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5章【外交編・モットー国】
19 鍛錬
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(右から来ると見せかけて、ここはフェイントで左脚……!)
読み通りに飛んでくる左脚を受け止める。そして、そのまま掴んで振り回すと、メリッサはバランスを崩して倒れ込む。
「〈だ、大丈夫!?ごめん、勢い余っちゃって〉」
「〈……うん、大丈夫。ちょっと油断しちゃっただけ〉」
「〈それならいいんだけど……、怪我してない?〉」
「〈平気。……ちょっと、思ってたよりもステラが強くなっててイラッとしたけど〉」
(イラっとしたのか……)
珍しく感情を露わにするメリッサ。メリッサは思いのほか負けず嫌いらしい。その姿はまるで昔の私を見ているようだ。昔は私もこうして師匠に食い下がっていたなぁ、と思うと感慨深い。
あれから数日経ち、越境の準備の傍らメリッサと共に鍛錬に励んでいた。
さすがにメリッサ相手になかなか勝てないのも癪だったので、ここ最近は、組み手や基礎体力作り以外に筋トレも始めるようになった。
そのおかげか、最初こそキツかったものの、全体的に基礎ができてきたおかげでパフォーマンス力が向上している気がする。
主に睡魔との戦いでもあったが、鍛錬を終えて自室に帰ってからの筋トレは我ながらハードだった。でも、そのおかげですぐに立ち回れる俊敏さや基礎体力向上に繋がったように思う。
「〈……もうやめとく?〉」
「〈ううん。まだやる〉」
「〈そう?じゃあもう1回しよっか〉」
「〈うん。また、手加減なしでね〉」
「〈はいはい〉」
苦笑しつつ、身構える。すると、キッと睨むようにこちらを見るメリッサがなんだか年不相応だがそれもまた可愛らしい。
だが、そんなことを本人に言ったらさらに機嫌を悪くすることは目に見えていたので、にやけるのを防ぐためにグッと歯を食い縛った。
「〈行くよ!〉」
「〈どうぞ〉」
言うやいなや、一気に地を蹴り距離を詰めてくるメリッサ。彼女は小さい身体を最大限に活かすために相手の懐に入ることが多い。
だから、本来は距離をとって戦うのがベストだろうが、そこをあえてさらに高みを目指すために近距離で戦う選択をする。
「〈はっ!〉」
腹部に向かって正拳突きが来るのを、しゃがんで腕をクロスさせて防ぐ。
だが、メリッサも一筋縄ではいかない。そのままの勢いを殺さずにひょいと身体を翻すと、私の首を目掛けて脚を絡めると、グッと巻きつき締めてくる。
「〈んぐ……っ!〉」
苦しい。さすがに、師匠から教わっているだけあって、戦闘のバリエーションが豊富である。常に考え、学習し、臨機応変に行動してくる。
だが、私も場数で言ったらそれなりの経験を積んでいた。
「〈ん……ぐぅ……ふん……っ!!〉」
「〈きゃあ!!!!〉」
首に思いきり力を入れて背をそらせる。そして、勢いよくブリッジするように身体を曲げると、その勢いのままにメリッサが遠心力で吹っ飛んだ。
「〈……っ、そんな動き、ズルい〉」
「〈ズルくないわよ。こういう行動する敵だっていたっておかしくはないでしょう?〉」
「〈……そうかもしれないけど、普通はそんな動きしない〉」
「〈普通、って……実際に相対する敵が普通とは限らないんだから、言い訳にしないの〉」
「〈うー……〉」
思いきり不貞腐れたように口を尖らせるメリッサ。それが可愛くて頭を撫でれば、顔を赤らめながら「〈子供扱いしないで!〉」と抗議を受ける。
「〈ごめんごめん。さて、一度休憩しましょう?ずっとやっててもパフォーマンスが落ちるわ〉」
「〈わかった。……ステラは何か食べる?〉」
「〈何か軽食とかあるの?〉」
「〈この近くの木のところにいくつか果物が取れるところがある。ステラも行く?〉」
「〈えぇ、ぜひ〉」
私が同行することを伝えると、メリッサは嬉しそうにはにかむのだった。
読み通りに飛んでくる左脚を受け止める。そして、そのまま掴んで振り回すと、メリッサはバランスを崩して倒れ込む。
「〈だ、大丈夫!?ごめん、勢い余っちゃって〉」
「〈……うん、大丈夫。ちょっと油断しちゃっただけ〉」
「〈それならいいんだけど……、怪我してない?〉」
「〈平気。……ちょっと、思ってたよりもステラが強くなっててイラッとしたけど〉」
(イラっとしたのか……)
珍しく感情を露わにするメリッサ。メリッサは思いのほか負けず嫌いらしい。その姿はまるで昔の私を見ているようだ。昔は私もこうして師匠に食い下がっていたなぁ、と思うと感慨深い。
あれから数日経ち、越境の準備の傍らメリッサと共に鍛錬に励んでいた。
さすがにメリッサ相手になかなか勝てないのも癪だったので、ここ最近は、組み手や基礎体力作り以外に筋トレも始めるようになった。
そのおかげか、最初こそキツかったものの、全体的に基礎ができてきたおかげでパフォーマンス力が向上している気がする。
主に睡魔との戦いでもあったが、鍛錬を終えて自室に帰ってからの筋トレは我ながらハードだった。でも、そのおかげですぐに立ち回れる俊敏さや基礎体力向上に繋がったように思う。
「〈……もうやめとく?〉」
「〈ううん。まだやる〉」
「〈そう?じゃあもう1回しよっか〉」
「〈うん。また、手加減なしでね〉」
「〈はいはい〉」
苦笑しつつ、身構える。すると、キッと睨むようにこちらを見るメリッサがなんだか年不相応だがそれもまた可愛らしい。
だが、そんなことを本人に言ったらさらに機嫌を悪くすることは目に見えていたので、にやけるのを防ぐためにグッと歯を食い縛った。
「〈行くよ!〉」
「〈どうぞ〉」
言うやいなや、一気に地を蹴り距離を詰めてくるメリッサ。彼女は小さい身体を最大限に活かすために相手の懐に入ることが多い。
だから、本来は距離をとって戦うのがベストだろうが、そこをあえてさらに高みを目指すために近距離で戦う選択をする。
「〈はっ!〉」
腹部に向かって正拳突きが来るのを、しゃがんで腕をクロスさせて防ぐ。
だが、メリッサも一筋縄ではいかない。そのままの勢いを殺さずにひょいと身体を翻すと、私の首を目掛けて脚を絡めると、グッと巻きつき締めてくる。
「〈んぐ……っ!〉」
苦しい。さすがに、師匠から教わっているだけあって、戦闘のバリエーションが豊富である。常に考え、学習し、臨機応変に行動してくる。
だが、私も場数で言ったらそれなりの経験を積んでいた。
「〈ん……ぐぅ……ふん……っ!!〉」
「〈きゃあ!!!!〉」
首に思いきり力を入れて背をそらせる。そして、勢いよくブリッジするように身体を曲げると、その勢いのままにメリッサが遠心力で吹っ飛んだ。
「〈……っ、そんな動き、ズルい〉」
「〈ズルくないわよ。こういう行動する敵だっていたっておかしくはないでしょう?〉」
「〈……そうかもしれないけど、普通はそんな動きしない〉」
「〈普通、って……実際に相対する敵が普通とは限らないんだから、言い訳にしないの〉」
「〈うー……〉」
思いきり不貞腐れたように口を尖らせるメリッサ。それが可愛くて頭を撫でれば、顔を赤らめながら「〈子供扱いしないで!〉」と抗議を受ける。
「〈ごめんごめん。さて、一度休憩しましょう?ずっとやっててもパフォーマンスが落ちるわ〉」
「〈わかった。……ステラは何か食べる?〉」
「〈何か軽食とかあるの?〉」
「〈この近くの木のところにいくつか果物が取れるところがある。ステラも行く?〉」
「〈えぇ、ぜひ〉」
私が同行することを伝えると、メリッサは嬉しそうにはにかむのだった。
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