックスはあった。きっとそれを師匠は見抜いていたのだろう。なんやかんや言いつつも、私は師匠に甘やかされていたのはそれを察してのことだろう。
「〈だから、ステラと会ったときはちょっと嬉しかった。あたしに似た人ってどんな人なのかな、って思ったけど、あたしよりもすごい人だって言うのはわかった〉」
「〈それは、ちょっと買い被りすぎだわ。私はただの無鉄砲なだけだから。よく叱られるのよ?もっと自分の安全を考えろ、って〉」
クエリーシェルのことを思い出す。あんなにも危ない危ない、と言われていたのに、結局このザマだ。きっと会ったら叱られるのだろうなぁ、と想像がつく。
「〈そうなの?〉」
「〈えぇ、多分ブライエ国にいると思うけど。会ったら紹介するわね?〉」
「〈それって、ステラのいい人ってこと?〉」
まさかメリッサからそんな言葉が出てくるとは思わず、噴き出す。メリッサの境遇を考えると、恐らく言葉とかを色々教えたのは師匠だろう。
(まったく、なんという教育をしてるんだか……)
「〈そういう言葉、どこで覚えてくるの。……まぁ、そんなところ、かな?メリッサがヒューベルトさんをカッコいいと言っていたのと同じ感情だと思うわ〉」
「〈しー!!ヒューベルトさんが起きて聞いてたらどうするの!〉」
「〈それは失敬。ごめんなさい、でもやっぱり好きなんだ、ヒューベルトさんのこと〉」
「〈ま、まだ、わからない、……けど。カッコいいとは思うし、ドキドキする、かな?ステラはヒューベルトさんを見てドキドキしないの?〉」
「〈私?私はカッコいいし、紳士だなぁ、とは思うけど、それ以上でもそれ以下でもないかな。同志に近い感情かも。だから、メリッサのライバルにはならないから安心して?〉」
「〈もう!だからまだわからないんだって!〉」
そう言いながらも、興奮してるところや話の内容から察するに、結構恋心を募らせているところだろう。間近で初恋をしている人を見るというのは面映いところがある。
「〈はいはい。てか、本当もう遅い時間なんだから、寝なさい?明日も移動するんだから〉」
「〈うん、わかった。ステラもあんまり頑張りすぎないようにね〉」
「〈ふふ、人の心配はいいから、まずは寝るの。大人の心配はしないでいいのよ〉」
「〈ステラだって子供じゃない〉」
「〈私はコルジールでは成人だからもう大人ですー。ということで、おやすみ〉」
「〈うー、……おやすみ〉」
渋々と言った様子で引き下がる、メリッサ。テントの方へ行ったのを確認すると、私は再び連弩の試作機作成に取り掛かるのだった。
「〈ん?なんのこと?〉」
「〈さっき、ステラが気を遣ってくれたのに。あたしったら……〉」
しょんぼりと肩を落としながら話すメリッサをギュッと抱き締める。そして、「〈いいのよ、全然気にしてないから〉」と囁いた。
「〈じーちゃんね、前から言ってたの。昔、あたしに似た子を弟子にしたことがあるって〉」
「〈そうなの?〉」
「〈うん。いつも話してくれたわ。もう耳にタコができるほど!その子はとてもおてんばで、頑固で、負けず嫌いで、勝気だったって〉」
「〈それ、ほとんど悪口に近いじゃない〉」
「〈ふふ、でも褒めてもいたわ。とても吸収が早くて、1を言ったら10できるようになるって。あと、気丈に振る舞ってるけど、本当は寂しがり屋であたしとそっくりな子だよ、って〉」
(師匠……)
表に出すことはなかったが、あの当時から姉に対するコンプレックスはあった。きっとそれを師匠は見抜いていたのだろう。なんやかんや言いつつも、私は師匠に甘やかされていたのはそれを察してのことだろう。
「〈だから、ステラと会ったときはちょっと嬉しかった。あたしに似た人ってどんな人なのかな、って思ったけど、あたしよりもすごい人だって言うのはわかった〉」
「〈それは、ちょっと買い被りすぎだわ。私はただの無鉄砲なだけだから。よく叱られるのよ?もっと自分の安全を考えろ、って〉」
クエリーシェルのことを思い出す。あんなにも危ない危ない、と言われていたのに、結局このザマだ。きっと会ったら叱られるのだろうなぁ、と想像がつく。
「〈そうなの?〉」
「〈えぇ、多分ブライエ国にいると思うけど。会ったら紹介するわね?〉」
「〈それって、ステラのいい人ってこと?〉」
まさかメリッサからそんな言葉が出てくるとは思わず、噴き出す。メリッサの境遇を考えると、恐らく言葉とかを色々教えたのは師匠だろう。
(まったく、なんという教育をしてるんだか……)
「〈そういう言葉、どこで覚えてくるの。……まぁ、そんなところ、かな?メリッサがヒューベルトさんをカッコいいと言っていたのと同じ感情だと思うわ〉」
「〈しー!!ヒューベルトさんが起きて聞いてたらどうするの!〉」
「〈それは失敬。ごめんなさい、でもやっぱり好きなんだ、ヒューベルトさんのこと〉」
「〈ま、まだ、わからない、……けど。カッコいいとは思うし、ドキドキする、かな?ステラはヒューベルトさんを見てドキドキしないの?〉」
「〈私?私はカッコいいし、紳士だなぁ、とは思うけど、それ以上でもそれ以下でもないかな。同志に近い感情かも。だから、メリッサのライバルにはならないから安心して?〉」
「〈もう!だからまだわからないんだって!〉」
そう言いながらも、興奮してるところや話の内容から察するに、結構恋心を募らせているところだろう。間近で初恋をしている人を見るというのは面映いところがある。
「〈はいはい。てか、本当もう遅い時間なんだから、寝なさい?明日も移動するんだから〉」
「〈うん、わかった。ステラもあんまり頑張りすぎないようにね〉」
「〈ふふ、人の心配はいいから、まずは寝るの。大人の心配はしないでいいのよ〉」
「〈ステラだって子供じゃない〉」
「〈私はコルジールでは成人だからもう大人ですー。ということで、おやすみ〉」
「〈うー、……おやすみ〉」
渋々と言った様子で引き下がる、メリッサ。テントの方へ行ったのを確認すると、私は再び連弩の試作機作成に取り掛かるのだった。
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